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2016年04月10日07:00
勝負は質に持ち込まれた!
ニューチャレンジャーハズカム。伝説のオウンゴールを超えようと、新たな挑戦者が現れました。世界を駆け巡る動画を見たとき、僕は久々に「挑戦者」だと感じました。書類審査でふるいにかけるわけにはいかないハイレベルなオウンゴール。「私に動画を見比べさせたのは、キミが3年ぶりだよ」的なセリフが中尾隆聖さんの声で脳内で響きます。
もはやコレはオウンゴールイデオロギーの対決と言えるかもしれません。珠玉のオウンゴールとは何なのか、その価値観が問われている。「オウンゴールにイイも悪いも考えたことがありませんでした」「全部クソだからオウンゴールなんじゃないんですか」「ゴミの中からまだ食べられる弁当と完全にアウトな弁当を見分けるみたいな話ですか?」と塾生たちもざわついています。
僕は何度も繰り返したように「四余(余が、余裕をもって、余計なことをして、余韻を残す)」をオウンゴールの美徳としています。それは表社会においていうならば「ドリブルで全員かわした上で無人のゴールにヒールで入れる」みたいな話です。ドリブル全員抜きが「相手の守備を完全破壊したゴールの極み」とするならば、その対となるオウンゴールが「相手の攻撃完全沈黙下におけるまさかのゴール」となるといった具合です。
だが、表社会では必ずしも「ドリブル全員抜き」が至高かと言うと、そうではない意見の持ち主もいるわけです。40メートルのズドンがいい、とか。オーバーヘッドがいい、とか。これまでの挑戦者が単なる格下だったとするならば、今回の挑戦者は別のイデオロギーにおいて頂点に位置するものと言えるでしょう。異種格闘技決戦、それが今回のテーマ。はたして王者は勝てるのか。史上最大のピンチ到来です。
ということで、地元観衆のみなさまに王者への圧倒的大声援を期待しつつ、ニューチャレンジャーのスキルフルオウンゴールをチェックしていきましょう。
◆技術の高いオウンゴールという、別の角度からの切り込み方!
オウンゴールというのは基本的にミスから生まれるものです。クリアしたかったけど失敗した、蹴ろうとしたけど空振った、前に投げるつもりで後ろに投げた、などなど。下には下があるの発想で、より面白いミス、より考えられへんミス、何でそんなことになったったのか理解に苦しむミスこそが讃えられてきました。
その意味で、王者のオウンゴールはひとつの究極形態と言えるもの。フィールド中でわずか2名、「手が使える」というサッカーの根源的な概念からの離脱を許された者が、その手によってゴールを決める。相手からの攻撃はまったくなく、自身の背面方向に向かって。ひとつだけでも鉄壁の防護と言えるような二重三重の「安全」をブチ破って、ゴールを決めた。ハッキリ言って、どうやったら上回れるのかわかりません。
今回の挑戦者は、形式としてはよくあるヤツです。味方がGKにパスを回したら、そこにプレッシャーを掛けられ、焦ってミスしただけのこと。そういう意味ではフォーマットとしては陳腐かもしれない。ただ、ものすごく技術が高い。往年の名作映画が4K画質で甦ったかのように、内容としては王道かつ基本的なものなのに、スゴイことになっちゃっているのです。
↓まずは1回見てから技術に唸りましょう!(1分頃から)
角度のまったくないところからカーブをかけて入れた!
もう1回やれと言われてもできないスキルフルオウンゴール!

王者のオウンゴールが「発想」のオウンゴールなら、挑戦者のオウンゴールは「技術」のオウンゴール。王者のものは誰でもマネすることができますが、挑戦者のものは再現は極めて難しい。「発想」という意味では極めてありきたりにも関わらず、技術によってチカラを高めている。オウンゴール新時代と言えるもの。
こちらはオセアニア地域のチャンピオンズリーグにおける、ナディーFC(フィジー)とASテファナ(タヒチ)の試合におけるオウンゴール。決めたのはテファナのGKでタヒチ代表歴などを持つ、ミカエル・ロシュさんです。ロシュさんは2013年のコンフェデレーションズカップに出場したこともあり、スペインがタヒチを10点取ってボコったとき、ゴールの前に立っていたGK(※立ちはだかってはいない)だそうです。
テファナが4-0とリードした後半17分に、このゴールは生まれました。味方がGKに向かってスローインを投げ、バックパス扱いで手で取れないロシュさん。相手がプレッシャーをかけてきたので、大きくクリアしようとしますが、それがまさかの方向へ転がっていきます。
まるでゴルフで会心のパットをしたあとみたいなポーズでボールの行方をじっと見守るロシュさん。長い、この待機時間長い。絶望が確定してからの余韻がココまで長いオウンゴールは滅多に見られません。しかも動かない。完全に枠に入ったあとも、まったくロシュさんは動きません。この余韻、凄まじい。「立ったまま死んでる」レベルでインパクトがある死に方です。
これは「四余」の概念の外にあるゴールです。ロシュさんはこの一連の流れにおいて、余計なことをまったくしていないのです。ゴールの線上から離れ、空振ってもゴールに入らない位置取り。相手FWの動きを見て「止めずに蹴る」ことを決断した判断力。「この角度なら間違っても蹴り込むことはないだろう」位置まで下がってからのキック。必要な動作を必要なぶん行なったら、あり得ないことが起きた。ミスじゃなくて一周まわって「成功」と呼びたくなるような魔法をかけたのです。こやつ、上手い!
