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3 我が国の国際的な魅力向上のための規制改革

【問題意識】

 1990年以降、世界中の国・地域においてFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を締結する動きが活発化している。欧米での地域連携が進む中で、近年では東アジアにおいても多くの国がFTA/EPAの締結を積極的に推進しており、現在WTO(世界貿易機構)になされた通報は180件を上回るものとなっている。従来のWTOの下での多角的貿易交渉体制では、様々な国内問題を抱えた国が多数参加し、各国間の利害調整が複雑になるため、多国間での交渉の枠組み自体が行き詰まっているとの認識が広まっており、このような2国間・地域の枠組みでの協定締結に拍車をかけていると言える。
 我が国は、昨年初めてシンガポールとのFTA/EPAを発効し、現在メキシコ及び韓国、アセアン等の国・地域との間で取組を推進しており、従来からのWTOを機軸とした多角的貿易交渉と2国間・地域の枠組みであるFTA/EPA交渉を同時に進めるという方向転換を図りつつある。しかしながら、自国内の特定産業における既得権益の制約などから、具体的な交渉も暗礁に乗り上げている状況にある。
 FTA/EPAを進める際には、貿易投資の拡大で双方の国々がメリットを享受できる「Win−Win」の関係を構築することが大きな前提となる。輸出の拡大はもちろん国内の市場開放を通じた輸入の増加の結果、市場から撤退せざるを得ない企業等が発生するという痛みを伴うものの、長期経済停滞から脱するために不可欠な産業構造の高度化をもたらすという大きな利益が得られる。また、FTA/EPAによって、海外からの投資を呼び込むことができれば、経済の活性化と雇用機会の拡大というメリットも得られることとなる。このためには、経済のグローバル化に対応し、「ヒト(労働)」「モノ(商品)」「カネ(資本)」の自由で円滑な移動が可能となるよう、国内の改革を推進していく必要がある。さらに、世界の経済社会の変化に対応し、世界に通用する制度を構築していく必要がある。
 我が国は、欧米諸国と異なり、外国人労働者の受入れには長年にわたり、抑制的な対応をとってきた。しかしながら、経済がグローバル化する中、世界は人材獲得競争という新たな時代を迎えている。我が国経済が世界経済の中で競争力を維持していくためには、少なくとも高度な人材に対し、国境を越えて幅広く門戸を開放していかなければならない。さらに、我が国が本格的な少子高齢化時代を迎える中で、労働者不足が見込まれている分野については、外国人労働者の受入れは避けることのできない大きな課題である。グローバル化の進展に伴い国際的な分業体制が確立していく状況下において、我が国の企業、さらには我が国の経済社会が、外国人労働者をどのように受け入れ、彼らと共生していくか、そのため入国管理や雇用等に関わる制度など社会システムをどのように変革していくのか、これらの問題に対する答えを出す時期が迫っている。官民を挙げて国民的な議論を行い、速やかに国としての目指すべき方向性を明らかにしていくべきである。特に、FTA/EPA交渉において相手国から要望がある労働者の実質的な受入れを可能とする方法について、積極的な検討を行うことが交渉を進める上で急務となっている。その際、不法就労、犯罪等の防止、適切な労働条件の確保、我が国の雇用全体への影響、適切な能力・技術の確保等に十分に配慮しつつ、どのような措置を行うことが適切か、早急に相手国との議論を踏まえ、合意できる結論を得る必要がある。
 「モノ」の円滑な移動のための条件整備も大切である。「モノ」の円滑な移動を妨げている障壁のひとつは関税であり、現在我が国がFTA/EPA交渉中の国々との間の最大の関心事項でもある。FTA/EPA交渉を推進していくためには、農水産品についても、これを「聖域」とせず、一定以上の関税撤廃が不可欠となってくる。FTA/EPAは双方の合意に基づいて締結されるものであるから、相手国ごとに自由化の要求品目が異なる。したがって、米など極めてセンシティブな一定の品目については、対象外とすることによりFTA/EPA締結への道を開いていくことも十分に可能である。実際に、諸外国において、これまでに締結されたFTA/EPAについても、一定の農産物を例外扱いとしている例も見られる。特定の政策によって我が国の取るべき選択肢が大幅に狭められ、世界経済の潮流から取り残されることは到底看過し得ない。FTA/EPAは、我が国の国民全体の利益のために推進すべきであり、「真の国益は何か」という観点に立った取組みが求められる。
 また、FTA/EPAは、各省がそれぞれの立場から検討を進めるのではなく、政府が一体となって強力に推進すべきである。そのため、各国とのFTA/EPAの交渉に当たり政府全体として各省の所掌にとらわれず、分野横断的かつ包括的に取り組むことができる体制の構築が急務である。各国との間で経済的メリットを享受する関係を構築するには、センシティブな分野についても強力な政治的リーダーシップの下に果敢に取り組み、積極的に市場開放を行っていくべきである。
 今般、当会議においては、「国境を越えた『ヒト』の円滑な移動のための条件整備」、「『モノ』の移動がスムースに行われるための環境整備」、「透明で安心な投資環境の整備」、「我が国で暮らす外国人の生活環境の整備」を中心に、我が国がFTA/EPAを進めるに当たり、率先して取り組む国内市場・制度改革の具体的施策を取りまとめた。さらに、「真の国益」を追求する観点からは、これら具体的施策のみならず、FTA/EPAを締結するために必要なその他の施策についても、適切かつ速やかに実施していくことが求められるところである。

