日銀の量的緩和実施から3年が経過したことを受けた記事で、「日銀緩和の限界」や「誤算」について相次いで報じられている。日銀の金融緩和はもう限界なのだろうか。
世の中で流布している日銀緩和の限界説をみてみると、主な論点は、企業や消費者の将来不安を日銀の金融政策だけでは払拭できないというものだ。
マクロ経済政策には、金融政策と財政政策があり、金融政策だけでは万能でないのは当然である。ただし、財政政策のみで万能でないのもそのとおりだ。だから財政政策と金融政策のポリシー・ミックスが必要であり、日銀の金融政策が不要になるわけではない。適切な財政政策と組み合わせれば、金融政策は実質金利を下げるので、効果がある。
そもそも、金融政策限界説の前提になっている将来不安は、しばしば財政の観点から出てくる。つまり、将来の増税が不可避で、不安があるという論法だ。しかし、日銀の量的緩和によって、ストックでみた国の財政事情はかなり好転しているのが実情だ。
特殊法人を含めた広い意味での政府について、国の連結バランスシートでみると、2015年3月末で資産932兆円、負債1371兆円で、資産負債差額は439兆円である。
この国の連結バランスシートには日銀が含まれていない。日銀は立派な政府子会社であるので、本来なら含めるべきだ。
そこで、日銀を含めた広い意味での政府のバランスシート(経済学で言うところの統合政府)を考えてみよう。