イタリア映画!
画才に優れ、建築家としてキャリアを積んできたセレーナ。故郷のローマで新たなステップを踏み出そうとするのだが、イタリアの建築業界は男性社会で彼女の就職口が見つからない。ウエイトレスで糊口をしのぐセレーナだが、あるマンションと運命的な出会いをする……。
建築家としてキャリアを積んだ主人公が、調子上向きの国や職場をことごとく回避し、故郷のイタリアに戻ってきてローマで就職しようとする……が、全然仕事が見つからない。面接を通るも、「妊娠の際は解雇」という条件にブチ切れ、一向に決まらない。仕方なく始めたレストランのバイトで、オーナーといい雰囲気に……が、彼は実はゲイ!
まあそんなこんなで、ビジネスもプライベートも一向に上手くいかないアラサー女なのだが、バイク(モペットって奴かな? ペダル付き)を盗まれて追いかけてきた先のマンションでインスピレーションが湧いてくる。予告見た時にも思ったが、『ディーパンの戦い』の団地にも似てるな。住人にもすこぶる評判の悪いそのマンションの造作を見直し、改築プランを立てて持ち込み、とうとう採用! ……が、面接の際に男と勘違いされており、勢いで男の建築家の女助手を演じてしまう。
全編にじわりとにじむ郷土愛が基調になっていて、それゆえに地元の経済危機や、旧態然とした労働環境や女性差別が切実な問題意識として浮かび上がってくる。
ゲイのオーナーを偽建築家に仕立て、海外出張中ということにしてごまかし、自分はオフィスに潜り込む。が、毎朝社長にご機嫌取りの挨拶をし、秘書は必ず一杯のコーヒーをご提供……。いやあ、日本でもよく見る光景だねえ……。社長に睨まれないために、従業員たちは趣味を偽り、好きなサッカーチームを偽り、妊娠を隠している……。基本、コメディ仕立てで大げさに描いているのだが、すべてアイデンティティに関わる問題で、仕事の能力に何一つ関係ないことなのに隠さなければならない不条理。
ゲイのオーナーの息子との関係なんかの話も盛り込んでいて、多彩な人間関係を多様な目線から見ることを手際よくまとめている。主人公の思い込みの激しさをコメディとして描きながら、そこを飛び越えた対話につなげるあたりも手堅いですね。
同じ労働について考える話なので、『サンドラの週末』はちょっとしんどい、という人にはちょうどいいかもしれないな。あと、大阪人はちょっと注目シーンが……?
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