【ニューヨーク=高橋里奈】米ケーブルテレビ4位のチャーター・コミュニケーションズは26日、2位のタイム・ワーナー・ケーブル(TWC)を負債込みで787億ドル(約9兆7000億円)で買収すると発表した。2位の買収で規模を拡大し、首位のコムキャストを追い上げる。インターネット動画配信に押される有料テレビ市場で競争力を強化して巻き返す狙いだ。
チャーターはTWC1株あたり、現金とチャーター株式を合わせ195ドルでの買収を提案した。負債を除く買収額は約550億ドルになる見通し。チャーターは3月末に6位のブライトハウス・ネットワークスの買収を発表した。TWCを含む3社の合併が実現すれば、顧客数は2390万人となり、首位のコムキャストの2700万人に迫る。米国の41州で事業展開する。
TWCを巡っては、コムキャストが450億ドルで買収する計画だった。だが米連邦通信委員会(FCC)が「価格支配力が過度に高まり公共の利益に反する」との見解を示し、破談になったばかり。これを受けTWCの獲得に乗り出した。
米国の有料テレビ市場では、顧客の流出が広がりつつある。視聴契約を解約し、ネットフリックスといった割安な動画配信サービスに乗り換える動きが目立つ。パソコンやスマートフォンで動画を視聴する若者が増えていることが背景にある。
有料テレビ各社は規模の拡大で経費を圧縮。価格競争力を維持するほか、新たな動画配信の展開も模索する。超低金利で資金調達がしやすくなったほか、株高がM&A(合併・買収)を後押ししている側面もある。
チャーターのトム・ラトリッジ最高経営責任者(CEO)は26日、発表に際して「規模の拡大によってインターネットの高速化、最新の動画体験、フル装備の通話商品を非常に競争力のある価格で提供できるようになる」と述べ、合併に期待を示した。ラトリッジ氏は3社が合併した後の新会社のCEOに就任する予定だ。
TWCの買収には、フランス人投資家のパトリック・ドライ氏が率いるアルティス(ルクセンブルク)も意欲的だったとされるが、チャーターが交渉を優位に進めたようだ。