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 論説 :  栃木女児殺害判決/取り調べは全て記録を
 2005年に栃木県今市市(現日光市)の小1女児を連れ去り殺害したとして殺人罪に問われた勝又拓哉被告の裁判員裁判で宇都宮地裁は、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。凶器や遺留品など有力な物証はなく、捜査段階の自白が取調官の誘導や強要によらず自らの意思でなされたか、客観的事実で裏付けられるかが争点になった。

 公判で被告は起訴内容を全面的に否認して無罪を主張。検察側は裁判員を前に、被告が女児殺害を供述した場面を中心に7時間以上に及ぶ取り調べの録音・録画を再生した。異例の長さだ。さらに殺害現場や遺体の状況とも整合性が取れているとして「自白は具体的で、犯人でなければ到底話せない」と強調した。

 法廷に流れた映像で被告は殺害について「弁解はない」と言ったかと思うと、すぐ否認に転じ、1週間ほどすると、再び泣きながら認めるなど供述は変遷。押し黙ったり取り乱したりする場面もあった。ただ、これは約80時間の全記録を編集したものだ。しかも取り調べの一部はもともと記録されていなかった。

 本来、取り調べの全てを記録して必要な場面をいつでも引き出せるようにしておくべきだ。そうではなかった今回、自白の信用性を巡り裁判員は難しい判断を迫られ、判決期日延期につながったとされる。録音・録画の在り方の再検討が求められよう。

 勝又被告は別の事件で逮捕され勾留中の14年2月18日、検察の取り調べで初めて女児殺害を自白した。しかし、この場面は録音・録画されなかった。また3カ月半後の6月3日に殺人容疑で再逮捕されるまで警察による任意の取り調べを受けたが、この間の記録もない。検察の録音・録画は最初の自白後、警察分は再逮捕時に開始された。

 映像で検察側が「最も重要」と位置付けたのが14年6月11日の場面。検察官に「殺したのは君だね。拓哉君」と語り掛けられると、勝又被告は「はい」と答え、殺害の状況について身ぶり手ぶりを交えて説明。「楽になった」と深呼吸し、頭を下げた。

 これを基に作成された自白調書は証拠として採用されたが、弁護側は「遺体や現場の状況と一致しない」と反論。また録音・録画がされていない時に取調官の誘導や強要があったと主張した。

 この点について、地裁判決は自白の任意性を認めた上で「実際に体験した者でなければ語ることのできない具体的で迫真性に富んだ内容」「被告の供述によって初めて明らかになった事実も複数ある」とし「信用できる」と判断。「客観的証拠から認められる事実と符合する」とした。

 やはり被告が否認し、有力な物証もなかった大阪母子殺害放火事件で、一審無期懲役判決と二審死刑判決をいずれも破棄し差し戻した10年4月の最高裁判決は「被告が犯人でなければ説明できないか、少なくとも説明が極めて困難な事実関係が認定できることが必要」との基準を示している。

 裁判員はこれも念頭に置いて、自白の評価に取り組んだとみられるが、取り調べの記録がない部分もあり、容易ではなかっただろう。そもそもプロの裁判官が手を焼きそうな事件で、裁判員に判断を迫るのが妥当かも考えたい。

('16/04/09 無断転載禁止)

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