時代の正体〈288〉補助金問題が映す現在地

ヘイトスピーチ考

川崎朝鮮初級学校の入学式には日本人ボランティアの「入学おめでとう応援隊」の姿も=3日

 文部科学省は自治体が朝鮮学校に交付している補助金の見直しを迫る通知を出した。自治体の権限に公然と介入を試みる異例で異様な措置。馳浩文科相は「減額や自粛、停止を指示するものではなく、留意点を示したもの」と説明するが、朝鮮学校を財政面から追い込みたい政権の意図がのぞく。その意味で異様さは一貫しており、エスカレートしてさえいる。

 朝方の雨も上がった3日、川崎市川崎区桜本にある川崎朝鮮初級学校。幼稚班1人、初級部4人の新入生を迎えた祝いの席で、姜文錫(カンムンソク)校長の心は晴れなかった。

 「われわれは一体、どこまでいじめられなければいけないのか」

 5日前の3月29日に発表された文科省通知に納得がいかなかった。

 〈朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総連が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております〉

 通知はこの認識を前提にし、続く。

 〈各地方公共団体におかれては、朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上、朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ、朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに、補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施をお願いします〉

 朝鮮学校と朝鮮総連と関係を「特性」と表現し、しかし、その何が問題なのか説明する記述はない。にもかかわらず、朝鮮学校への補助金のみをとりたてて問題視する姿勢には、論理の飛躍と矛盾があった。

 馳文科相の説明も欺瞞(ぎまん)に満ちていた。異例の措置の目的や北朝鮮への制裁との関連を問う記者団に「交付の権限は自治体にある。留意点を示しただけで、減額や自粛、停止を指示する内容ではない」と繰り返すばかり。そうであるなら、なぜ通知を出すのかという疑問には最後まで答えなかった。

 それどころか、やはり朝鮮総連の影響力を持ち出し、「公的資金なので適正、的確に執行し、住民にも情報公開してほしい」と、問題が既成の事実であるかのように語り、偏見を助長するものであるといえた。

 「民族団体と民族学校が密接な関係にあるのは当たり前。民族教育が最重要項目の一つだからだ。民団が東京韓国学校と、華僑総会が中華学校と関わりが深いのと同じだ」

 そう指摘するのは在日朝鮮人人権協会の金東鶴(キムトンハク)さん。通知の狙いを次のように受け止める。

 「朝鮮学校をなくしたい人たちが、通知を拡大解釈させて自治体を萎縮させ、補助金を止めさせようとしている。兵糧攻め以外の何ものでもない」

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