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 主要7カ国(G7)広島外相会合が11日、2日間の日程を終えて閉幕した。被爆地から核兵器のない世界を目指す「広島宣言」や、テロや難民問題などに連携して対応する共同声明を採択。核保有国の米英仏を含む各国外相が平和記念公園を訪れ、核軍縮・不拡散にG7で一致して取り組む姿勢を見せた。

 G7の核保有国の現職外相が同公園を訪問したのは、被爆から71年で初めてのことだ。岸田文雄外相は11日、広島市内で記者会見し、「G7各国外相が平和記念公園を訪れたことと合わせて、国際社会で核なき世界を作っていく機運を再び盛り上げる歴史的な一歩になった」と被爆地で開催した意義を強調した。

 外相会合で採択された広島宣言は、「広島及び長崎の人々は原爆投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難を経験した」と核兵器の使用による被害の大きさを指摘した。一方で、日本が従来主張してきた「核兵器の非人道性」の表現は見送った。非核保有国の中に「核の非人道性」を根拠に核兵器の法的禁止を求める動きが広がり、米仏など核保有国が反発していることに配慮した。

 宣言は、「核兵器国の核戦力は大幅に削減された」として、G7の核保有国による核兵器の透明性は向上しているとした。「核兵器のない世界」の実現には「現実的、漸進的なアプローチ」が必要だと強調し、非核保有国の間で広まる大胆な核廃絶論とは一線を画した。核保有国と非核保有国との対話の促進も訴えた。

 核弾頭保有数を明らかにしていない中国を念頭に、核兵器の透明性を高めるよう要請。各国の政治指導者の広島、長崎訪問を促す内容も盛り込んだ。

 外相会合の共同声明には、過激派組織「イスラム国」(IS)を始めとするテロや難民問題への対策強化を明記。核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮については「最も強い表現で非難する」とした。

 また中国の海洋進出を念頭に「海洋安全保障に関する声明」を発表。名指しを避けながらも、「東シナ海、南シナ海における状況を懸念する」「埋め立て、拠点構築、軍事目的利用を自制し、国際法に従って行動するよう要求する」と中国の動きを牽制(けんせい)した。紛争当事国が、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所の決定に従うことも求めた。

 広島宣言とは別に「不拡散及び軍縮に関する声明」も発表し、昨年イランが欧米と合意した核開発制限について「完全に履行されなければならない」とした。

 岸田氏は9~11日、体調不良を理由に会談を中止した欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表と、12日に東京で会談するエロー外相を除く各国外相と個別に会談した。(渡辺哲哉)

■「広島宣言」の骨子

・広島・長崎の人々は、原爆投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験

・包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を

・G7以外の核保有国に核兵器の透明性を求める

・政治指導者らの広島・長崎訪問を希望

(原文は英語。外務省の訳による)

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