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虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌 作者:力水

第1章 異世界武者修行編

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第4話 初めての異世界探索(2)

 メキメキと強くなります。
 
 森に入ると、そこは密林というよりは背丈の低い木々と雑草からなる藪であり、林道など存在せず、獣道が辛うじてあるに過ぎない。 
 森の最初の敵は、ファンタジー系ゲームや小説で最もメジャーな魔物(モンスター)――スライムだ。
 スライムはブヨブヨの粘液状の青色の液体が飛び跳ねて僕に体当たりを仕掛けてくる。
即座に解析する僕。

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             ステータス
【スライム】

★レベル:1
★能力値:HP5/5 MP4/4 筋力1 耐久力2 俊敏性2 器用1 魔力1 魔力耐性1
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 弱すぎる。これじゃあ、同レベルの【黒蜘蛛】の方がややましだ。獲得できそうなスキルもないし、《蜘蛛糸》の実験にでもしよう。
 《蜘蛛糸》を発動すると、僕の指から白い糸が網目状に出てスライムを拘束する。要は、スパ○ダーマンのような能力だ。
 色々試してみたが糸は網目状にしか出せず、一時的な拘束程度にしか用途は思いつかない。
 もっともスキルレベルが1だからかもしれない。スキルレベルが上がり次第もう一度実験しよう。
《蜘蛛糸》の実験は終了した。とっとと倒してしまおう。
 銃剣【ルイン】を高速で横一文字に薙ぎ払うと、スライムは横断され液体へと帰り、【紅石】だけが地面にポトンと落ちる。
【紅石】を回収し、再び草木を掻き分け進む。
 その後も、数kmはスライムしかエンカウントせず、実に物足りなかった。

 しばらくして藪から、高い木々へと変わると、雑草がなくなり、本格的な密林へと移行する。
 密林以降はまるでゴキブリのように子鬼の魔物(モンスター)――ゴブリンが集団で襲ってきた。
 一応解析はしたがレベル1でスキル、魔術なしだ。面倒なのでエンカウント次第、【ルイン】の魔弾で爆砕した。
 一応は人型なので【紅石】の回収は多少の嫌悪感は湧いたが、人間なんでも慣れるものである。すぐに何も感じなくなった。


 密林を2時間ほど歩き、湿地帯へ入る。
 地面には数cm、水が張ってあり、僕の背丈ほどもある水草が生い茂っている。

 ガサッ!

 僕の左方から水草を踏みつける音が聞こえる。さらにこれは尻尾を擦る音?
【ルイン】の銃口を音のする方へ向け、いつでも後方へ退避できるように構える。
 音は次第に大きくなり、地響きさえ伴うようになる。
 そして、そいつは姿を現した――。
 水草を踏み潰し僕の身体を一飲みにしてしまわんと、3メートルを楽に超える双頭の巨大鰐が高速で僕に突進してきた。
 バックステップで数メートル間合いを取り、巨大鰐の解析を開始する。
今の僕に手に負えそうもなければ即逃げだ。

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             ステータス
【魔双頭鰐】

★レベル:12
★能力値:HP400/400 MP100/100 筋力140 耐久力135 俊敏性80 器用130 魔力100 魔力耐性50
★スキル:《爆炎》
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 僕より1レベル上だが、【ルイン】の装備の分、僕の方がステータスは上だ。スキル《爆炎》に注意すれば今の僕に丁度いい相手かもしれない。
 戦闘の意思を持つと同時に、【ルイン】の銃口を巨大鰐に向けありったけの魔弾をお見舞いする。
 ドン! ドバン! ドン! ドバン! ドン! ドン!

 魔弾に双頭の1つと胴体の半分を吹き飛ばされながらも、僕に肉薄する巨大鰐。
 垂直に横っ飛びし巨大な咢を避け、銃口を残りの双頭に向けて続けざまに魔弾をぶちかます。
 魔弾は全弾、残存した頭部に命中し、粉々の肉片がまるで桜吹雪のように地上へ舞い落ちる。
 直後、ダンプカーと正面衝突したかのような凄まじい衝撃が僕の左半身に生じ、視界が地面と夜空を何度も暗転する。何度も移り変わる。
 息ができず身体中に激痛という名の絶叫が走り、視界が明滅する。
 腕輪から小回復薬(ポーション)を取り出し、震える手で瓶のコルクを抜き赤色の液体を口に含む。
 僕の喉が鳴るごとに痛みが引いていき、立ち上がれるほどに回復した。周囲を警戒しつつ、2本目の小回復薬(ポーション)飲んでHPを全快にしておく。
 危なかった。まさか双頭を潰されても尻尾だけで反撃してくるとは夢にも思わなかった。
 もっとも、この負傷は完全に僕の油断だ。僕のような虚弱野郎は気を抜けば即死亡。雑魚共を倒し、少々いい気になってそんな基本的な事も忘れていた。今のうちそれを思い出せてよかった。

