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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

新聞業界崩壊の危機?詐欺的行為「押し紙」に国がメス!不当な方法で巨額の広告収入

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「新聞社が、押し紙によって部数を水増ししている」という疑惑は以前から存在し、訴訟に発展したケースもあるが、その実態や着地点は曖昧模糊としている。

 ただし、読売新聞社と産経新聞社は自主的に押し紙を中心に残紙の廃止に向かって動き出しており、この2紙については、すでに押し紙はないに等しく、あったとしてもわずかだといわれている。しかし、人口減少とそれに伴う部数減に苦しむ地方紙を含むそれ以外の新聞社では、この残紙処理が行われていない可能性が濃厚で、今後はさらに大きな問題になる可能性がある。

 例えば、公取委が2割の残紙に対して、新聞社に是正命令を出したとしよう。それが法的な証左となり、各広告主は新聞社に対して不当利益の返還請求を行うことができ、刑事的には詐欺罪になる可能性もある。

 不当利益は過去10年にわたって追及することができ、さらに法定金利の6%を加算して請求することができる。つまり、前述の例でいえば、「400億円×10年+年利6%」という計算になり、総額は4000億円をゆうに超える。

 朝日新聞社の純資産は約3383億円(15年度、連結)のため、純資産を上回る“隠れ債務”が存在するということになる。実際は、「広告主から請求された場合」という条件付きであり、数字もあくまで想定にすぎない。

 しかし、消費者金融の過払い金問題を見てもわかるように、一度火がつけば、押し紙に対する不当利益返還訴訟は各地で繰り広げられることが予想される。また、そうなった場合、請求額のすべてとまではいかなくとも、半分以上は広告主に回収されることになるだろう。

 消費者金融業者の多くは、過払い金問題によって破綻や破綻同然の状態に追い込まれた。それと同じことが、新聞業界にも起こりかねないというのが、日本の実情なのである。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

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