「簡単ではありませんが、メダルの可能性はあるでしょう」
と、朴柱奉氏は言った。日本のナショナルチーム・ヘッドコーチ(以下HC)である。
流暢な日本語。紳士的な口調。的確な分析。かつて韓国で“ダブルスの神様”と呼ばれた圧倒的な存在感……。
現役時代は、1992年のバルセロナ五輪・男子ダブルスで金メダルを獲得し、世界選手権(オリンピックと並び、当時でいう7ツ星の最高グレードの大会)でも男子ダブルス、混合ダブルスを合わせ5回の優勝を飾っている。
14年間の現役生活で、国際大会の優勝経験はなんと67回にものぼり、だから“ダブルスの神様”というわけだ。
その朴HCが、北京オリンピックでは、日本勢にメダルの可能性がある、というのだ。
バドミントンが1992年に正式競技となって以来、オリンピックで金メダルを獲得した国は、わずか4カ国。
男女シングルス(単)、男女ダブルス(複)、ミックスダブルス(混合複)の5種目で19個(1992年バルセロナでは、混合複は行わず)の金メダルが生まれたが、内訳は中国が8、国技の誇りを持つインドネシアと韓国が5、デンマークが1……。
金・銀・銅と全色のメダルに広げても、マレーシアとイングランド、オランダが入ってくるくらいで、ここでも中国、インドネシア、韓国の強さが目立つ。
つまり日本は、過去4回のオリンピックで一度もメダルに手が届いていないのである。
これまでは、朴HCと現役時代にしのぎを削っていた男子ダブルスの松野修二・松浦進二が1992年バルセロナで、また女子シングルスの水井泰子が2000年シドニーで5位に入賞したのが最高成績だ。
だが。北京では、かつてないほどメダルへの期待が高まっている。
「層の厚いシングルスは難しいとしても、男女のダブルスなら日本に十分チャンスはあります。
ドローは16です。そのうち3つは、アフリカなどの各大陸枠ですから、実力的には一歩落ちます。
実質、12〜13ペアの争いですね。その12ペアの力は横一線で、ひとつ勝てばベスト8、ふたつでベスト4……1試合1試合が大事になってきます。
ただオリンピックでは、メダルを獲得するには3位決定戦がある。ベスト4に入っても、そこが正念場です」 次へ |
| かつて韓国で“ダブルスの神様”と呼ばれた朴柱奉ヘッドコーチ |
| メダルへの期待が高まる北京オリンピックバドミントン日本代表 |
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