 周囲を警戒しつつも【紅石】をナイフで取り出し、解析する。

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              【紅石】
★説明:魔物の魂が結晶化したものであり、核。魔力との親和性が極めて高く様々な武具や魔術道具の材料となる。
★ランク:J
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 ランクがKからJへ上がった。レベルが12だからだろう。
【紅石】をアイテムボックスに入れるとともに、肉片を口に含む。体の中心が発火し、軽い眩暈がする。
創造魔術(クリエイトマジック)》が発動したようだ。

 当面はこの湿地帯でレベル上げをするべきだ。これ以上先へ進むとさらに強力な魔物(モンスター)が出る可能性が高い。

 ――こうして僕はこの命がけの鍛錬に熱中していく。

               ◆
               ◆
               ◆

 夜も更けたので仮眠を取りに【万能の腕輪】の転移で僕の屋敷へ戻る。
 その際に、時雨先生に風邪で明日の終業式を休むと告げると『今はよく休んで、考え抜け』と激励された。
 時雨先生にはバレバレのようだ。
とは言えこれで先生の正式な了承ももらえた。あとは自己鍛錬のみ!


 それから2日中、僕は広大な湿地帯で我武者羅にレベル上げに専念した。
 湿地帯に生息する魔物(モンスター)には、【水大蛇】、【水猿】がいた。
 どれもレベル6がせいぜいであり、僕の鍛錬の対象としてはふさわしくない。
 そこで、【魔双頭鰐】を捜し屠ることを繰り返す。

 レベルが20を超えると再びレベルが上がらなくなる。この湿地帯もそろそろ、終了の頃合だ。先に進むとしよう。
 その前に改めてこの2日間の成果を確認することにする。

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             ステータス
【楠恭弥】
★レベル:26
★能力値:HP790/790 MP250/800 筋力262 耐久力264 俊敏性263 器用264 魔力265 魔力耐性260
★スキル:《進化LV3(640/1000)》、《蜘蛛糸LV6(――)》、《爆炎LV6(――)》
★魔術:《創造魔術(クリエイトマジック)
★EXP:1800/8000
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 レベルは26になった。以前の約260倍だ。かなりの強さといえよう。
 獲得スキルも見ていきたい。

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             【進化】
★説明:必要経験値・スキルポイント50分の1。獲得経験値・スキルポイント8倍。
★LV3:(640/1000)
★ランク:至高
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 反則的な技術(スキル)だ。
 この湿地でレベル26まで2日で到達したのもこのスキル故だ。本来なら数年かかって到達すべきところなのは間違いあるまい。

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             【蜘蛛糸】
★説明:身体から丈夫な糸を発生させる。糸の強さは発動者の【器用】に依存。
◎《可変糸》:糸は単糸から網目状まで発動者の意思で自由に選択し得、かつ自在に伸長・可動し得る。
◎《変硬糸》:糸は弾力性がある状態から鋼鉄さえも容易に引き裂くほどの硬さまで変硬可能。
★LV6:(――)
★ランク:一般(ノーマル)
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 【蜘蛛糸】はLVが上昇するごとに使い勝手がよくなり、LV6になると、僕の意思で糸を自在に伸長し、動かせるまでになった。今では糸で簡単な文字も書ける。

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             【爆炎】
★説明:対象物を爆発し燃焼する。
・《視認爆炎》:視認した場所の一定の範囲に爆炎を発生させる。
★LV6:(――)
★ランク:一般(ノーマル)
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 LV1は前方に爆発する炎の球体を投げつけることしかできなかったが、LV6になると、僕が見た任意の場所を一定の範囲で爆発させることができるようになった。
 感触ではLVが上がるごとにスキルは使いやすくなるようだ。
【水大蛇】、【水猿】は魔術もスキルも所持しておらず、新たな獲得はできなかった。
 2日間の成果はこんなところだ。先に進もう。


