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2015年11月28日(土)

有給休暇 休みのアイデア次々と

近田
「今日(28日)、お休みの方も多いと思いますけれども、休みの取り方についてお伝えします。
会社などに勤めている人には給料がもらえて、しかも休みとなる『有給休暇』がありますよね。
勤続年数などによって日数は異なりますけれども、法律では1年に最大20日間の有給休暇が与えられることになっています。」

上條
「この有給休暇を日本人はどれくらい取得しているかと言いますと…。
厚生労働省の調査によると、去年(2014年)はおよそ18日が与えられたのに対して、実際に休んだのは9日未満。
取得率は半分以下、47.6%にとどまりました。
休むのをためらう理由としては『みんなに迷惑がかかる』とか『職場が
休みを取りづらい雰囲気だ』といった回答が多く、周りへの気兼ねがあるようです。」

近田
「かたやこんなデータもあるんです。
インターネットで旅行の予約を受け付ける会社が去年、世界のおよそ8,000人を対象に行いました、国別の有給休暇の取得率についてのアンケートなんですが、驚きますよね。
フランス人やスペイン人は100%取得と回答。
アメリカ人も74%だったんですね。」

上條
「こうした中、日本でも厚生労働省が2020年には70%まで引き上げたいとしています。
国や企業からは、休みをとってもらうためのさまざまなアイデアが生まれています。」

“地域の祭りにあわせて 有給休暇を”

「有給休暇の取得をお勧めしています。」

朝の通勤時間に、駅前で配られた一枚のチラシ。
「地元の祭りにあわせて有給休暇をとろう」という呼びかけ。
厚生労働省が秩父市などと始めた取り組みです。

 

300年以上続き、毎年20万人が訪れる「秩父夜祭」。
祭りが開かれる12月2日と3日は、小学校や中学校は休みとなります。
この祭りを理由にすれば、大人も有給休暇をとりやすくなると考えたのです。


 

「会社、休みをもらって大祭に参加する方、挙手を。」




 

地元ではこれまでにも、有給休暇を取って祭りに参加する人はいました。
しかし、会社の理解を得るのに苦労したと言います。

運送業
「上司に理解してもらい、なんとか(有給休暇を)とっている。」

製造業
「祭りだけでなくても、休みづらい風潮もある。
言いづらい面もあったが。」

そこで、会社に対しても協力を呼びかけています。

厚生労働省の事業で休暇取得を呼びかけている 成冨秀樹さん
「上の方が積極的に声をかけ、理解して頂いて、とらせてもらう雰囲気作りをして頂きたい。
心身ともに健康で生産性を上げて。」

 

「地域の祭りに参加するために休む」。
こうしたきっかけが、有給休暇をとることへの意識づけにつながればと考えています。

厚生労働省の事業で休暇取得を呼びかけている 成冨秀樹さん
「ひとつの大きなきっかけになると思う。
学校なども休みになるので、家族の時間を作ってもらったり、イベントの後でも片づけなどで、休みをとって頂くこともあると思う。」

 

秩父市のように、平日に祭りが開催されるのは全国で200以上。
厚生労働省はこうした地域でも、有給休暇の取得を促すことにしています。

“LOVE休暇”“エンタメ半休” ユニークな休みも

一方、会社としてユニークな方法で、社員が休みを取りやすい仕組みを作っているところもあります。
こちらのコンサルティング会社、社員の意見を取り入れて独自の休暇制度を作りました。

「理美容半休」。
美容院などで、リフレッシュしてもらおうというもの。
こちらは、家族や恋人の誕生日など記念日を祝う「LOVE休暇」。
なんと、会社からプレゼント代、1万円が支給されます。
こうしたユニークな休暇をきっかけに、社員の間に休みを取りやすい雰囲気が生まれれば、有給休暇も取りやすくなるという狙いです。

コンサルティング会社 事業管理本部 鈴木綾さん
「ふだんなかなか、理由がないと休めなかったりもするが、この特別休暇であれば、あらかじめ理由を持って、どういったことをするという目的を持って休めるものなので、休暇取得の促進にはなっている。」

 

会社では、社員が休んでも仕事をカバーしあえる仕組みも整えています。
人事を担当している、福本珠美さんです。
この日、午後から「カルチャー&エンタメ半休」をとります。
この会社では誰が、いつ、何の仕事をするのか、スケジュールを共有しています。

福本さんは、午後に新人社員への研修が予定されていました。
ふだんから互いの予定を把握しているので、引き継ぎはスムーズです。
引き継がれた相手は、仕事が増えることになりますが…。


 

「仕事が増えたと思う?」

「私が休むときに、頼みやすくなるので、そこは全く感じていない。」


 

福本珠美さん
「エンタメ半休頂きます。」

会社を出た福本さん。
上野の美術館で、以前から見たかったフランス印象派の展覧会を満喫しました。

福本珠美さん
「すごく新鮮な気持ちになれたし、有意義な時間を過ごせた。」

さらに…。

福本珠美さん
「バリ行った?」

「すごくよかった。」

友だちと趣味の旅行話に花を咲かせました。

福本珠美さん
「せっかく半休をとるということで、前々から何にしようとちゃんと計画を立てていたので、気持ち的にもリフレッシュされるし、満たされる感じもする。」

 

社員の意見を取り入れたユニークな休暇制度。
有給休暇を組み合わせてとる社員が出るなど、効果もあらわれています。
専門家は、有給休暇の取得率を世界のレベルまで上げるには、働く側の意識改革も大事だと言います。

企業での働き方を研究 東レ経営研究所 渥美由喜さん
「ヨーロッパやアメリカなど、キリスト教文化圏では、働くだけで家庭を顧みない、地域社会で貢献しようとしない人は、利己的な人、自分本位な人とみられる。
休暇で自分自身の生活も充実する、家族も一緒になって楽しむ、あるいは、地域社会で貢献する、そういう人たちが働く会社が評価される時代になっていく。」

近田
「いろんな休暇の種類、LOVE休どうですか?」

上條
「いいですよね。
しかも、1万円給付されるという。
これはいいですね。」

近田
「おじさんにとっては、ネーミングがちょっと恥ずかしいですけど。
冒頭にお伝えしたように、とりずらい理由として、周りへの気兼ねがあるとあったと思うんですけれども、後半の会社のように仕事をカバーし合えれば、とりやすい環境が生まれてくるという。」

上條
「お互い様ですしね。
いいですよね。
専門家の渥美さんは『有給休暇を取りやすくするには国による制度面での後押しも必要だ』と話しています。
欧米などでは、社員が有給休暇を取得できなかった場合、その分を会社が買い取る決まりになっていて、会社は社員に有給休暇の取得を積極的に働きかけているそうです。」