甘利明・前経済再生相の現金授受問題で、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した。

 政治家や秘書が口利きの見返りに対価を受け取れば、あっせん利得処罰法違反になる。

 甘利氏や元秘書が千葉県の建設会社側から受け取った600万円は、どんな趣旨なのか。

 甘利氏は見返りとは無関係の政治献金という認識を示しているが、建設会社の総務担当者は元秘書らによる都市再生機構(UR)との補償交渉への介入と、補償金の支払いが実現したことへの謝礼の意味だったと証言している。

 双方の主張は大きく食い違うが、政治家側がカネを受け取り、依頼者の求めに応じて役所などに働きかける――そんな口利きがもしあったとしたら、言語道断である。東京地検は実態の全容解明に全力をあげてもらいたい。

 同時に、忘れるわけにいかないのは、甘利氏自身が説明責任を果たしていないことだ。疑惑があれば、捜査当局の解明を待つまでもなく、自ら国民に説明する。それが国民の代表である国会議員の責任だ。

 甘利氏自身、大臣辞任を表明した1月末の記者会見で「弁護士による調査を続け、しかるべきタイミングで公表する」と約束したはずである。

 過去に政治とカネの疑惑に問われた他の政治家には「捜査当局に資料が押収され、事実関係が確認できない」などと弁明する例もあった。だが甘利氏の場合は、大臣辞任後2カ月半、調査期間があった。途中経過であっても公表できるはずだ。

 一連の経緯については、まだ不明な点が多い。

 その一つは、甘利氏自身のかかわりである。

 甘利氏は元秘書がURと交渉していることは「今回初めて知った」と1月の会見で説明したが、URはその後、甘利氏も交渉について把握していると元秘書から伝えられたとしている。

 真相究明のため、野党は衆院予算委員会への甘利氏の参考人招致を求めてきたが、自民党は応じようとしない。

 甘利氏は体調がすぐれないことを理由に、国会を欠席している。だが、自ら説明できなくても、例えば弁護士らを通じての説明は可能なのではないか。

 安倍首相の責任も大きい。

 甘利氏を重要閣僚に起用してきた首相は、自らの「任命責任」を認めている。ならば甘利氏に説明するよう促すべきだし、党総裁として自民党にも何らかの形で説明責任を果たさせるよう指示すべきだ。