 湿地を抜けると再び密林となりスライム、ゴブリンの楽園となる。
 密林を進んでいると巨大な盾に全身甲冑を装備する大男や、皮のジャケットにミニスカートという軽装の耳がとんがっているお姉さん、巨大な斧を肩に担いだ背が低いが屈強な髭面の男など、どの角度から見てもファンタジー系のコスプレをしている風にしか見えない団体さんと出くわした。

(あの耳のとがったお姉さん、エルフ? とすると、背の小さなおじさんはドワーフってやつ? まさにファンタジー系のゲームや小説の世界だ。
魔物しかいないから最初地獄界かと思ってたけどどうやら違う。
 きっと、五界じゃないよ。未確認の異世界だ)

 僕の興奮気味の無遠慮な視線に気を悪くしたらしく、団体さんは鋭い刃物のような視線を僕に向けてくる。ここでもめてもいい事はない。視線を外して先を進む。
 すれ違う人の数がさらに増え、さらに30分ほど歩くと森が終わり草原となった。
 心地よい微風が僕の顔を撫でる。あまりに気持ちがいいので地面に横になり雲一つない青空を暫く眺めていた。


 この人の数からして近くに街か村か、何らかの大きな集落があるのは確実だ。 森から出てくる冒険者風のパーティーの後をついていけば集落にたどり着けるはず。
 都合よく男女のカップルと思しきパーティーが森から出てきたので、彼らの十数メートル後を黙ってついていく。
 数十分歩くと巨大な城壁を視界に入れることができた。もう案内は必要ない。
 僕の姿に気づいたカップルが何度も振り返り不審たっぷりの視線を向けてきて正直鬱陶しかったところだ。
 石に座って暫し休憩し、カップルをやり過ごしてから歩き始める。


 城門前に到着するが、人や馬車が長蛇の列を作っていた。
 僕は最後尾に並ぶが、当分僕の順番はきそうもない。
 そこで周囲の話に耳を傾けていると、結構な量の情報を得ることができた。以下は商人達の話を総合し、整理したものだ。
 まずここは冒険者の聖地――グラム。他のいずれの国にも属さぬ、冒険者を統括する組織である冒険者組合の本部がある地。
 このグラム周辺には、東に《終焉の迷宮》、北に《死者の都》、西に《永遠の森》、南に《裁きの塔(さばきのとう)》がある。これらはすべて凡そ70年ほど前に忽然とこの地に出現したもので、いずれも強力な魔物が跳梁跋扈しているらしい。
 このグラムの遥か北部地方にオルト帝国、西部地方にエルフ国――ミュー、ドワーフ国――ドォルブ、獣人国――ガル、南部地方にフリューン王国と小国家、東部地方にワ国と竜人国。
 帝国はエルフ国ミュー、獣人国ガルに対し宣戦布告し、現在戦争状態に突入しており、現在帝国が優位らしい。 
 この街グラムは北門周辺の北地区が、冒険者組合の本部と各国の大使館等の公的施設。
 西地区が商業地区。東地区が宿屋等の宿泊施設、飲み屋等の飲食店、一流の冒険者の住居。南地区が娼館や奴隷市場、貧困街。
 まだまだ知りたいことは山ほどがあるが、僕はこの世界で暮らす気はない。あくまで武者修行のようなものだ。この程度で十分かもしれない。

 列に並ぶこと約2時間、やっとのことで僕の順番が来る。
 鉄製のライトアーマーを装着した兵士風の青年は僕を一瞥すると強い口調で僕に指示した。

「身分証を呈示しろ」

「僕はフリューン王国の小さな村の出身なので身分証がありません」

 これは4つほど前にいた冒険者志望の青年が似たような話をしていたので真似をしたのだ。兵士は僕に鉄のカードを放り投げてくる。

「そのカードは仮の身分証だ。すぐに冒険者組合第一館で冒険者の登録をしろ。
 冒険者カードが次回からの身分証となる」

「ありがとうございます」

 頭をペコリと下げると、速く行けと親指で促される。


 西の城門を抜けると、そこは西地区の巨大商業区。特に現在正午であることもあり、メインストリートは活気で満ち溢れていた。
 歩くたびに威勢の良いお客を呼ぶ掛け声が耳に飛び込み、香ばしい肉の匂いが僕の嗅覚を刺激する。
 丁度お昼時であることもあり見ているだけで涎がでそうだが、今は金がない。
 この世界がゲームや小説と似て設定されているなら、【紅石】はそれなりの値段で売れるはず。そうしたら昼飯を食べるだけの金銭は得られるはずだ。

 次が冒険者の説明です。
 お読みいただきありがとうございます。
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