【具体的施策】

1 国境を越えた「ヒト」の円滑な移動のための条件整備

(1)観光、短期ビジネス等における円滑なヒトの移動

@ 問題のない国・地域に対する査証免除対象国の拡大【平成15年度以降逐次実施】
 現在、我が国を訪れる外国人旅行者は年間約500万人程度にすぎず、国際観光後進国であると言わざるを得ない状況にある。グローバリゼーションが進展し、国境を越えたヒトの移動がますます常態化する中で、今後、我が国が観光立国を実現していくためには、宿泊施設や交通網等のハード面だけでなく、査証・入国管理制度等のソフト面にわたるインフラの整備が必要である。  我が国の査証免除対象国は現在63か国・地域に限定されているが、人的交流の促進、観光立国等の観点から、不法就労、不法滞在、犯罪、テロ等に留意し、治安に影響を及ぼさないための措置等を講じつつ、問題のない国・地域に対する査証免除措置を拡大していくべきである。

A 韓国人に対する期間限定査証免除の実施【平成17年度中に措置】
 韓国については、構造改革特別区域推進本部決定によって修学旅行生に対する査証免除が認められたところであるが、我が国への観光を目的とする者を始めとして査証免除を求める要望が強いこと、昨年のサッカーのワールドカップ共催時に期間限定査証免除措置を試行した実績があること、韓国側は査証免除措置を実行していること、現在FTA締結に向けた交渉が本格化しつつあること等を踏まえ、韓国側の偽変造対策を強化した新型旅券の導入を前提に、我が国における不法滞在の温床とならないよう、治安に影響を及ぼさないための措置を講じつつ、問題のない場合には、段階的措置として再度の期間限定査証免除措置を実施すべきである。

B 香港住民に対する査証免除の実施【平成16年度中に措置】
 香港については、我が国と香港との間の人的交流促進の重要性とともに、香港の出入国管理が厳重に行われていること、香港住民の不法滞在が少ないこと等を総合的に考慮し、治安等にも留意しつつ、早急に査証免除措置を講ずるべきである。

C 中国人に対する査証発給手続等の見直し【平成16年度以降逐次実施】
 中国から我が国への観光客については、現在、北京市、上海市、広東省に戸籍を有する者の団体旅行に限り査証発給を行っている。相手国政府、日中双方の旅行会社等とも協力し、我が国への不法滞在の温床とならないよう、治安に影響を及ぼさない措置等を講じつつ、問題がない場合には、団体旅行に関する査証発給対象地域を段階的に拡大していくべきである。
 また、近年、中国と我が国における経済協力が進展している中、相互の来訪が円滑になるよう、数次査証の発給対象条件についても、株式市場上場企業の管理職等に限定せず、段階的に緩和すべきである。

