アニメ熱いぞ!京都・宇治 ヒット作拠点、高校に制作コースも
京都府宇治市と聞けば、世界遺産の平等院や宇治茶が頭に浮かぶ。しかし、アニメーションでも注目を集めている。人気アニメの舞台となり、ヒット作を連発する制作会社やアニメを学べる高校がある。宇治はアニメでも熱いのだ。
吹奏楽部に所属する女子高校生の青春を描いた人気アニメ「響け!ユーフォニアム」は、宇治市が舞台。宇治橋や県(あがた)神社、京阪宇治駅などさまざまなスポットが登場する。昨春にテレビ放映されると人気を集め、23日には劇場版が公開予定で続編も制作中だ。
街では、これらのスポット「聖地」を訪ね歩くファンに多く出会う。登場した場所の写真を撮って自身のサイトにアップし冊子も作るなど、熱烈なファンの会社員関西馬(せきさいま)さん(35)=ハンドルネーム、奈良市=に聖地を案内してもらった。
まずは宇治川左岸、平等院東側の井川用水機場そばのベンチ。主人公の女子高生が金管楽器ユーフォニアムを練習する場所で、彼女の名前から「久美子ベンチ」と呼ばれる。関さんは「ファンの間で人気の一、二を争う」。
次は右岸の大吉山(仏徳山)。主人公と仲間が展望台で楽器を演奏して心を通わせるシーンが印象的で「最高の『Sランク』聖地」(関さん)。宇治橋では、主人公が「うまくなりたい」と感情を爆発させて駆け抜ける。関さんは「川と橋の魅力でストーリーがより際立つ」と説明する。
大吉山の展望台にいたファンの会社員金範熙さん(29)=大阪市=は「久美子ベンチからの景色がきれい。朝霧橋や宇治神社が日本的で一番好き」と話した。
このアニメを手掛けたのは、京都アニメーション。1981年の創業から宇治市木幡に本社を構え、「らき☆すた」「けいおん!」「たまこまーけっと」などが大ヒットした。本社近くにキャラクターショップを出店し、アジア各国や米国からもファンが訪れる。
主要な舞台を宇治にしたのは初めてだった。制作担当者は「観光地でありながら、それを押し出さず、ありのままの姿が描けるのが魅力。宇治は伸び伸びとものづくりに集中でき、作品に向き合える」と語る。
また同市五ケ庄にある京都芸術高は昨夏のまんが甲子園で府内の出場校として過去最高の2位に輝くなど漫画で有名だが、アニメ制作を教えるコースも設置する。2、3年生約80人がパソコンでのイラスト作製、絵コンテやストーリー作りを学ぶ。中学生を対象にアニメ制作を体験できるワークショップも開き、三宅等副教頭(54)は「宇治のまちづくりに一役買えれば」と話す。
京都文教大(同市槙島町)では学生がアニメによる地域振興を応援するプロジェクトを結成。商店街のイベントに参加し、コンサートを開催する。
「宇治川や山並みなど宇治は絵になりやすい景色が多い」。仕掛け人で、アニメや漫画などを観光に生かすコンテンツツーリズムを研究する片山明久総合社会学部准教授(57)は指摘する。ファンへのアンケートで、訪問を重ねると平等院や宇治茶など宇治の歴史や文化に目を向ける人が増えることが分かってきた。「少なかった若い宇治ファンが定着するかもしれない」と期待を寄せる。
【 2016年04月10日 15時45分 】