以前の日記
「ダイビング後の飛行機搭乗についてのガイドライン見直し」(
FAD(Flying After Diving)絡みの話題)でやどかりさんとコメントのやり取りをしていて、
NASAは(資金も人材も豊富で)もっと研究が進んでいるのではというお話が出たんですが、詳細なデータは公開していないんだろうけど
NASA(National Aeronautics and Space Administration)の
EVA(Extravehicular Activity、いわゆる船外活動のこと)はどうなってるのか、興味本位でざっと関連しそうなWebサイトを見てみました。
実のところ以下「The Martian(邦題はなぜかオデッセイという訳のわからない題名w)」を観ちゃった、というのが直接の書くきっかけではあったのですが。w
なぜ上記で
EVAと書いたかというと、ご存じの方も多いかと思いますが、通常は
ISS(あるいはSpace Shuttle)の中にいるクルーは1気圧(14.7psia)に与圧された空気で活動していて、
EVAする際に着用する宇宙服(Spacesuit、
NASAではEMU(Extravehicular Mobility Unit)と呼ぶ)は約0.3気圧(4.3psia)。むろんその外側は真空で0気圧。
つまりダイビングとは状況が違うものの、
減圧シーケンスを踏む必要があるという点では同じ。
EVAについては概要が
「Space Station Extravehicular Activity」に載っています。
で、今だと
ISSでは通常の
EVAだと「Campout Prebreathe Protocol」という手順に従って外(宇宙空間)へ出るようです。が、映画でやっているように電光石火の速さでEMUを装着して
EVAで活躍する、なんてことはあり得ないと。
当然ながらそれやったらあちらの世界へ逝ってしまいます。(笑)
まぁ、映画ですから、
減圧してるところを撮っていたらそれだけで上映時間が終わってしまって、しょうがないんですけどね。w
Campout Prebreathe Protocolの内容は以下となっているらしいのですが、space shuttle missionの頃から何度も見直しが行われているらしく、正確なところは分かりかねます(理解が間違っているかも・・・)。
※ここでの圧力の単位は以下PSI(pound per square inch)と書きましたがPSIA(絶対圧のPSI、PSI absolute)です。
1. 14.7psi(1気圧)での30分のO2プリブリーズ
2. 31分かけて14.7から10.2psia(0.7気圧)へ
減圧3. 10.2psiで8時間40分。但しFO2は26.5%(enriched air)へ戻す
4. O2のプリブリーズしながら10分かけて14.7psiへ再加圧
5. O2プリブリーズしながら30分間hygiene break(歯磨きや手洗いのことかな) →O2マスク付けてhygiene breakって、どういうことだろう?w
6. O2プリブリーズしつつ31分かけて10.2psiへ
減圧7. 10.2psiのままFO2を26.5%にし60分かけてスーツ(EMU)着用
8. 17分間のパージ(EMUの生命維持装置をO2でパージということかな)とリークチェック
9. EMUの中で40分間のO2のプリブリーズ
10. EMUの中でさらに10分間、追加でO2プリブリーズ
11. 30分かけて4.3psi(0.3気圧)へ
減圧 => その後EVAへ
※blog主的には、3でなぜこんなに時間をかけるのかいまいちピンときません・・・クルーはこの間何をやってるんだか・・・
※この一連の
プロトコルは他クルーのいるキャビンではなくQuestというエアーロック内で実施するみたいでして、EMU装着前のO2プリブリーズは
酸素マスクを付けて行う。このエアーロックでは食事やトイレ、緊急時のキャビンクルーとの連携等の対応が可能な設備だとか。
※ここで記載したCampout Prebreathe Protocolとは別に、かかる時間を大幅に短縮できるExercise Prebreathe Protocolというのも予備的な手段として用意している。これは文字通りプリブリーズの前段階でエクササイズを実施し血流を増大させN2を効率よく排出させるやり方。
EMU内は約0.3気圧でO2(純
酸素)を呼吸する、まぁリブリーザーみたいになってるようですが、どうやらこれ以上気圧を上げると、より
プレブリーズプロトコルの時間を短縮できるものの、反面EMUがパンパンに膨らんで動きにくくなるのでこの気圧に落ち着いたみたいですね。逆に気圧を下げるといっても最低限PO2は0.21気圧以上に保つ必要があるし、0.3気圧なら(
酸素中毒の心配もなく)純
酸素にした方がEMUの構造が敢えてN2と混合するより簡単になる、という感じかな。
将来、内部をもっと加圧しても殆ど膨らまず且つ動きやすいEMUが開発されれば、EVAのためのプリブリーズ
プロトコルはもっと短縮できその分EVAの時間に当てることが可能なのでしょうが、残念ながらまだ無理。
以上、EVA詳細に関しては
NASA等の技術レポートが色々公開されていのですが、その中の一つを参考までに以下へ載せておきます。今までのプリブリーズの歴史とか、その
プロトコルにどのような問題があってどう改良してきたのか、DCS等の臨床データの評価はどうだったか、みたいなことがかなり詳しく書かれているようですが、残念ながら時間無くてとても全部読んでいられません。w
「Prebreathe Protocol for Extravehicular Activity Technical Consultation Report」
tag : NASA 減圧 プロトコル EVA ISS プレブリーズ 酸素 窒素 FAD