小林裕子
2016年4月11日01時11分
大手との取引がなくなったことなどで迎えた存亡の危機を、少数精鋭の団結で乗り越えた酒蔵がある。愛知県阿久比(あぐい)町の酒蔵「丸一酒造」。全員30代の蔵人4人は、苦境をバネに高品質の日本酒を造り続ける。
2月中旬、酒蔵は仕込み作業の真っ最中だった。午前10時。蒸し上がった酒米を総出で手際よく放冷機に入れる。冷ました米は仕込みタンクに送られ、神谷尚宏杜氏(とうじ)(32)は、タンク内のもろみをかきまわす「かい入れ」に精を出す。
創業は1917(大正6)年、主力銘柄は「ほしいずみ」。仕込み水の井戸に映る星に由来する命名で、芳醇(ほうじゅん)ですっきりとやさしい味わいだ。知多半島の酒は濃醇なイメージがあるが、丸一酒造は代々「淡麗辛口」を守ってきた。新酒の出来を競う全国新酒鑑評会(5月発表予定)で、2009年から連続して金賞を獲得している。
蔵の評価を一気に高めた前杜氏がやめたのは2年前。さらに昨年、大手メーカーとの取引がなくなった。最高2500石(一升瓶25万本)あった年間生産量は、10分の1以下の200石ほどになった。
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