小さい赤ちゃんの頭をよしよしと撫でてあげる、こちらもまだまだちびっこの、お兄ちゃんやお姉ちゃん。
とても微笑ましい光景ですよね。
しかし、果たしてそんなドラマのような光景が実際にあるのかというと…
『そうでもないよ』
と、ちょっと遠い目をして経験者は語るのではないでしょうか。
『赤ちゃん返り』という言葉があるように、赤ちゃんが生まれた後、まだまだ甘えたい盛りなのに『上の子』となってしまうきょうだい児の心の中には、様々な葛藤があることでしょう。
そこへいかに対応するのか、というのも、親としては悩むところです。
我が家の場合、息子が1歳後半の時に2人目の妊娠が判明しました。
さて対応はどうしたら、と思いながら過ごしていたある日、こうした件について義母と話をする機会がありました。
長年にわたって学習塾をやっていて、顔の広い義母は、きょうだい関係についても色々と事例を見てきているという、頼りになる存在なのです。
「上の子はね、大きくなっても『上の子』扱いされたことを、結構ずっと気にしてるものなのよ」
どういうことかというと、高校生や大学生、さらには大人になった後でさえも、
「お兄ちゃんだから我慢しなさい」
「お姉ちゃんだからそれくらい出来るでしょ」
といった、(おそらくはよくある)親からの言葉に理不尽さを感じていた、と話すケースが多いということでした。
「親としてはつい、言っちゃいたくなる気持ちもわかるんだけどね。なるべく、そういったことは言わないようにしてみたらいいかもしれないね」
『お兄ちゃん/お姉ちゃんだから…』というのは、よく聞く気のするフレーズで、確かに言ってしまいそうです。
しかし、考えてみればきょうだいの中での生まれ順といった、自分の意志や努力ではどうにもならない事柄に対して責任を負わされたり、非難されたりするというのはおかしな話でしょう。
私自身は下の子という立場だったので、上の子の気持ちというものについては想像する他ないのですが、とりあえず息子に対してこうした言い方はしないようにしよう、と思いました。
「あとね、こないだお友達から聞いたんだけど、産後すぐから始められる、きょうだい仲を良く育てる方法があるらしいのよ」
産後すぐから!
それはぜひとも知っておきたいところです。
身を乗り出して聞く私に、義母が教えてくれたのはこのような話でした。
原則として、
「赤ちゃんの世話をする時に、まずは上の子に声をかける」
「赤ちゃんが上の子を好きだということを伝える」
という、大変シンプルなものです。
例を挙げてみると、
「◯◯ちゃん、赤ちゃんが泣いてるから、抱っこしてあげていいかな?」
「ねぇ、◯◯ちゃん。赤ちゃん泣き出したね。さっきミルクを飲んでからしばらく経ったから、お腹が空いてるんじゃないかな。おっぱいをあげてもいいかな?」
といった感じです。
確かに、1人目の産後すぐは『赤ちゃん』という存在に慣れておらず、泣いたらとりあえず構って世話をして…という感じになっていました。
しかし、一通り経験してみるとこちらも、ことに新生児がちょっと泣いたからと言って、別段すぐに抱き上げる必要はなく、数分放っておいたからといって、そんな簡単にどうにかなるものでもない…と思えるくらいの経験値は積んでいます。
そうして上の子の許可を取り付けてから、授乳やオムツ替えなどを行う訳ですが、認めてくれたという事実を、大げさなくらいに褒めておくというのも大事なところだそうです。
「ありがとう、◯◯ちゃん、『お兄ちゃん大好き!』って言ってるよ」
「さっぱりして嬉しいね。◯◯ちゃんの大好きなお姉ちゃん、とっても優しいね」
と、いった感じです。
成程なぁと感心したので、産後まで忘れないようにしよう、と、ざざっとメモにまとめておきました。
そして迎えた、第2子の産後。
ワガママ、やんちゃ盛りの『魔の2歳児』だった息子に対しては、もちろん義母からの教えを実践してみました。
すると最初は多少、突然家に現れた『赤ちゃん』という見慣れぬ存在をいぶかしんでいたものの、赤ちゃん返りのような行動はなく、なんとなく妹のことを受け入れてくれたようでした(かといって、メロメロに溺愛という感じでもなかったのですが…)。
そして哺乳瓶を載せたトレーを運ぼうとしたり、クーファンの中で泣き出したら近づいて手を伸ばして撫でてあげようとしたりと、自分も赤ちゃんのお世話ができるんだ、という風に捉えてくれたようでした。
そんな訳で、義母の教えのおかげできょうだい関係についてはひとまず順調に、2人育児を始めることが出来たのでした。
この経験を、下の子を妊娠したという周りの友人に教えてみたところ、後日には口を揃えて役に立ったと話してくれます。
子供の心に寄り添う、素晴らしい知識を教えてくれた義母にはとても感謝しています。
著者:Takoos
年齢:38歳
子どもの年齢:5歳・2歳
独身時代の海外在勤中に、福祉先進国な北欧の子育て事情を垣間見る。帰国後は関西と東海の狭間で、妊娠、出産、育児、在宅フリーランスと経験中。好きな言葉は「A life of no regrets」
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