ホテルコーヒーのマズさにがっかり
リレー読書日記・堀川惠子
今回は「コーヒー」について書く。「コーヒー」は誰にも否定されない。賛否を激しく分ける論点もない。つまりテーマとして面白くない。ドキドキもギラギラもしていない。それでも三度のメシよりコーヒーが好きだから仕方がない。
最近、どこのコンビニも淹れたてのコーヒーを常備するようになった。これが意外に飲める。それも約100円也。「安い割にウマい」というお値打ち感はがぜん高まる。
仕事の打ち合わせに都内の某ホテルのラウンジを使っている。客席が広く重宝しているが、ここのコーヒー、いつもすえた臭いがする。そして酸っぱい。それが税サ込で約1200円也。長居封じの作戦か? 場所代と割り切ってはいるが「高い割にマズい」というガッカリ感はいやがうえにも増幅する。
川島良彰著『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味いのか』が売れているそうだ。読んで納得した。
コンビニコーヒーの原価は1杯12~13円で、売価100円でも利益が出る。各社ともしのぎを削って味を研究し、豆の大きさから抽出方法まで独自の工夫を凝らす。'15年度の売り上げ予想は、上位3社だけで15億杯以上。よく売れるほど、店置きの豆の鮮度が良くなり美味くなる好循環という。
商品開発に余念がないコンビニに比べ、高級ホテルの多くは大手コーヒー会社に抽出器具を無償提供させ、豆の納入の一切を任せているらしい。結果、コーヒーにこだわる意識が低くなり、抽出器が埃だらけという事態も散見されるとか。
しかも原価は10~15円というから目が点だ。食事やサービスに当てる労力をコーヒーにほんの少し割けば、味は驚くほど改善するそう。業界の方には一考するよう、伏してお願いしたい。
よく「ストレスの解消法は何か」と尋ねられる。買い物は最小限、温泉は往復が面倒、グルメでもない。が、私にはコーヒーを「淹れる」という手段がある。
挽き立てのコーヒーに一滴一滴、ゆっくりと湯を注ぐ。粉の膨らみ具合に細心の注意を払い、戦略的に落とす。落とす量とカップに落ちる量は常に同じでなくてはならない。油断してドバッといったらば、長く並べたドミノを倒したような気分だ。
この作業、集中してケン玉をする時の感覚とよく似ていて、落ち着く。勝負時には銀座P店の深煎り豆と決めている。深く濃くほのかに甘い一杯は、戦闘モードに欠かせぬ私の気付け薬だ。
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