【萬物相】減速帯整備より重要なこと

【萬物相】減速帯整備より重要なこと

 ソウル市内の江辺北路(漢江北側沿いの都市高速道路、加陽大橋の北端から京畿道九里市との境まで)から市街地に入る道路には、自動車のスピードを抑えるため盛り上げて舗装した減速帯と呼ばれるものが三つ連続して設置されている。通常のタクシードライバーはこのことを知らないため、ついスピードを出したままこの減速帯に乗り上げてしまい、ドライバーも客も天井に頭をぶつけることがよくある。ある日、記者がタクシーを利用していた時のことだ。突然目の前に減速帯が現れた時、ドライバーは車を守ろうとする本能を発揮したのか、とっさに路肩にハンドルを切り衝撃を避けた。もちろんこのようなケースもよくあるが、ただそのたびに車が横転することへの恐怖を感じてしまう。

 減速帯は確かに車のスピードを落とす効果が認められるが、時にドライバーや周辺住民にとって大きな恐怖をもたらすことがある。政府は減速帯の規格を高さ10センチ、幅360センチと定めている。しかしソウル市内にはこの規格に合わない減速帯が1542カ所に設置されている。例えば大規模マンションの敷地内にある減速帯はこの規格に合わせる必要がない。そのため周辺住民があちこちに設置した減速帯で車はつらい思いをしている。もちろん車やドライバーだけではない。何の前触れもなく突然目の前に現れる減速帯を避けるため、大型トラックが横転してけが人が出たこともある。十数年前には減速帯に乗り上げたオートバイが転倒し、死者が出る事故も発生した。他国に比べて韓国の道路には減速帯が非常に多い。マナーが欠如したドライバーが多いためか、住民が自治体などに対策を求めると、通常はこの減速帯を設置することでドライバーに注意を促すケースが多いからだ。

 減速帯は走っている人の足に何かを引っ掛けるようなもので、いわば全ての自動車がスピード違反をしていると見なしているわけだ。このような十把一からげ式の対応による間接的な被害や費用は決して少なくない。例えば低床バスの恩恵を受けている身体障害者もとばっちりを受けている。低床バスは車体が低いため、減速帯に乗り上げると底が地面にこすれてしまう。その修理費用の負担を嫌い、バス会社は低床バスの導入をためらう。するとその影響は障害者が受ける。欧米では減速帯のため救急車の到着が遅れることが問題になった。減速帯を一つ乗り越えるたびに10秒ロスしてしまうからだ。この10秒が患者の生死を分けることもあるだろう。その影響かどうか分からないが、英国では毎年心筋梗塞で500人以上が命を落としている。

 ソウル市が減速帯の整理に乗り出すことが先日報じられた。規格に合わない減速帯、あるいはやたら無造作に設置された減速帯の取り締まりを行うということらしいが、これを口実にまた春の大掛かりな公共工事の季節が始まる。減速帯が事故を減らす効果は決して小さくない。米国や日本では減速帯が設置されることで交通事故が半分に減ったというデータもある。そのためこれらの国では学校や公園周辺など、必要な場所にはむしろ多く設置する動きが見られるが、もちろん減速帯だけで交通事故を全てなくせるとは考えていない。

 減速帯以外では例えば道幅を意図的に狭くするとか、あるいは道路を蛇行させるクランクの設置といった対策も取られている。さらに通常よりも低く幅もせまい平たい減速帯や、車への衝撃が少ないゴム製の減速帯なども効果的だが、もちろんこれらは通常の減速帯よりも多くの費用が掛かる。ちなみに金を掛けないで事故を減らす確実な方法は誰でも知っている。それはスピードを落とすべきところでスピードを落とす、ただそれだけのことだ。減速帯も良いが、まずはここから実践すべきではないだろうか。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【萬物相】減速帯整備より重要なこと

right

関連ニュース