読者のみなさんは「旅」という言葉にあてはまる場所としては、どこを連想するだろうか? それぞれ答えはあると思うが、「最果ての地」もその1つではないだろうか。海外旅行が一般的になっている現在、世界中の「最果ての地」をご存じの方も多いと思う。ただ、ここではあえて国内の「最果ての地」に注目してみた。
日本の「最果ての地」は、果たしてどのような場所なのか? 本コラムではそんな「日本の最果ての地」を紹介する。第1回目は定番、日本最北端の地「宗谷岬」をお届けする。
日本最北端の地
日本最北端といえば、法的には択捉島になる。択捉島の北に位置する「カモイワッカ岬」が最北端だ。国土交通省国土地理院では、その択捉島の地形図(※1)を発行しており、従来からある紙媒体のほか、現在は電子地形図をホームページ上からも閲覧できる。この地形図は現在、地球観測衛星の画像を利用して測量し、その画像上で判読できた道路や建物を表示したものが発行されている。
またこの地形図を基に作成している弊社でも地図を作成しており、択捉島の概要を知る事が出来る。
しかしご存じの通り現在択捉島は、事実上ロシアが実効支配しているため、一般人が渡航することは容易ではない。日経ビジネスオンラインのコラム『現地で見た北方領土、強まる実効支配』においても、記事や写真が掲載されているが、渡航できるのは「ビザなし交流」や「墓参」等を目的とした一部の方に限られている。ロシアの他都市経由でビザを取得し渡航する方法もあるが、内閣府では日本の法的立場を害する恐れがあるため、自粛を呼び掛けている。
さて一般人(著者も含む)が自由に訪れる事の出来る日本最北端は、北海道稚内市の「宗谷岬」となる。「宗谷岬」という歌も発売されているため、ご存じの方も多いことであろう。稚内港からフェリーで渡れる礼文島(北海道礼文町)の北端にあるスコトン岬の方が「最果て」感はあるが、緯度的にはこちらのほうが北に位置する。厳密に言うと、宗谷岬の先に見える「弁天島」が最北端となる。
宗谷岬の観光シーズンは夏である。訪れた事のある方は、おそらく夏場がほとんどであろう。岬周辺の土産物店や飲食店は数件あるが、4月から10月ないし11月までの営業期間という店舗が多数を占める。通年営業の店舗は確認できただけで1件と、それを裏付けている。
夏場の宗谷岬は意外と賑やかである。最北の寂しいイメージも多少はあるが、時間によっては団体の観光客でごった返しており、「日本最北端の地」碑での記念撮影も一苦労するほど。「観光地」というイメージが強い。
そんな日本最北端であるが、冬場に訪れた方は少ないのではないであろうか? 今回は冬が到来したばかりの12月初旬の宗谷岬を訪れてみたので、その様子を紹介したい。
稚内への道
宗谷岬へは、稚内市街からのアクセスが一般的である。空路の場合は稚内空港、鉄道の場合は稚内駅、バスの場合は稚内バスターミナルが玄関口となる。車の場合は、日本海側からのアクセスであれば稚内市経由、オホーツク海側からのアクセスであれば猿払村や浜頓別町経由が一般的となるが、豊富町から内陸の道を経由して行く方法もある。いずれも最終的には国道238号を走るルートとなる。
時間が許せば、札幌や旭川から陸路の旅も悪くない。鉄道の場合、特急は札幌駅から、普通は最長で旭川駅から運行されている。普通列車は途中駅で一度、乗り換えが必要な場合が多い。長距離バスは札幌からの運行となる。レンタカーを含む自家用車の場合、その時の気分によって自由な経路を選択できる。
以前経験した「鉄路の旅」も悪くはないが、今回は限られた時間での旅を想定し、効率性を考え、空路で直接稚内を目指すことにした。
実はこの稚内空港、冬季の就航率の悪さでは有名な空港である。実際筆者が予定していた日程においても、低気圧の影響で羽田空港からの直行便(冬季は1日1便のみ)が欠航になり、改めて厳しい環境であることを感じさせられた。
何とかスケジュールをやりくりして1週間後にもう一度航空便を押さえたものの、当日、羽田空港に着くとまたもや「条件付き運航」の表示が。風雪で着陸不可能な場合は、新千歳空港への着陸という条件になってしまった。こればかりは仕方がないが、特に短い日程の場合、往復共に札幌や旭川からのアクセスも考えておく必要がある。出発当日は、まさに運を天に任せる形で搭乗する事となった。