各国首脳は被爆地訪問を 広島宣言採択
岸田文雄外相や米国のケリー国務長官ら主要7カ国(G7)の外相が11日、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆資料館を視察し、原爆慰霊碑に献花した。核保有5大国(米英仏露中)の現職外相の被爆地訪問は史上初めて。同日まで開かれたG7外相会合は、核兵器を保有する米英仏の外相の広島訪問という歴史的な区切りを踏まえ、各国首脳に被爆地訪問を求める「広島宣言」を採択した。
ケリー氏やハモンド英外相、エロー仏外相らG7外相は原爆資料館で被爆者の遺品の展示に見入り、約30分の予定を上回る約50分を割いた。その後、約800人の地元小学生が見守る通路を慰霊碑に向かい、「安らかに眠って下さい 過ちは繰(くり)返しませぬから」と刻まれた石碑に献花。子どもたちから贈られた折り鶴のレイを首にかけ、原爆ドームを背景に記念撮影した。
その後、ケリー氏の呼びかけで歩いて原爆ドームを視察。ケリー氏はツイッターに「原爆資料館と平和記念公園を訪れた最初の米国務長官となったことを光栄に思う」と書き込んだ。
広島宣言は「政治指導者やその他の訪問者が広島および長崎を訪れ、深く心を揺さぶられてきた。他の人々の訪問を希望する」として世界に被爆地訪問を提唱。また、原爆投下を「極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」と表現し、核軍縮の必要性を強調した。
核保有5大国首脳の被爆地訪問は、1991年にソ連のゴルバチョフ大統領(当時)が長崎を訪れたのが唯一で、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でのオバマ米大統領の訪問に期待が高まっている。
ケリー氏は原爆資料館の芳名録に「全ての人が広島を訪れるべきだ」と記帳。その後の記者会見で「米国の大統領がこの地に来られる日の到来を祈っている」と述べたが、オバマ氏の広島訪問の可能性は「大統領の日程がある」などとして明言しなかった。
岸田氏は記者会見で「G7外相の史上初の訪問は、核のない世界に向けた国際的機運を盛り上げる歴史的な一歩になった」と述べたが、2大核保有国である米露のウクライナ問題を巡る対立を念頭に、「軍縮・不拡散を巡る現状は大変厳しい」と語った。外相を案内した松井一実広島市長は記者団に「原爆ドームは予定になかったのに直接見てもらい、ありがたい」と評価した。【田所柳子、大前仁、竹内麻子】