昨年9月に現地調査が実施された際、香港大学建築学部のリン・ディステファノ助教授は「該当書院がどのように相互につながっているのかが分からない。書院という建築物だけでなく、周囲の自然景観も合わせて保護・管理すべきだが、そうではない」と周辺の景観をなす要素も遺産区域に含まれることを勧告した。その後、文化財庁は9書院の文化財保護区域を拡大するなど努力したが、本会議で逆転は無理だという結論に至った。匿名希望の文化財界関係者は「同じ書院でも教育理念や哲学が違う。例えば、『退渓』という号で知られる儒学者の李滉(イ・ファン)を祀(まつ)った書院だけをつなぐなど、各書院のネットワークがどのように連続性があるのか強調すべきだった。同じ『大学』でも延世大学と高麗大学を一つにまとめて申請したのと同じだ」と言った。
ユネスコ加盟国の中でも世界遺産登録の実績が高い「優等生」と言われる韓国だが、7月にトルコのイスタンブールで開催される第40回ユネスコ世界遺産委員会では他国に拍手をするだけとなった。このところ複数の自治体が競い合うように登録を推進した動きにも歯止めがかかる。ソウル市が推進し、来年のユネスコ世界遺産委員会で最終決定すると見られる「漢陽都城」や、2018年の登録候補「韓国の伝統山寺」も心配だ。特に、「韓国の伝統山寺」は、連続性が弱い全国の7寺院をまとめて申請する予定だが、そのまま申請すれば脱落するのは目に見えている。韓国には、1995年に「石窟庵と仏国寺」がユネスコ世界文化遺産に初登録されたのをはじめ、昨年の「百済歴史遺跡」まで計11件の文化遺産と1件の自然遺産「済州島の火山島と溶岩洞窟」がある。