中国の習近平(シーチンピン)政権は発足から3年、一貫して「反腐敗」を掲げている。大物の摘発を辞さず、従来とは違う強い姿勢で臨んできたことが支持された。いまも連日、共産党幹部が取り調べを受けている。

 ところが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パナマ文書」によれば、習国家主席の姉の夫のほか、共産党政治局常務委員である劉雲山(リウユンシャン)、張高麗(チャンカオリー)両氏の親族が、租税回避地に設立した会社の株主となっていた。

 反腐敗の旗振り役も腐敗しているのではないか。政権のあり方に疑問を突き付けている。

 ほかにも毛沢東の孫の夫を含め、元指導者の親族5人の名前が挙がっている。

 中国当局はパナマ文書に関する情報にアクセスできないよう統制を敷いた。外務省は国外メディアの再三の問いかけにもノーコメントだ。それでも多くの市民に知れ渡るのは止められない。早くも「姉の夫」がネット上で流行語となった。

 指導者の親族が地位を利用して国有地の使用権を得たうえ、不動産投資で金もうけをしている――といった話は中国でよく耳にする。今回の事例が、そうした特権的手段による蓄財と関連するのかどうかは、まだ明確には分からない。

 だが、言えることが二つある。

 一つは、最高指導者の周辺で、市民感覚とかけ離れた巨大な富が蓄えられているという現実だ。

 もう一つは、彼らが遠く海外の租税回避地にわざわざ会社を設立していたということだ。この仕組みを使って資産を移しているのはなぜか。中国当局の目が届かないところに隠そうとする意図があったとしか考えられない。

 国を指導する立場にありながら、国の発展よりも一族の利益を守ることを優先している、とみられても仕方がないだろう。少なくとも市民はそう受け止める。そのような最高指導部メンバーが現職7人のうち3人もいたのである。

 中国は、自由で公正な選挙によって指導者が選ばれる制度を欠いている。それでも今の共産党政権が国民の支持を得るとすれば、人々の生活水準を向上させることによるほかない。

 だが、党指導部がそれをはるかに上回る私利を図っているとすれば、共産党支配の正統性は根本から揺らぎかねない。

 証拠となる文書は全世界にさらされている。このまま説明なしに済むとは思えない。