「宇宙ホテル」の試験機 打ち上げへ

一般の人でも宇宙に滞在できる、いわゆる「宇宙ホテル」の試験機が、日本時間の午前6時前、アメリカ南部フロリダ州にある空軍基地から打ち上げられる予定で、民間企業による宇宙施設の実現に向けた一歩となるのか注目されています。
打ち上げられるのは、アメリカ西部ネバダ州にある民間企業「ビゲロー・エアロスペース」社が開発した「BEAM(ビーム)」と呼ばれる試験機です。
全長と直径がいずれも2メートル余りの円柱形ですが、宇宙に行くと風船のように膨らみ、全長が2倍近くの4メートル、直径が1.4倍近くの3.2メートルまで広がります。
ビゲロー社は、アメリカ西部で格安ホテルチェーンを経営する不動産王のロバート・ビゲロー氏が起業した宇宙機器メーカーで、宇宙で空間が広がるタイプの有人宇宙施設の開発を進めています。
全長17メートル余りあり、6人が滞在できる大型の宇宙施設の開発を目指していて、今回の試験機は、その実現に必要な技術を2年にわたって宇宙で実証することが目的です。
試験機は高度400キロを飛行する国際宇宙ステーションに取り付けられ、宇宙飛行士が定期的に中に入るなどして安全性を確認するということで、ビゲロー社は、一般の人が宇宙に滞在できる「宇宙ホテル」の開発につなげたいとしています。
試験機は、日本時間の午前5時43分、南部フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる予定です。

民間による宇宙開発につながるか

今回の打ち上げでは、試験機とそれを打ち上げるロケットの双方をベンチャー企業が開発し、打ち上げが成功すれば、民間による宇宙開発が着実に発展していることを示す象徴的な出来事となります。
具体的には、ベンチャー企業の「ビゲロー・エアロスペース」社が、宇宙飛行士がふだん着のまま中に入って滞在できる宇宙施設を、それを打ち上げるロケットは「スペースX」社が、それぞれ開発しています。
NASA=アメリカ航空宇宙局は、2030年代に火星に人類を送り込む計画を打ち出していますが、人類を月に到達させたアポロ計画のような巨額の予算を投じることはできないとしています。
このため、民間企業による新たな技術の開発やコストダウンの実現に大きな期待を寄せていて、打ち上げ時にコンパクトに収納されているビゲロー社の宇宙船は、打ち上げにかかるコストを低く抑えると期待されています。
将来、ビゲロー社が大型の宇宙施設を実用化すれば、NASAは火星の有人探査で活用することを検討していて、将来の宇宙開発で民間企業が果たす役割はますます大きくなるとも言われています。
このため、今回の打ち上げが成功して、民間企業による宇宙施設の実現に向けた一歩となるのか、注目されています。