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パナマ文書 税の不公正解消へ動け

 勤労者が真面目に税金を納める傍ら、権力者や資産家は、国外に富を隠し課税から逃れる仕組みを利用できる−−。そんな不公平さを浮き彫りにする機密資料が明らかになり、世界中に波紋が広がっている。

     中米パナマの法律事務所から流出したため「パナマ文書」と呼ばれる膨大な量の内部情報だ。関与が報じられたアイスランドの首相が辞任に追い込まれるなど、具体的な影響が早くも伝えられる。

     法律事務所と亡父の投資ファンドの関係が資料で明るみに出た英国のキャメロン首相は、度重なるメディアの追及を受け、自身にも恩恵があった事実をようやく認めた。本人や近親者が資産隠しや脱税など疑念の目を向けられている政治家は、率先して事実を説明する責任がある。

     それにしても今回の流出資料の量と、そこに名前が登場する公職者や著名人、金融機関の広範さには息をのむ。約80カ国から総勢400人ものジャーナリストが参加した文書の検証や分析には、約1年を要した。

     暴露された情報が持つ今日的な意味合いを考えてみたい。

     2008年のリーマン・ショックを契機とし、金融の世界で生み出される膨大な富の恩恵を受ける一握りの人々と、金融危機後、長期にわたり余波に苦しむ多数の庶民との落差に焦点が当たった。危機の後始末には、各国で多額の税金が使われた。庶民の怒りや不満はまだ根強く、米国でのトランプ現象や欧州での過激な思想の広がりにつながっている。

     国家を支える税金は、国民が負担能力に応じて公正に納めるのが大前提だ。富の偏在が問題になる中、公正さ、そしてその担保となる情報開示が、かつてなく求められている。それに真剣に応えるべき政治指導者が、自ら公正な負担や情報開示を逃れることは、国民の信頼に対する裏切りで、民主主義を支える基盤を揺るがすことにもなりかねない。

     パナマ文書では、習近平・国家主席を含む中国共産党指導部の親族の金融取引も発覚した。国を挙げて腐敗の撲滅、資金の国外移転阻止に取り組む中、指導層が不透明な資産管理に手を染めていたとすれば、改革の正当性が損なわれる。資金流出に一段と拍車がかかる懸念もある。

     租税回避や、犯罪がらみの資金でないように見せかけるマネーロンダリングへの対応策は、主要7カ国(G7)などの国際会議のたびに声明に盛り込まれてきたテーマだ。

     来月には、日本を議長国にG7首脳会議が開かれるが、形だけの宣言に終わらせてはならない。大胆で実効性のある対策を協調して進めていく約束をし、税の不公正解消への本気度を示してほしい。

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