ここから本文です

「ダメエリート」山尾民進党議員の会見を笑う --- 石井 孝明

アゴラ 4月8日(金)19時51分配信

記者会見で一番必要なもの

私は経済記者として決算発表など小さいものをいれれば1000回以上会見に出席し、そのうち50回以上の釈明記者会見を見ている。

記者会見に上手い、下手はある。4月5日にガソリン代を中心に政治資金で不明金を使ったという疑惑の報道が週刊新潮によってされた山尾しおり民進党政調会長が釈明会見を行った。あまりにも下手すぎる。事実分析は一次情報を持っていないためにできないが、このコラムでは記者会見の巧拙を取り上げてみよう。日本の「エリート」とされる人の底の浅さを知ることのできる、ひどい内容だった

上手な記者会見にはテクニックがある。話し方、出す情報の管理の方法などだ。しかし、そういう小手先の技術を論じても仕方がない。

記者会見で、一番重要なのは誠実さだ。記者は正義を体現する神の代理人ではない。残念ながら、そういう勘違いをした傲慢な、レベルの低い記者はいる。それによって記者をうるさがる人はいる。また情報公開をめんどうがる傲慢な人はいる。いずれも間違っている。山尾氏はこの記者会見で、明らかに手を抜いていた。

記者の背景には、知ることを求める国民がいる。情報を隠し、記者の質問にまともに答えず会見をバカにする人間は、国民をバカにしているのだ。「天網恢々疎にして漏らさず」(老子)。社会をなめたそういう人物は天の意図かもしれないが、いずれ必ず大きく転ぶ。

記者として一番印象に残り、そしてその後に良い影響を与えた成功例と評価できる会見は、1997年の山一証券倒産のときの野澤正平社長の会見だ。会見の途中で、全部の事実を認めて号泣、謝罪した。彼が同社倒産の引き金になった違法な簿外債務には関係がなかったにもかかわらずだ。彼はこう叫んだ。

「みんな私ら(経営陣)が悪いんであって、社員は悪くありませんから!どうか社員に応援をしてやってください。優秀な社員がたくさんいます、よろしくお願い申し上げます。私達が悪いんです。社員は悪くございません…!」

野澤社長にその後話したとき、「自然とほとばしりでた」と説明していた。彼には技巧がなかった。彼は口先だけではなかった。その後、社員の再就職にも奔走した。そして彼は別の証券の社長に請われて働き続けた。誠実さが結局、自分と組織を守る好例だろう。

「秘書のせい」は聞き飽きた

山尾議員はなにをしたか。記者会見をまとめてみよう。

1・謝罪なし、冒頭政権批判。「申し訳ない」とだけ。

2・ガソリン代購入額が多かったのは、ある秘書が請求したため。「捨てられた領収書を使ったようだ」。

3・秘書が使い込んだ可能性と刑事事件になりかねないことを表明。

4・政調会長も議員も辞めない。

5・甘利辞任と比較するなと、メディアを批判。

あまりにも稚拙な内容だ。記者は当然金の流れに関心を持つ。疑惑発覚から一週間が経過したのに、その重要な事実を調べていない。証拠も示していない。当然、記者は勝手に調べ始めて、情報は山尾氏にコントロールできなくなる。また横領したとされた秘書が、違う事実を示したらどうなるのだろう。支離滅裂だ。そして自民党のダメ政治家が繰り返し使う「秘書のせい」という愚かないいわけをしている。これはイメージ的にも最悪だ。

ある事件を調べるとき、過去起こったこと、未来に起こり得る展開を、検察・警察官、また記者も「筋読み(すじよみ)」する。過去に関してこの金は、山尾議員の懐に入ったと想像するのが自然だし、未来に関してはこの下手な会見でまったく見通せなくなった。

山尾氏が検事だったという事実にも驚く。最近の検察捜査では、小沢一郎議員の疑惑事件が立件されないなど、粗い動きが目立ち、また不祥事も多発した。検察のレベル低下が指摘されているが、彼女のレベルの人物が検事ができるなら「さもありなん」と思う。

こうした人物を、当選2回なのに、政調会長に抜擢した民進党の首脳部も滑稽だ。彼女は「保育園落ちた日本死ねブログ」を題材に首相を追求したことから目立った。その軽薄さに私は眉をしかめていた。(私のコラム「「保育園落ちた日本死ね」ブログをほめるな」)民進党の首脳部の人物鑑定眼にも疑いを持つ。

日本のために山尾議員は頑張れ

ただ、彼女が頑張り続けることは、国民のためになるかもしれない。

軍事ジョークで「ゼークトの組織論」というものがある。


「有能な働き者」は参謀にして全軍のために働かせろ。「有能な怠け者」は野戦将校にしろ。なぜなら楽をして勝とうとするからだ。「無能な怠け者」でも権限のない連絡将校ぐらいはできるだろう。言われたことだけをするからだ。「無能な働き者」?。処刑するしかあるまい。誤った方向に軍をひっぱり、敗北をもたらすためだ。

今の民進党は、ダメさしか目立たない。健全な野党が成立するために、有能な人材が生き残って、次にあるとされる同日選挙でこの党が壊れることは、日本のためになる。

山尾議員は民進党政調会長として「無能な働き者」として、頑張り続けてほしい。自分のこともまともに説明できない、記者会見一つまともにこなせない人物が政策など組み立てられるわけがないだろう。民進党の混乱と、その敗北を拡大させてほしい。

石井孝明
経済ジャーナリスト

石井 孝明

最終更新:4月8日(金)19時51分

アゴラ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

アゴラ-言論プラットフォーム

アゴラ研究所

毎日更新

無料

経済、ビジネス、情報通信、メディアなどをテーマに、専門家が実名で発言することで政策担当者、ジャーナリスト、一般市民との交流をはかる言論プラットフォーム

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

素晴らしい車は芸術である
自動車デザインはそれだけで一つの芸術の形になり得ることをアメリカ人デザイナー、クリス・バングル氏がBMWグループで未来のSUVを生み出すための「ディープブループロジェクト」の例を引きながら、愉快にそして時に感動的に説明します。[new]