20代の半数以上が感じていた「スクールカースト」の悲惨な実態

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2016.04.11

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学内でのイジメ問題に関連し、「スクールカースト」という言葉をよく耳にするようになりました。

『桐島、部活やめるってよ』や『暗殺教室』など、人気作品の背景になっていることでも知られていますが、つまりは学校社会に存在する階級制度のこと。学年とは異なるピラミッド状の上下関係が生じていることから、カースト制度になぞらえてこう表現されています。

このスクールカーストについて、株式会社オウチーノが「高校時代にスクールカーストはなかったと思うか?」という質問を投げかけたところ、30代の61%が「カーストはなかった」と答えたのに対し、20代で「カーストはなかった」と答えた人は約44%しかいなかったそうです。

つまり、20代の半数以上がスクールカーストの存在を感じていたことになるのです。

しかし、私たちはそんなスクールカーストを本当に理解しているのでしょうか?

学生時代にはスクールカーストなど感じなかったという人や、逆にスクールカーストにどっぷりつかっていた人には見えてこないなにかがあるかもしれません。

そこで今回は、エッセイ漫画『いつもうっすら黒歴史』で、スクールカーストの外で過ごした高校生活を描いた「お肉おいしいさん(以下お肉さん)」にお話を伺ってきました。

スクールカーストを外から眺めていたお肉さんだからこそ語ることのできるカースト像とは、いったいどのようなものなのでしょうか?

■「見た目がすべて」から生まれるスクールカースト

「入学したてのころは当然スクールカーストなんてありません。みんな誰がリーダーなのかという探り合いから、徐々にグループを形成していき、スクールカーストができていきます」とお肉さん。

形成されたグループには序列があり、お肉さんの学校ではいちばん上がギャル、次に運動部・優等生タイプ・オタクと続いていたそうです。また、ギャルグループのなかにだけ、スクールカーストの存在に気がつかない人がいたとのこと。

お肉さんは、どのグループにも属していませんでした。

「私がカーストの外にいたのは、コミュニケーションが苦手だったことと、お洒落などに興味がなかったことが原因です」

学生時代は外見だけで人を判断し、ダサい人は見下されるような世界だったそうです。また、「誰と話すか」も重要でした。ダサいと思われている人と仲よくすると、自分もダサいと思われ見下される世界だったそうです。

そんななか、お肉さんは話しかけることも話しかけられることもなく、どこのグループにも所属することができなかったとのこと。

「高校時代はみんな精神が未熟だったんでしょうね。自分と他人をくらべてしまい、『アイツは私より下だ』みたいなことをやっているうちに、自然にスクールカーストができていったんだと思います」

また、グループのなかにも細分化されたカーストが。たとえばカーストの頂点であるギャルグループのなかにも序列があり、グループのリーダーが存在していたそうです。最下層のオタクグループも同じような状況でした。

「ギャルなのにオタクな人は、オタクだとばれないようにしていました。オタクが迫害される時代でしたから。そういう子は世渡りがうまかったですね。誰にも見られないところで私に話しかけてきたりして(笑)」

■学校生活はスクールカーストが全てで逃れられない

では、学校生活とスクールカーストはどのように結びついていたのでしょうか?

「休み時間や昼休みは、みんなカースト内で過ごしていました。私はひとりで本を読んでいることが多かったですが、同じようにグループに入れなかった友人と一緒にいることもありました」

学校生活のほとんどを固定されたグループで過ごしていたそうですが、他のグループとの交流がまったくなかったわけではないそうです。ギャル~優等生までのグループは仲がよく、一緒にいることもありましたが、オタクグループは蚊帳の外だったとのこと。

また、固定化されたカーストに変化があっても、クラス替えのときに数人が上のグループに入る程度で、最初に形成されたグループは卒業までそのままだそうです。

お肉さんの学校では明確ないじめはなく、あっても嫌がらせ程度のものでしたが、なかには上位のカーストにいたのにトラブルを起こしカーストの外になってしまう学生もいたとのこと。

そういう学生は「誰ともつきあわないよりましだから」という理由でお肉さんと一緒にいるようになったそうです。

■ネット上だとカーストはないが少し変わりつつある

学校内ではグループでの行動が目立ちましたが、ネットの世界ではみんな自由に交流していたようです。

「SNSやメールでは人目を気にしなかったり、いいたいことをはっきりと発言できたりするのでグループ外の人とも交流があったみたいです。でも、ネットのつきあいがあっても現実では一切つながろうとしないですね」

また、お肉さんは、ネットがスクールカーストに変化を与えたかもしれないとおっしゃっていました。

1つ目の変化は、オタクが認知されたことによるもの。動画サイトでアニメが見られるようになったことでオタクが認知され、迫害されることは少なくなった可能性があるということ。

2つ目の変化はLINEの登場によるものです。グループラインで四六時中誰かの悪口をいえるようになり、ネットの世界にもカーストが入ってきているかもしれないとのことです。

オタクが受け入れられるようになったのはいいことですが、その一方で、学生がLINEを使用して起こしたトラブルやイジメが問題になっているように、ネットの進化はスクールカーストの悪い側面を強調しているようです。

■お肉さんが「地獄のような高校生活」で学んだこと

「高校生活を楽しいと思ったことは一度もありませんでした。学校を辞めようとも思いましたが、親が許してくれなかったのと、辞めたら将来なににもなれないと思いなんとか卒業しました」

そう語るお肉さん。最後に学生生活で学んだことを伺いました。

「人は見た目で人を判断してしまい、中々中身を見てくれないということです」

そう断言するお肉さんですが、決してマイナス思考というわけではありません。本書のあとがきでこのようなことをおっしゃっています。

「ずれている人間はズレている人間なりの生き方がある」(本書あとがきより引用)

普通の人とくらべて少しズレているからといって、それをなおそうとすると余計に辛くなってしまいます。周囲の目を気にして自分に向いてない生き方をするよりも、ズレているなりの生き方をした方がずっと楽なのではないでしょうか。

自分らしい生き方を貫いていれば、それを認めてくれる人がいるかもしれません。

スクールカーストの根幹にあるのは、「誰かと同じでなければ安心できない」という気持ちなのではないでしょうか。

だからこそ外面ばかりを気にしてしまい、他人と違ったことをして孤立してしまわないよう、自分と他人を比べているうちにカーストが形成されてしまう、大人でも人を見た目で判断しがちなのに、未熟な学生ならなおさらです。

今回のインタビューで、スクールカーストは学生だけの問題ではないように感じました。

社会のなかで出る杭にならないよう、自分の外面ばかり気にし、他人の中身を見ずに過ごしていませんか? もしそうだとしたら、周囲でカーストが形成されているかもしれません。

実際に「社会人カースト」という言葉がメディアに登場するようになりました。スクールカーストは学生だけの問題と決めつけず、自分と周囲の関わり方を見直す必要があるのでしょう。

(文/堀江くらは)

 

【取材協力】

※お肉おいしい・・・漫画家・イラストレーター。1988年秋田県生まれ。等身大のコミックエッセイがネットを中心に人気を集めている。著書に『ほっこりできない根暗オタク女の日常をまんがにしてみた』『いつもうっすら黒歴史』等がある。

 

【参考】

お肉おいしい(2016)『いつもうっすら黒歴史』KADOKAWA

「スクールカースト・社会人カースト」実態調査-株式会社オウチーノ

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