主要7カ国(G7)広島外相会合で採択された「広島宣言」の文言を巡り、一部の核問題研究者やNGO関係者らが外務省が発表した日本語訳に疑問符をつけている。核兵器使用の被害の甚大さや核軍縮・不拡散を訴えた文書だが、核保有国を含む各国の立場を乗り越え、かつ被爆地の納得を得るため意訳したのではないかとの指摘だ。
宣言では「広島及び長崎の人々は、原子爆弾投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験」とある。この「非人間的な苦難」の部分は採択した英文の正式文書の「human suffering」を訳したものだ。
長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は「『非人間的苦難』と訳すのには無理がある」とツイート。NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲・国際運営委員も「広島の世論も考え、『非人間的』と強引に訳して、非人道ではないがそれに近い言葉を勝ち取った。深刻な誤訳」とブログに記した。
様々な国際会議で通訳や翻訳を手がける「オフィス赤谷」の赤谷慶子社長は朝日新聞の取材に、「非人間的苦難」にあたる英文は「inhuman suffering」、または「inhumane suffering」とし、「今回は『人的苦痛』と訳すのが適切だ」と話す。ただ「直前に『甚大な壊滅』という強い言葉があるので、ぎりぎり許される意訳だ」とも述べた。
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