(英エコノミスト誌 2016年4月9日号)

週内にも米大手9銀行に公的資金11兆円投入

米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にある財務省建物(2008年10月22日撮影)。(c)AFP/Karen BLEIER〔AFPBB News

ホワイトハウスと税アレルギーの米多国籍企業との間で、あからさまな戦いが勃発した。

 オバマ政権と大企業との関係は常にピリピリしていたが、政権の最終年にあたる今年に入って悪化し、誰の目にも明らかな戦いに発展しつつある。

 ジャック・ルー財務長官は4月4日、新たな「インバージョン」対策を発表した。インバージョンとは、米国企業が米国の課税の網を逃れるために、国籍を買収先の企業のそれに変えようとする企業買収のことだ。

 その2日後、米国の大手製薬会社ファイザーは、アイルランドのアラガンを1600億ドルで買収する計画を撤回した。実現していれば史上3番目に大きな企業買収になったこの計画は、ファイザーの税法上の本籍をダブリンに移すことが前提になっていた。

 米国の取締役たちとアラガンの投資家たちからは怨嗟の声が上がった。アラガンの投資家は、財務省の発表を受けて同社株が下落し、48時間で130億ドルも失った。欧州の多国籍企業も、米国の争いのとばっちりを食うかもしれないと恐れおののいた。

 このケンカは全員に非があるように見える。まず、オバマ政権が気まぐれなこと、共和党のエスタブリッシュメント(支配階級)が「米国籍を捨てる企業の代弁者になるべきだ」と考えるほど世間に疎くなっていることが明らかになった。

 また、ファイザーのような立派な企業が財務の改善に取りつかれた狡猾なM&A中毒になってしまったこと、税制が30年も時代遅れでグローバル化の時代にそぐわないことが露呈した。

 そして政治システムの党派性が強すぎるために改革ができないことが浮き彫りになった――今回のケースでは、腹の中では誰もが、しなければならないことについて同意しているにもかかわらず、だ。