↓仕方ない、考え得る限りの項目をあげて細かく比較していこう!
際どい、際どい判定!
勝者は…OWG世界ツライ級……チャンピオン、南雄太ぁ!!

いやー、危なかった。ここまで追い込まれるとは。しかし、最終的には王者の経験がモノを言いました。王者はコレで試合を決めたけれど、挑戦者は4-0リードからの失点に過ぎないという点で、プレー全体の印象が大きく左右されました。シチュエーションの差を技術面で挽回した挑戦者でしたが、味方の大量得点という邪魔が入ったせいで、王座交代のチャンスを活かせませんでした。王者の10年あまりを経ても色あせない輝き。挑戦者のオウンゴールには、「これはずっと笑えるな」という決め手がなかったのも敗因かもしれません。「上手い」って思わせたてしまうと、それはそれで勝利が遠ざかるものなんですね。
↓それでは改めて王者のオウンゴールをじっくりとご覧ください!
何ひとつ上手くない!
そして、何ひとつ「何でそうなった?」が理解できない!
このように一見何にも上手くないこのゴール。しかし、本人は「ドゥドゥ(画面外)に投げようとしたら、サンフレッチェの選手(画面左側から登場)がダッシュしているのが見えたので、投げるのを止めたら、手からフワッとボールが離れた感覚があったので、慌ててそれを止めにいったらバチーンと叩いてしまった」と、このゴールについて語っています。何という視野の広さ、反応の速さでしょう。挑戦者のゴールが見え見えの上手さだとすれば、王者は世紀の凡プレーの裏に隠し味のように加えられた熟成された上手さがあります。この試合を含むシーズンに、勝点差1でJ2との入れ替え戦にまわったという遠大な影響力も含め、王者のゴールのスケール感、やはり一枚上手ですね。
↓今回も敗れ去った挑戦者たちには、改めて王者からのメッセージを噛み締めてほしい!
王者:「やればできる!」
王者:「最後の最後まで諦めない!」
王者:「投げ出さないということ!」
試合は投げ出すな!
ボールは猛スピードで投げ出せ!
技術自慢・腕自慢は必要ない!
見えないところに上手さを見せろ!

もし、あの角度から手で投げ入れていたなら王座交代だったでしょうな!
ニューチャレンジャーハズカム。伝説のオウンゴールを超えようと、新たな挑戦者が現れました。世界を駆け巡る動画を見たとき、僕は久々に「挑戦者」だと感じました。書類審査でふるいにかけるわけにはいかないハイレベルなオウンゴール。「私に動画を見比べさせたのは、キミが3年ぶりだよ」的なセリフが中尾隆聖さんの声で脳内で響きます。
もはやコレはオウンゴールイデオロギーの対決と言えるかもしれません。珠玉のオウンゴールとは何なのか、その価値観が問われている。「オウンゴールにイイも悪いも考えたことがありませんでした」「全部クソだからオウンゴールなんじゃないんですか」「ゴミの中からまだ食べられる弁当と完全にアウトな弁当を見分けるみたいな話ですか?」と塾生たちもざわついています。
僕は何度も繰り返したように「四余(余が、余裕をもって、余計なことをして、余韻を残す)」をオウンゴールの美徳としています。それは表社会においていうならば「ドリブルで全員かわした上で無人のゴールにヒールで入れる」みたいな話です。ドリブル全員抜きが「相手の守備を完全破壊したゴールの極み」とするならば、その対となるオウンゴールが「相手の攻撃完全沈黙下におけるまさかのゴール」となるといった具合です。
だが、表社会では必ずしも「ドリブル全員抜き」が至高かと言うと、そうではない意見の持ち主もいるわけです。40メートルのズドンがいい、とか。オーバーヘッドがいい、とか。これまでの挑戦者が単なる格下だったとするならば、今回の挑戦者は別のイデオロギーにおいて頂点に位置するものと言えるでしょう。異種格闘技決戦、それが今回のテーマ。はたして王者は勝てるのか。史上最大のピンチ到来です。
ということで、地元観衆のみなさまに王者への圧倒的大声援を期待しつつ、ニューチャレンジャーのスキルフルオウンゴールをチェックしていきましょう。
◆技術の高いオウンゴールという、別の角度からの切り込み方!
