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国立公文書館 国民が広く集う新館に

 公文書は政策決定をたどる歴史の集積であり、過去・現在・未来を結ぶ国民共有の財産である。この知的資源を保存し、受け継ぐ新しい国立公文書館の構想が加速してきた。

     政府の有識者会議が国立公文書館の建て替え候補地の調査結果を公表した。国会周辺の2カ所の候補地のうち、文書の増加に対応する面積を確保できる東京・永田町の憲政記念館の敷地が有力になっている。

     今ある国立公文書館は2019年度ごろに満杯になると見込まれる。建設が遅れれば、書庫を借りて保管しなければならない。政府は新館の構想を着実に進めてもらいたい。

     国立公文書館は1971年、公文書の散逸を防ぐために設けられた。東京・北の丸公園の本館に加えて、98年には茨城県つくば市に分館が造られ、書庫の充実が図られた。

     それでも欧米などの国立公文書館に比べると、規模や職員数は著しく見劣りする。日本の書架の長さは、本館と分館を合わせて72キロ、職員は54人。米国の1400キロ、2720人やフランスの380キロ、570人などに遠く及ばない。

     有識者会議が3月にまとめた新館の基本構想が、現在の本館の数倍、4万〜5万平方メートルの確保を求めたのは当然だろう。

     国立公文書館は研究者だけのものではない。米国の公文書館は移民の国らしく自分たちのルーツを訪ねる人々でにぎわっている。

     日本でも、国立公文書館で昨年開かれたケネディ元米大統領の企画展には、過去最多の来場者があった。国民が広く集うよう展示・学習機能を整備することは欠かせない。

     施設の拡充と同時に、文書の管理体制も強化しなければならない。

     集団的自衛権の行使容認に必要な憲法9条の解釈変更について、内閣法制局が内部の検討過程を公文書に残していないことなどが判明した。公文書管理法の趣旨に反する、きわめて不適切な事例である。

     日本は、公文書を保存するか廃棄するかを判断する専門家を各省に置いていない。これでは役人が都合の悪い文書を勝手に廃棄しかねない。専門職員の配置を早急に検討すべきではないだろうか。

     新館の候補地は、土地を提供する衆院議院運営委員会の小委員会が、基本構想を参考に決定する。文書管理の人材育成や保存・修復機能の充実など、課題は多い。

     国立公文書館は電子資料を集めたアジア歴史資料センターを運営している。インターネットを通じて公開されるデータベースは評価が高く、こちらの拡充も期待されている。

     公文書館は民主主義の礎となる施設である。開かれた文書管理を長期的に考えなければならない。

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