ある女性向け記事を作るため、不倫女子にインタビューをしている。

　最初は身近な不倫女子に話を聞いていたのだが、そのうちに人脈切れを起こし「不倫している子はイネエガー！」と声かけするようになった。
　その結果、10人以上にしっかりとお話をうかがわせていただいた。
　やはり「身近にいる不倫女子の断片的な情報」より「２時間膝小僧突き合わせて聞き込んだ不倫のネットリ話」は全然違う。

　そこで気づいてしまったのが、若い不倫女子はみんな「ちょっとした外食に喜ぶ」「プレゼントなんていらない、あなたさえいれば」と思っている、めちゃくちゃいい子が多いという点だった。
 「今日、一緒に会えたのが何より幸せ」なんていう二次元と同じ言葉を通信アプリで書いている。
　私が知らなかっただけで、通信アプリはビジュアルノベルゲームだったのかな。たまに画像も入るし。

　いやいや、真面目でいい子がなんで不倫するんだよ！　と普通なら思うだろう。
　そこで、ピュア女子目線での不倫の始まり方をここでさらっておきたい。

不倫のあるあるルート（ピュア女子目線）

（１）仕事で行き詰まるが、いい子なので友だちも相談できないでいる。
（２）余裕のある既婚者に（相手が既婚者と知らないまま）優しくされる。
（３）恋にずっぷり落ちてひと晩を共にすごそう！　と思ったところで相手から既婚者だとネタバレされる……のはまだマシなほうで、ひどいケースだとずっと既婚者である事実を隠され続ける。
（４）既婚者と知った瞬間に激しく葛藤するが、いい子なので既婚者の「妻に会わなかったら君と結婚していた」「妻とはもう離婚する気だ」という言葉を真に受けてしまう。
（５）ザ・不倫ルートに入る。
（６）正妻にばれて修羅場となる。ピュアな不倫女子は、正妻が怒っている姿を見て初めて「本当は奥様、彼のことが好きだったの!?」とショックを受ける。

　不倫女子は既婚者の「妻はもう僕のことなんて気にかけてない」「別居中だ」「君をいちばん愛してる」なんて言葉を信じられるほど、無垢で真面目な子だ。
　考えてみれば、このロジックを信じられない限り不倫なんて起きえない。不倫女子は既婚者の言葉を鵜呑みにしてしまうくらいいい子なんである。

　私は嫉妬深いほうで、パートナーにへんな女が近づこうものなら住所を割り出して内容証明郵便を送りつけるタイプだ。
　だから正直、不倫女子には悪女でいてほしかった。
 「不倫相手には貢がせておいて、本命彼氏と普通に結婚します♡」と言ってもらえたら。

　でも、現実は真逆だ。
　インタビューをすればするほど、彼女たちが振り込め詐欺のような、「なんであんなものに」と周りが思うようなシンプルな欺瞞へ引っかかっているだけのような気がしてくる。

 「彼が初めて外で手をつないでくれて、もう死んでもいいと思った」
 「家で待ってることしかできないけど、だから好きなものだけを料理したい」
 「いつ連絡を絶っても大丈夫って、伝えてます」

　苦しい。やっぱり神様なんていなかったね。
　二次元レベルの最高に純真無垢な彼女は、揃いも揃って既婚者のオッサンに寝取られてましたよ。

　不倫女子たちに「同年代で彼氏いないの？」と聞くと、口を揃えてこう言うのだ。

 「私なんて相手にしてくれる方いないから」
 「そう思って頑張ってみたけど、お互い奥手だから進展がなくて」

　おいいいいいい！　同年代男子ぃぃぃぃ！　食事に誘うのも億劫だからって寝かせてる、一度だけ飲み会で意気投合した純真女子が既婚者のオッサンに汚されてるぞおおおお！！！

　そう、確かに私の同世代あたりから奥手男子は増えた。
　もちろん美人には比較的声がかかる。でも、ぐいぐいデートへ引っぱるのが「ダサい」という風潮は明らかに存在している。
　明らかなナンパ師より、草食のほうがマシだよね、というムードが強い。「恋愛もいいけど、それよか結婚したいよね」とつぶやいてる25歳男子、めちゃくちゃ多い。

　いいんだけど、いいんだけどそのあいだに25歳の女子が35歳までの10年を既婚オッサンに費やそうとしてしまうんだ！　止めて!!　誰かあああああ！

　インタビュアーという手前、私は不倫女子を止めないし、応援もしない。
　だが、不倫女子には「不倫大好き！」な子よりも「単に相手の話を信じていたら不倫沼で溺れていた」ケースも多い。
　そういう子を救えるのは、いまのアラサー男子しかいない。
　連絡先一覧で眠っている一度だけ集団飲みで話した女子のアカウントに、いまから渾身のすべらない画像を送ってやってくれ。
　あとは、頼んだ。