図書館にもはや本は不要?ベトナムの大学の図書館事情
ホーチミン市の自然科学大学、人文社会科学大学、農林大学、国家大学センター図書館などを一巡りすると、どこも書庫も豊富に立派な図書館が整備されていることがわかるが、館内で本を閲覧する学生の数は、非常に少ない。
ほとんどが、自分のものか図書館のパソコンで延々とインターネットをしているか、涼しい空間を利用してゲームをしたり、映画を見たり、飲み食いしたりで、なかには居眠りをしている人もいる。
■利用はテストの直前だけ
自然科学大学の女子大生Yenさんは、大学の図書館に行くことは非常に少ないという。「インターネットや本屋さんで資料を探したほうが、楽で簡単ですよ。先生が配布する資料に必要なことは全部書いてありますし」。人文社会科学大学の学生も、図書館に行くのは、参考書が持ち込める試験の前に借りに行く時くらいという。
人文社会科学大学の図書館職員Nguyen Thi Thuyさんは、「真面目に勉強している学生もいますが、午後に試験があると言って、朝どやどやっとやってきて本をコピーし、その後はさっぱりという学生も少なくないですね」と言う。
農林大学図書館のDo Thi Loi副館長は、「教室にはWiFiがありませんが、図書館なら涼しくインターネットも無料で使えるので、多くの学生が、遊びやグループの集まり、ウェブサイトの閲覧に集まっています」と話す。
■貸出激減、ダウンロード激増
ホーチミン市国家大学図書館のHoang Thi Thuc館長によると、同図書館での図書貸出件数は、2013年から2015年にかけ、40万件超から30万件に大きく減少した。同様にそれ以外の各種資料の貸出も、2012年の50万件近くから2015年には25万件程度に半減した。
これに対し、データベース(電子書籍・雑誌)の全文ダウンロード件数は2009年から2015年にかけて大きく増加している。2009年には10万件に過ぎなかったものが2014年には倍近くの18万5,000件あまりになり、2015年には一気に4倍の42万件を数えた。
自然科学大学では、2011~2012学年度のインターネット資料利用新規登録は120人で、2012~2013学年度には79人増加したが、ほぼ教員に限られていた。2013~2014年に学生にもインターネット資料の利用を拡大したところ、この数字は2,000人あまりに増え、現在では5,000人が利用登録している。その一方で、2キャンパスの図書館を訪れる人は減少し、以前の1日約600人から、現在は20%ほど減った。
ホーチミン市師範大学の教員Dang Hoang Anさんは現在、師範大生の図書館における情報利用習慣をテーマに研究を行っており、学生達の足が図書館に向かない原因について、資料探しに時間がかかる割には必要なものが見つからない、手続きが煩雑、その一方でインターネットなら資料探しも迅速で、参考にもしやすいことを指摘している。
(Nguoi Lao Dong)
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(2016/04/09 02:27更新) |