この20年余り、北朝鮮は約10個の核兵器と射程1万キロを超えるミサイルを開発したが、韓国は米国に依存するばかりで自ら効果的な対応策を講じられなかった。韓国政府は、北朝鮮による核ミサイルの発射の前段階から攻撃を受けた後の反撃段階に至るまで、どれ一つとっても確実な備えができていない。
北朝鮮の核攻撃を防ぐ最良の方法は、ミサイルの発射前に先制攻撃を仕掛けることだ。そのためには北朝鮮の移動式発射台や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の探知能力が必須となるが、まだ備わっていない。現在、韓米が保有する終末(最終)段階の下層防衛用ミサイルでは、北朝鮮のミサイルを空中で迎撃するには限界がある。そのため、韓米は上層防衛用として米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備を協議しているが、中国の反対で実現は不透明な状況だ。
韓米が北朝鮮の核攻撃に何倍もの核で反撃する能力があるなら、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記もむやみに挑発に出ることはないはずだ。だが、韓国には核兵器がなく、米国の「核の傘」は作動するかどうかが不確実だ。ロサンゼルスが北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」により焦土化される状況がくれば、米国は韓国を助けられないかもしれない。そのため、米国の核の傘は「破れている」との指摘もある。
そんな目も当てられない現実を踏まえ、韓国では今年初めから独自の核武装論が台頭している。北朝鮮による1月の4回目核実験後に行われた世論調査でも、核武装に賛成(54%)が反対(38%)を大きく上回った。だが、政府は一貫して核武装に反対を表明しており、外交・国防分野の元高官らも「得るものより失うものの方が多い」と否定的だ。一部では「韓国が核武装すれば北朝鮮の核に免罪符を与えることになる」との主張もある。強盗にナイフを突きつけられても、自分を守るための武器で立ち向かってはならないという強弁にほかならない。