D 数次査証の対象範囲の拡大、発給要件の緩和等【平成15年度以降逐次実施】
 我が国においてビジネス活動を行う外国人の中には、複数回にわたり我が国を出入国する者も少なくなく、利便性の高い数次査証の発給に対するニーズは高い。しかしながら、数次査証の発給は、原則として我が国と相手国との間で相互に取決めがある場合に限定されており、また、発給要件が厳しいとの指摘がある。
 したがって、不法滞在、不法就労やその他の犯罪の防止等に留意しつつ、各国におけるニーズ等を踏まえ、問題のない国については、早急に数次査証の発給、発給要件の緩和等を図るべきである。

E 短期在留期間に係る運用の改善【平成16年度以降逐次実施】
 短期査証に係る在留期間については、現在、90日、30日、15日とされている。不法滞在、不法就労等を防止する観点から、観光については、訪日外国人の滞在日数が概ね1か月未満であることを踏まえ、運用面において、在外公館において滞在日数に応じた在留期間を付した査証を発給し、入国審査においても当該滞在期間に応じた在留期間とすべきである。

F 査証発給審査に係る客観性の高いシステムの構築【平成15年度以降逐次実施】
 査証発給審査の手続等については、法令等に明確な規定が無く、在外公館等の担当官、窓口対応者の業務知識にも差があることから、裁量の余地が大きく、恣意的である等の指摘がある。査証発給審査の恣意性を排し、客観性、公平性の高い審査を実現するため、発給審査に係る事務について網羅的な再点検を行い、その成果を踏まえ査証発給審査のマニュアルを改善し、審査システムの向上を図るべきである。
 また、査証発給に必要となる書類等については逐次改定し、申請者の予見可能性を確保すべきである。
 さらに、IT技術も活用した申請者の属性に応じた審査の導入など効率的な審査を実施すべきである。

G 査証申請手続等の総点検及び抜本的見直し【平成15年度逐次実施】
 査証発給に係る申請手続等については、各国・地域の状況、我が国との関係に応じ、各在外公館の判断で定められている事項が少なくない。その結果、我が国において在留資格認定証明書の発行を受けた申請者に対しても再度同様の書類の提出を求めるケースがあるなど申請者に過重な負担を強いている場合や不便を生じている場合がある。また、査証発給に係る手数料については、在外公館の徴収する手数料に関する省令により一定の幅で一律に定められているが、原則として我が国における発給に要する実費を基準としているため、相手国国民の所得水準、相手国の経済状況等が勘案されておらず、手数料が年間所得の1割以上と過度な負担となっている国もあるとの指摘がある。
 したがって、不法入国・不法滞在、不法就労やその他の犯罪等の防止等に留意しつつ、各在外公館においては、現地各機関や関係者とも協力の上、申請者側の要望、不満等を把握するため査証申請手続の総点検を実施し、その総点検結果を踏まえ、申請者の負担軽減、サービスの向上の観点から、申請時の提出書類の削減・簡素化、現地語の使用、申請受付時間の延長、申請窓口における対応の改善、発給日数の短縮化、査証発給に係る手数料の見直し、代理申請条件の緩和等を図るべきである。

H ABTCの発行数の増大に向けた取組の推進【平成15年度以降逐次実施】
 APEC域内のビジネス関係者を対象として参加国・地域が相互に査証に関わる事務負担を減らす「APECビジネス・トラベル・カード(以下ABTC)」制度については、本年度から我が国も運用を開始したが、本制度の認知度はいまだ低く、発給実績もごく少数に過ぎない。
 経済のグローバル化が進む中で、APEC域内のヒトの移動を円滑にするため、ABTC制度を積極的に活用するよう、より一層の周知措置等を講ずるとともに、初年度の発行実績を踏まえ円滑な発行に向けた発行手続の見直しを図るべきである。

(2)高度人材を中心とした外国人の円滑な受入れの実現

@ 出入国管理施策の在り方の見直し【平成16年度検討、平成17年度結論】
 平成17年を目途に策定が予定されている第三次出入国管理基本計画の策定に際しては、我が国が必要とする幅広い高度人材の獲得に向けて、我が国労働市場への影響を考慮しつつ、高度人材の範疇、高度人材の具体的受入策等について検討していくべきである。その際、幅広く人材を受け入れることの是非についても社会的コスト等多様な角度から検討すべきである。

