【ロンドン=小滝麻理子】パナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)関連文書の問題を受けて、英国のキャメロン首相は10日、過去数年分の納税や所得申告の状況を公開した。亡父が租税回避地にもうけたファンドに同首相が投資していたことに関し、批判が高まっていることに対応した。英政府として「パナマ文書」問題を調査する専任チームを設けることも発表した。
英国の首相が納税の情報を開示するのは異例だ。野党党首だった2009年以降の分を公開した。
それによると、同首相は直近の15年度は約20万ポンド(約3000万円)の課税所得に対して約7万6千ポンドの税金を納めた。首相としての収入のほかに、ロンドン市内の自宅の家賃収入が約4万6000ポンドあることなどを明かした。
キャメロン首相は妻とともに亡父のファンドに1997年に投資し、首相就任数カ月前の10年1月に売却。同首相の持ち分として約9500ポンドの売却益を申告したことも明らかにした。課税対象となる基準よりも少なかったため、売却益にかかる税金は払っていない。
「パナマ文書」問題への対策強化も表明した。税務当局、国家犯罪対策庁などからなる横断的チームをもうけ、パナマ文書の内容を調査し、課税逃れやマネーロンダリング事例に厳しく対応する。約1千万ポンドの予算をつける。
キャメロン首相は7日、過去に亡父の租税回避地のファンドに投資し利益を上げていたことを認めた。同首相はこれまで課税逃れを厳しく批判してきたこともあり、野党などから批判が高まっている。9日にはロンドンの首相官邸前で「税金を払え」などと市民のデモが行われた。
キャメロン首相は納税状況の公開や対応チームの設置などで、批判を鎮めたい考えだが、野党は週明けも追及を強めるとみられ、事態が収束するかは不透明だ。