オウンゴールというのは基本的にミスから生まれるものです。クリアしたかったけど失敗した、蹴ろうとしたけど空振った、前に投げるつもりで後ろに投げた、などなど。下には下があるの発想で、より面白いミス、より考えられへんミス、何でそんなことになったったのか理解に苦しむミスこそが讃えられてきました。
その意味で、王者のオウンゴールはひとつの究極形態と言えるもの。フィールド中でわずか2名、「手が使える」というサッカーの根源的な概念からの離脱を許された者が、その手によってゴールを決める。相手からの攻撃はまったくなく、自身の背面方向に向かって。ひとつだけでも鉄壁の防護と言えるような二重三重の「安全」をブチ破って、ゴールを決めた。ハッキリ言って、どうやったら上回れるのかわかりません。
今回の挑戦者は、形式としてはよくあるヤツです。味方がGKにパスを回したら、そこにプレッシャーを掛けられ、焦ってミスしただけのこと。そういう意味ではフォーマットとしては陳腐かもしれない。ただ、ものすごく技術が高い。往年の名作映画が4K画質で甦ったかのように、内容としては王道かつ基本的なものなのに、スゴイことになっちゃっているのです。
↓まずは1回見てから技術に唸りましょう!(1分頃から)
角度のまったくないところからカーブをかけて入れた!
もう1回やれと言われてもできないスキルフルオウンゴール!
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王者のオウンゴールが「発想」のオウンゴールなら、挑戦者のオウンゴールは「技術」のオウンゴール。王者のものは誰でもマネすることができますが、挑戦者のものは再現は極めて難しい。「発想」という意味では極めてありきたりにも関わらず、技術によってチカラを高めている。オウンゴール新時代と言えるもの。
こちらはオセアニア地域のチャンピオンズリーグにおける、ナディーFC(フィジー)とASテファナ(タヒチ)の試合におけるオウンゴール。決めたのはテファナのGKでタヒチ代表歴などを持つ、ミカエル・ロシュさんです。ロシュさんは2013年のコンフェデレーションズカップに出場したこともあり、スペインがタヒチを10点取ってボコったとき、ゴールの前に立っていたGK(※立ちはだかってはいない)だそうです。
テファナが4-0とリードした後半17分に、このゴールは生まれました。味方がGKに向かってスローインを投げ、バックパス扱いで手で取れないロシュさん。相手がプレッシャーをかけてきたので、大きくクリアしようとしますが、それがまさかの方向へ転がっていきます。
まるでゴルフで会心のパットをしたあとみたいなポーズでボールの行方をじっと見守るロシュさん。長い、この待機時間長い。絶望が確定してからの余韻がココまで長いオウンゴールは滅多に見られません。しかも動かない。完全に枠に入ったあとも、まったくロシュさんは動きません。この余韻、凄まじい。「立ったまま死んでる」レベルでインパクトがある死に方です。
これは「四余」の概念の外にあるゴールです。ロシュさんはこの一連の流れにおいて、余計なことをまったくしていないのです。ゴールの線上から離れ、空振ってもゴールに入らない位置取り。相手FWの動きを見て「止めずに蹴る」ことを決断した判断力。「この角度なら間違っても蹴り込むことはないだろう」位置まで下がってからのキック。必要な動作を必要なぶん行なったら、あり得ないことが起きた。ミスじゃなくて一周まわって「成功」と呼びたくなるような魔法をかけたのです。こやつ、上手い!
↓仕方ない、考え得る限りの項目をあげて細かく比較していこう!