A IT技術者に係る資格の相互認証の拡大等【平成15年度以降逐次実施、英語試験については平成16年度中に検討・結論】
 経済のグローバル化に伴い、我が国の企業等においては、世界で通用する専門知識、技術等を有する外国人労働者受入れに対するニーズが一層高まっている。このような状況の中で、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、IT技術者に係る在留資格要件については、シンガポールを始めとして諸外国のIT技術に係る資格の相互認証を進めてきたところではあるが、真に実務に精通する人材について幅広い国々から受け入れる体制が整備されているとは言い難い状況にある。
 我が国経済の発展に貢献する海外の高度な人材を確保する観点から、IT技術者の資格の相互認証については、各国の国家資格のみならず、高水準の民間資格もその対象とすべきである。
 また、IT技術に関する我が国における外国人に対する試験制度についても、日本語による試験のみならず、その代替手段として英語等による試験を実施することを検討し、結論を得るべきである。

B 投資家・経営者等に関する在留資格の明確化、入国手続の迅速化【平成16年度中に措置】
 海外から我が国への直接投資を拡大していくことは、我が国の経済再生・活性化に資するとともに、国際競争力の強化にも通じるところである。また、対日直接投資拡大とともに、経営ノウハウに優れた外国人を積極的に受け入れていくことも重要となっている。
 しかしながら、我が国において投資及び経営を行う外国人の在留資格要件が複雑かつ不明確であるため、制度が理解されず、本来我が国が歓迎すべき外国人が来日を断念したり、投資活動を躊躇するなど、対日直接投資拡大を阻害する一因にもなっているとの指摘がある。
 したがって、投資及び経営を行う外国人の在留資格制度に関する理解を深め、我が国における投資等の機会を確保する観点から、これら外国人の在留資格要件(「投資・経営」「人文知識・国際業務」等)の具体的事例等を解説し公表するなど、制度の周知徹底を図るべきである。
 また、投資を行う外国人が来日し、会社設立手続等を完了させても、投資・経営に関する在留資格への変更許可を受けるまで時間を要するため、対日直接投資を行っていく際の大きな障害となっているとの指摘もある。
 したがって、在留資格の付与手続を円滑に行えるよう入国手続の迅速化を図るべきである。

C 我が国における外国人医師、看護師、介護福祉士等による医療行為等の解禁

ア 医師の臨床修練制度の充実【平成16年度の早期に措置】

 構造改革特別区域推進本部決定において、医師の臨床修練については、医療に関する知識及び技能の修得に加え、これに付随して行われる教授を容認されたところであるが、「臨床修練中の外国医師等が行う診療に対しては、報酬を支給しない。」と規定されている「臨床修練制度の運営について」(昭和63年7月4日健政発第387号厚生省健康政策局長通知)を見直し、医療先進国からの臨床修練医の教授に対する適正な報酬を支給できるようにするべきである。<「医療・福祉」8(1)に再掲>

イ 国家資格取得者の就労制限の緩和【逐次実施】

 我が国の医師国家試験、歯科医師国家試験、保健師国家試験、看護師国家試験に合格した外国人に対する就労については、医師、歯科医師については6年間、保健師・看護師等については4年間のみの研修など、厳しく制限が課されている。我が国において正規の教育を受け、かつ我が国での就労意欲のある者については、高度な教育を受けた人材として、その有効かつ適切な活用が必要である。そのためには、医療分野の我が国の国家資格を取得した外国人に対しては、就労地域、施設などの制限無く就労の期間の延長を認めるなど、就労制限を緩和していく必要がある。さらに、現在、我が国のFTA事前協議において、交渉相手国より医療分野の人材の受入れに係る要望があり、FTA交渉における大きなテーマの一つとなっており、この分野の人材を受入れる環境等の整備を検討していく必要もある。
 したがって、FTA交渉における諸外国からの要望も踏まえ、我が国の労働市場への影響や相手国における同様の職種の受入制度を勘案しつつ、FTA交渉において合意した場合には、医療分野の我が国の国家資格を取得した外国人に対しては、就労制限の緩和を急ぐべきである。<「医療・福祉」8(2)に再掲>

