日本銀行(BOJ)はこの3年間で200兆円を上回る資金をばらまいたが、円・ドル為替レートは元に戻った。3年前にアベノミクスが施行された際の目標の一つは、円安による日本企業の輸出増進だった。昨年6月に円・ドル為替レートは1ドル=125円台まで円安が進み、日本政府の狙い通りに動いたように見えた。ところが、今年に入って再び円高に転じた。原油安や中国の経済不安、欧州の銀行の健全性問題などが浮き彫りになり、国際金融市場において安全資産と見なされている円の需要が急増したためだ。
結局、円・ドル為替レートは第2次量的緩和が実施された2014年10月以前の水準に戻った。消費や輸出も再び鈍化している。昨年10-12月期の日本の輸出は前年比で-4.6%、小売販売は同-0.2%だった。日本内閣府は先月23日、景気判断を「一部弱化」から「弱化」に下方修正した。
使える切り札が底を尽いた日本政府の苦悩は深まっている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「円安にしようという日本政府の努力が水泡になった形」と書いた。
■200兆円ばらまいたのにレートは逆戻り
専門家らは、対外環境の変化が円高を招いていると分析している。今年に入って原油安が浮き彫りになり、産油国を中心とした新興国経済に対し懸念の声が高まっている。中国経済の成長が鈍り、中国の証券市場を震源地として世界の金融市場が揺らいだ。これに加えて最近、米国が基準金利引き上げの速度調節に乗り出し、ドル安に転じた。
また、日本政府が来月日本で開かれる先進7カ国(G7)首脳会議までは円高抑制に乗り出しにくいとの見通しが金融市場に広がり、円高がさらに進んだ。安倍晋三首相は外信とのインタビューで「世界各国はどのような状況に置かれても、競争的な通貨切り下げを避け、独断的な外国為替市場介入も自制しなければならない」と語ったため、こうした見通しがさらに強まっている。
7日には欧州中央銀行(ECB)が浮揚策を発表してドル高になったが、円の勢いの方がドルを上回り、円高になった。ヘッジファンドなど投機性資本まで円高になると予想している。三菱UFJ銀行は「円高は原油安など主に対外的な要因により当分の間続くだろう」と見ている。