●第1R 試合の格
・王者南:Jリーグ公式戦
・挑戦者:OFCチャンピオンズリーグ
⇒ラウンド評価:10-10
●第2R 選手の格
・王者南:日本代表
・挑戦者:タヒチ代表
⇒ラウンド評価:10-10
●第3R 得点の価値
・王者南:相手の決勝点
・挑戦者:どうでもいいゴール
⇒ラウンド評価:10-9
●第4R 得点前状況(余裕の有無)
・王者南:手でボールを保持し、誰も詰めてきてない完全安全状態
・挑戦者:足で蹴らないといけないところに相手が詰めてきた
⇒ラウンド評価:10-9
●第5R 得点手法(余計なこと感)
・王者南:投げても投げなくてもいいときに手で後ろに投げ入れた
・挑戦者:蹴らざるを得ないので蹴ったら入っちゃった
⇒ラウンド評価:10-9
●第6R 実施
・王者南:ワザとやろうと思えば誰でもできる行為
・挑戦者:やれと言われてもできない
⇒ラウンド評価:9-10
●第7R 余韻(確定するまでの時間)
・王者南:約2秒
・挑戦者:約3秒
⇒ラウンド評価:9-10
●第8R 絶望感
・王者南:途中で追うのを止めて目を逸らす
・挑戦者:不動のままライン上でゴール判定
⇒ラウンド評価:9-10
●第9R 悔しさの発露
・王者南:地面を蹴る
・挑戦者:不満顔で歩く
⇒ラウンド評価:10-9
●第10R 相手からの嘲笑
・王者南:後ろのほうで森崎浩司が爆笑しながらバンザイ
・挑戦者:普通にゴールを確認
⇒ラウンド評価:10-9
●第11R 味方の態度
・王者南:事態を察して小ジャンプで「え!?」
・挑戦者:犯人の顔をマジマジと見る
⇒ラウンド評価:10-10
●第12R 影響力
・王者南:10年くらいネット上でオウンゴールの王者扱いをされる
・挑戦者:字幕に「こっちチームの5点目」と間違えさせる
⇒ラウンド評価:10-10
際どい、際どい判定!
勝者は…OWG世界ツライ級……チャンピオン、南雄太ぁ!!
価格:463円 |
いやー、危なかった。ここまで追い込まれるとは。しかし、最終的には王者の経験がモノを言いました。王者はコレで試合を決めたけれど、挑戦者は4-0リードからの失点に過ぎないという点で、プレー全体の印象が大きく左右されました。シチュエーションの差を技術面で挽回した挑戦者でしたが、味方の大量得点という邪魔が入ったせいで、王座交代のチャンスを活かせませんでした。王者の10年あまりを経ても色あせない輝き。挑戦者のオウンゴールには、「これはずっと笑えるな」という決め手がなかったのも敗因かもしれません。「上手い」って思わせたてしまうと、それはそれで勝利が遠ざかるものなんですね。
↓それでは改めて王者のオウンゴールをじっくりとご覧ください!
何ひとつ上手くない!
そして、何ひとつ「何でそうなった?」が理解できない!
このように一見何にも上手くないこのゴール。しかし、本人は「ドゥドゥ(画面外)に投げようとしたら、サンフレッチェの選手(画面左側から登場)がダッシュしているのが見えたので、投げるのを止めたら、手からフワッとボールが離れた感覚があったので、慌ててそれを止めにいったらバチーンと叩いてしまった」と、このゴールについて語っています。何という視野の広さ、反応の速さでしょう。挑戦者のゴールが見え見えの上手さだとすれば、王者は世紀の凡プレーの裏に隠し味のように加えられた熟成された上手さがあります。この試合を含むシーズンに、勝点差1でJ2との入れ替え戦にまわったという遠大な影響力も含め、王者のゴールのスケール感、やはり一枚上手ですね。
↓今回も敗れ去った挑戦者たちには、改めて王者からのメッセージを噛み締めてほしい!
<南雄太オフィシャルブログSOUTH 2012年4月18日の記事:「No Title」より>
まず
俺は何と言われようが、思われようが絶対にあきらめないという事
(中略)
柏の時にはチームとして2度のJ2降格やJ1昇格、勝ち点1差で優勝を逃したり
心が擦り切れるようなプレッシャーの入れ替え戦を2年連続でやった事もありました
個人としても18歳でレギュラーをとってワールドユースで世界を相手に準優勝するなどのいい時期があったり
皆さんもご存知の通り歴史に残るようなオウンゴールをしてしまって泣きたいくらいまわりに叩かれた事もあったし
(中略)
そんなプロ生活の中で後悔している事
それは“もう自分じゃ無理だ”とか“これ以上はできない”と、あきらめたり投げてしまった事が何度かあった事
(中略)
要は自分が今までのプロ生活で何よりも大切だと感じた事は
“最後の最後まであきらめない、投げださないという事”
“やれる(できる)と信じる事”
王者:「やればできる!」
王者:「最後の最後まで諦めない!」
王者:「投げ出さないということ!」
試合は投げ出すな!
ボールは猛スピードで投げ出せ!
技術自慢・腕自慢は必要ない!
見えないところに上手さを見せろ!
価格:610円 |
もし、あの角度から手で投げ入れていたなら王座交代だったでしょうな!
OWG史上最大の刺客について、フモさんなら必ず触れてくださると思っておりました。
私見ではドローで辛くも王座防衛といったところでしょうか。
世界は広いですなあ。