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王女は復讐を胸に 作者:鋼雅 暁
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:あなたは、王宮一の馬鹿男よ:

 胸元を武骨な指で撫で、時折軽く揉む――というか、くすぐりながら、アランは王女の様子をじっくり観察した。
 明らかに、狼狽えている。さすがに男にここまでされたことはないのだろう。呼吸も浅く、何より身体が震えている。
「エミリアさま、挙動不審ですよ」
 声が弾んでしまったのは仕方ないだろう。小生意気な小娘に仕置きをしてやった、そんな気分だったのだ。
 だが、そんなことはないと、王女は首を横に振った。それでも彼女の身体は正直である。
 頂が、存在を主張している。つん、とわざとらしく突いてやる。
「うっ……!」
 嬌声や吐息でもあれば可愛いものを、よりによって「う」である。しかも、唇を噛んで声をこらえている。 
「正直になられたらどうでしょうか? 本当は怖いのでしょう? これに懲りたら、今後、男をなめた態度は……」
「う、うるさいわね! この程度で――わっ、わたしが……」
 可愛くない。
 今度はしっかりと胸を揉んでやる。本人にもわかるように、ゆっくり、大きく、いやらしく。
 エミリアの身体が震える。合間、合間に、甘い吐息も零れる。
「怖いのではない、と? ならば……これは快感に打ち震えている、そういう認識でよろしいか」
 さすがに、少女の視線が泳ぐ。困ったように唇が開かれて、すぐに閉じた。
 快感に震えています、と答えるわけにはいかず。
 さりとて「怖いです」とはもっと答えられないだろう。
 名残惜しいがこれで許してやろう――と、アランがエミリアのドレスを直そうとした瞬間。
「そっ、その程度でおしまい? ぞ、存外アランはへ、へなちょこなのね」
「なんと強気な……」
 人形のように可愛らしい顔をしているのに「可愛げ」は一体どこへ捨ててきたのか。
 ならば失礼、と、アランは呟いて、レモンイエローのドレスの裾を勢いよく捲り上げた。
「きゃっ!?」
 クリノリンがはいっていないのを良いことに両足を左右に開かせてそこに自分の身体を押し込んだ。王女に覆いかぶさって唇を貪り、頬から首筋、鎖骨、胸元へと舌を這わせる。
 さすがに、王女の顔が真っ赤になる。
 が、アランが動きを止めれば「それでおしまい?」とでも言いたげな目線を寄越す。
 目線のみならず、震えて喘ぎながらも、実際にそれを口にするのだからどこまでも勝ち気だ。
「こまった王女さまだ。どこでそんな仕草やセリフを覚えるのだか……」
「だ、だから……行きつけの遊郭で……」
「なんだ……って……!?」
「……情報が、集まるのよ」
 王女の交友関係を検めねばなるまい、と、アランは本当にため息をついた。
「王女、何の情報ですか?」
「……言わない」
「間違っても……反王派などと交わることのないように。殺されますよ?」
 王女の太ももを掴んで大きく左右に開く。
「ひゃ……」
 白日の下に剥き出しにしたそこは、濡れて光っている。
「エミリア王女殿下は存外淫らな身体の持ち主であらせられる」
「そ、そんな……」
「本当は遊郭で男を漁ってるのでは? なにせこれだけ、淫らなお方だ」
 茂みをかき分けて露わにしたものの、まさか本当にそこを捏ね繰り回すわけにもいかない。
 なにせ、王女は王族、自分はエリート兵とはいえ庶民。
 年齢は十も離れている上に、まだ恋仲ではない――。
(まだ?)
 アランは己の思考に衝撃を受けた。すべての動きが、止まってしまった。
「アラン? どうしたの……」

 まだも糞も、自分とこの王女が、恋仲になれるはずがない。

「王女、エミリアさま」
「はい?」
「……遊郭へお出かけの際は、このアランをお連れ下さい。治安のよい我が国とは申せ、危なくないとは言えませんので、ぜひ」
 王女の衣服を直し、皮紐を解いてカーペットの上に立たせる。
「失礼、致しました」
 近衛兵としての礼をとれば、強かに頬を張られた。
「ちゃんと……最後までやりとげなさいと習わなかったの?」
「……は?」
「途中で投げ出してはいけないと、あなたのご両親はあなたに教えなかったの?」
 アランは首を傾げた。王女が何を言いたいのか、さっぱりわからない。
「あなたが最後までやってくれるのだと期待したわたしが馬鹿だったわ。あなたは、王宮一の馬鹿男よ」
 レモンイエローのドレスを翻して王女が足音高く部屋を出ていくのを、アランは呆然と見送った。
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