16年3月20日現在の日銀の保有国債残高は353兆円である。時点の差を無視して、統合政府のバランスシートを考えれば、実質的な国債残高を90兆円程度と考えることもできる。
世間では国債残高1000兆円という声ばかりであるが、実際のところ、せいぜい100兆円程度といった方が正確である。
それでは、もう日銀の量的緩和は限界なのだろうか。15年末における日銀資金循環勘定によれば、国債残高は1036兆円。その保有者をみると、日銀が331兆円保有しているので、これを差し引いた日銀が買い取り可能な国債残高は705兆円である。この意味で、まだ理論上、日銀の量的緩和の余地は大きい。
こうしてみると日銀限界説に根拠がないことがわかるだろう。限界説を払拭するには、実際に日銀がさらに量的緩和を行えばいいだけだ。
前出の日銀資金循環勘定では、預金取扱機関、保険・年金基金のポートフォリオもわかる。2つの機関では、現預金431兆円、貸出779兆円、国債472兆円、その他有価証券419兆円、対外投資等268兆円、その他51兆円で総資産は2420兆円となっている。
472兆円の国債を日銀が買い上げることは、実際の日銀のオペレーションからいっても十分に可能なので、量的緩和の拡大を行えばいい。これは、同時に財政再建に資するので将来不安は払拭されるはずだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)