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堤防の外にある工業地帯の地震津波対策

(2016年4月4日放送)

製造業が盛んな東海地方では、港や埋め立て地など海に面した場所にも工業地帯が発展していて、南海トラフの巨大地震と津波の被害から働く人をどう守るかは企業の大きな問題です。
工業団地が直面する課題と取り組みについて、名古屋放送局・三浦佑一記者が取材しました。(4月4日放送)

特有のリスク

伊勢湾に突き出した埋め立て地にある津市の伊倉津地区工業団地は、巨大地震に対して、ある特有のリスクを抱えています。
津波や高潮の被害を防ぐ堤防よりも海側にあるのです。
船から荷物の積み卸しをする必要があるため、工業団地の岸壁には堤防は整備されていません。
場所によっては津波で5メートルを超える浸水が想定されています。

東日本大震災を踏まえて、企業は対策を進めてきました。
従業員600人のこの鉄鋼会社では、事務棟の屋上に避難場所を整備しました。

問題は液状化

しかし、それでも問題は解決していません。
液状化で地盤が緩み、建物に大きな被害がでる可能性があるのです。
三重県が公表した液状化の予測地図では、この埋め立て地は危険性が最も高い地区になっています。

ここに工場を構えるJFEエンジニアリング津製作所の谷垣己子男グループマネージャーは「建物の倒壊や、岩壁が崩れるといったことが一般的には予想されています」と話します。

企業としての安全対策

東日本大震災では、千葉県などの埋め立て地で大規模な液状化が起きました。
埋め立てから間もない地盤は十分に固まっていないため、至る所から水と土砂が吹き出し、建物や道路が大きな被害を受けました。
工業団地は民有地のため公的な避難施設はありません。
どうすれば従業員の安全を守れるのか、企業の模索が続いています。

谷垣グループマネージャーは「液状化によってこの避難場所がかなりのダメージを受けることも予想されます。そういったことも含めて1つでも2つでも安全で安心な方法をとれるように考えていきたい」と話しています。

ほかの工業団地でも

ほかの海沿いの工業団地も悩みを抱えています。
100社あまりの企業が集まる愛知県豊橋市の明海工業団地では、会社ごとでなく各社で連携して防災対策に取り組んでいます。
避難場所が足りない会社の従業員を、場所に余裕のある近くの会社が受け入れる計画を作っています。

各社が協力して

工業団地のなかの5か所の企業の敷地が避難場所になっています。
例えば、家畜飼料の会社の従業員は大手自動車部品メーカーの頑丈な体育館に、容器メーカーの社員は十分な高さがある盛り土に整備された土地開発業者の駐車場に避難します。

明海地区防災連絡協議会の古海盛昭会長は「1企業だけでは限界がありますので、連携することによって被害を浅くできると考えています」とその狙いを話します。

残る課題

それでもまだ解決すべき課題は残されています。

3月に開かれた工業団地の企業の会議では、救護場所の確保がテーマになりました。
工業団地には人が住んでいないため医療機関がありません。
巨大地震が起きた時にけが人の応急手当をどこで行うか、意見を交わしました。
「重篤患者が発生した場合は、各社が持っている救護品だけで対応しなければならない」「発災したときに、コンテナからテントを引き出して立てることが可能か」といった意見が出ました。

継続して議論を

議論の結果、工業団地の高台に救護場所を作る案がまとまりましたが、誰が手当てを行うかなどは継続して議論することになりました。

協議会の古海会長は「人をいかに助けるか.それがないと事業復旧につながっていかない。いざとなったらお互い協力し合うしかない」と話します。

働く人を守るために

三重県や愛知県によりますと、工業団地はほとんどが企業が持つ民有地のため、行政が避難施設を整備したり、液状化対策を行ったりするのは難しいということです。

地震や津波のリスクを抱える工業地帯で働く人を守るために、できることを一つ一つ進めていく必要があります。

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