2016年4月7日(木)

働き方が変わる

河野
「『分身ロボット』についてです。」

鈴木
「あまり聞いた事はないかもしれませんが、今、私たちの働き方を大きく変えようとしています。」

淡路島にいる店員が 東京でアドバイス

三條リポーター
「東京・渋谷に先月(3月)オープンした、テニスショップです。
こちらでは、接客にロボットを取り入れているということなんです。」


 

三浦史江さん
“いらっしゃいませー。”

三條リポーター
「店員さんですか?」

三浦史江さん
“店員です。”

先月、この店に登場した分身ロボット。
車輪を使って、店の中を自在に動き回ります。



 

分身ロボットに映っているのは、店員の三浦史江(みうら・ふみえ)さんです。
プロのテニスコーチで、物流の責任者でもあり、商品のことを知り尽くしています。



 

三浦史江さん
“いかがですか、そのウェア。”


「あまり日本にはないみたいなので。」
 

三浦史江さん
“サイズ探しましょうか。”

三浦さんが、どこにいるのかといいますと…。

三條リポーター
「穏やかな瀬戸内海に浮かぶ、淡路島。
東京からおよそ500キロ離れた、この場所に、あの三浦さんがいらっしゃるということなんですね。」

 

それは、淡路島にある、テニスショップの運営会社でした。
会社は、分身ロボットを使って、三浦さんの豊富な知識を東京での接客に生かそうと考えたのです。
三浦さんは、ロボットが写す店の様子を見て、パソコンで遠隔操作します。

 

キーボードで自由にロボットを移動させることができます。




 

三浦史江さん
“くるっと一周回ってみて下さい。”

三浦史江さん
“こんにちは。
基本になる足形が、メーカーによって違うので、プレーヤーモデルのほうが少しきつく感じるんです。”


「新しさを感じますよね、売り方に。
買うほうとしても、新しい感覚で買える。」


 


「親切に色々と質問にも答えてくださる。
びっくりしました。」

在宅のままで… プレゼンの行方は?

三條リポーター
「分身ロボットは、体の不自由な人たちが働く可能性を広げています。」

埼玉県日高市に住む、中川貴裕(なかがわ・たかひろ)さんです。
持病の筋ジストロフィーが進行し、去年(2015年)4月から在宅勤務を余儀なくされました。
中川さんは今、分身ロボットを使って仕事をしています。

 

こちらが、その分身ロボット。

同僚
「中川さん、ちゃんと眠れた?
大丈夫?」

 

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
“大丈夫です。”



 

タブレットを操作して、首や手を動かし、感情を表現します。




 

バリアフリーに関する調査を行う、この会社。
中川さんのプレゼン能力を高く評価しています。
その能力を在宅でも発揮してほしいと、分身ロボットを導入したと言います。
この日、中川さんは、上司とともに分身ロボットでの、初めてのプレゼンに臨みました。



上司
「中川くん、やっぱり、あれだね。
普段打ち合わせしているときと違って、お客様のときだと緊張感伝わってくるね。」


 

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
“緊張感伝わりますか。
非常に緊張してます。”

顧客企業
「こんにちは。
よろしくお願いします。」

顧客が現れました。

顧客企業
「中川さん、お久しぶりです。」

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
“よろしくお願いします。
中川です。
こう見えても。”

分身ロボットで顧客に向かっておじぎをします。
中川さんは、障害者の採用を拡大しようとしている顧客に対し、全国の雇用状況を分析し、提言をまとめていました。

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
“精神障害者の方を雇用する場合には…。”

強調したいポイントを身ぶり手ぶりで伝えます。
顧客は、中川さんの熱意を感じ取り、次々に質問しました。

顧客企業
「就職率、どのくらいマッチングができているか。」

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
“身体障害者の方で、12.6%が就職。
それ以外で、20.1%の方が就職された。”


 

プレゼンは、高い評価を得ました。

顧客企業
「本当に中川さんがここにいて、打ち合わせに参加していると感じました。」



 

分身ロボットで在宅勤務 中川貴裕さん
「私が緊張しているのも伝わる。
ロボットごしで伝わるのは、今日初めて知った。
私と、離れている本社の社員、お客様をつなぐ、大事なコミュニケ—ションツールかなと。」

人生初の仕事 もたらされた転機

分身ロボットは、寝たきりの人の生き方も変えようとしています。

盛岡市に住む、番田雄太(ばんだ・ゆうた)さんです。
脊髄損傷のため、首から下を動かすことができません。



 

あごでパソコンを使い、分身ロボットを操作します。
去年7月、生まれて初めて仕事に就きました。



 

分身ロボットで在宅勤務 番田雄太さん
「会社に勤めているという部分、実感している感じは出てきましたね。」



 

番田さんが分身ロボットの姿で毎日出社するのは、東京都三鷹市にあるロボットを開発した会社です。

「おはよう、番田くん。」

分身ロボットで在宅勤務 番田雄太さん
“おはようございます。”

番田さんは、ロボットでコミュニケーションをとりながら、同僚のスケジュール管理などをしています。
この日は、ユーザーの立場から分身ロボットへの意見を求められました。

「使ってて、何か気になることはある?」

分身ロボットで在宅勤務 番田雄太さん
“後ろから人が来たら、その人を何か感じられるみたいな。”

「ああ、気配ね。」

ロボットの背後に人が近づくと、認識する機能を提案しました。

分身ロボットで在宅勤務 番田雄太さん
「近くに人がいるのに声をかけられないのは、もったいない。」

働き始めて、半年。
番田さんは、自分の中に変化を感じています。

分身ロボットで在宅勤務 番田雄太さん
「奇跡というか転機。
自分を必要してくれる人がいて、自分が社会や人の役に立てると感じられたとき、存在は自分でも感じるのだと思います。」

働き方を変える “分身ロボット”

鈴木
「仕事を通して、人の役に立っている事が、番田さんの生きがいになっているというのが、見ていて伝わってきましたね。
この分身ロボットの、大きな大きな可能性を感じますね。」

河野
「先ほど、分身ロボットが会議に参加しているシーンがありましたけど、同じように遠隔地から参加するという意味では、テレビ電話のシステムもこれまであったわけですけど、どう違うのかなと思って、取材した三條リポーターに聞いたら、やはり分身ロボットが会議にいると、そこに本人がいるように感じると言うんですよね、『その場にいる』と。
そう考えると、すごい効果があるんじゃないかと思いますから、このあと、どう進化していくか楽しみです。」

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