ウ 介護福祉士、あん摩マッサージ指圧師の就労制限の緩和【逐次実施】

 介護福祉士及びあん摩マッサージ指圧師として就労することを目的とする場合に入国が認められていないため、我が国の国家資格を取得しても就労できない。また、現在、我が国のFTA事前協議において、交渉相手国より介護・マッサージ分野の人材の受入れに係る要望があり、FTA交渉における大きなテーマの一つとなっており、これら分野の人材を受入れる環境等の整備を検討していく必要がある。
 したがって、介護福祉士及びあん摩マッサージ指圧師については、FTA交渉における諸外国からの要望も踏まえ、不法就労、不法滞在その他犯罪の防止等に留意し、我が国の労働市場への影響や相手国における同様の職種の受入制度を勘案しつつ、FTA交渉において合意した場合には、我が国の国家資格を有するなどの一定の条件に基づき、速やかに就労が可能となるように措置すべきである。<「医療・福祉」8(3)に再掲>

エ 医師・看護師の国家資格取得要件の緩和、明確化【平成16年度中に措置】

 現在、外国で医師・看護師などの教育を受けた者、資格を得た者が、我が国の医師・看護師などの国家資格試験などを受ける場合には、永住資格所有者のみを対象としたものとなっており、我が国の医療分野への高度な人材受入れの障害となっている。また、現在、我が国のFTA事前協議において、交渉相手国より、医療分野の人材の受入れに係る要望があり、FTA交渉における大きなテーマの一つになっており、この分野の人材を受け入れる環境等の整備を検討していく必要がある。
 したがって、永住資格を所有する者のみを対象としている受験制度を見直し、外国で医師・看護師などの教育を受けた者、資格を得た者などの医療分野の高度な人材であって、我が国で継続的に医業に従事する意思を持つ者が国家試験を受けることにより、永住許可を受けていなくとも、我が国の資格を取得できるよう措置するべきである。
 また、現在、外国の学校養成所を卒業した者、または、外国で免許を得た者が日本の医師・看護師の国家試験を受験するには、その教育内容が日本における教育内容等との同等性が認められる場合、さらには医師の国家試験(医師国家予備試験を含む)を受験するには、厚生労働大臣が適当と認めたものとの要件があり、あいまいとなっている。
 したがって、外国の学校養成所を卒業した者、または、外国で免許を得た者が日本の医師・看護師の国家試験または医師国家予備試験などを受験する際に認められる教育内容の同等性と厚生労働大臣が適当と認める際の基準を明確にするべきである。<「医療・福祉」8(4)に再掲>

オ 看護師等養成所の外国人受入定員規制の緩和【平成16年度中に措置】

 現在、看護師等養成所への留学・就学生については、「外国人の看護婦等養成所への留学、就学に係る留意事項について」(平成6年6月23日健政発第145号厚生省健康政策局長通知)により受け入れる留学・就学生の人数を養成所全体で総定員の3%以内であり、かつ5名以内」と看護師等養成所の教育能力のいかんにかかわらず厳しく制限している。
 したがって、留学・就学生の不法就労や不法滞在その他犯罪の防止に留意し、留学・就学生への教育の質の維持を図りつつ、看護師等養成所の留学・就学生の受入れに関する当該通知を見直し、看護師等養成所の外国人の受入人数・割合について緩和するべきである。<「医療・福祉」8(5)に再掲>

D 海外からの外国人転勤者に関する在留資格の周知徹底等【平成16年度中に措置、就業経験要件の緩和については平成16年度以降検討】
 我が国企業において、海外の現地会社において採用した人材を即戦力として活用するケースが増加している。これら外国人に付与される在留資格のうち一般的に認知されているものとして「企業内転勤」があるが、その在留資格要件に係る年数要件が迅速な対応を行う際の弊害となっている。これら外国人については、高度な技術・知識等を有しており、「企業内転勤」でなくとも「技術」「人文知識・国際業務」などの在留資格が付与可能であるが、一般的には認知されていないため、入国を断念するケースも多い。
 したがって、転勤に伴い入国する外国人について、当該外国人が選択し得る在留資格の周知徹底を図るとともに、入国管理窓口等においても適切な助言を行うよう徹底すべきである。
 また、上記措置を講じてもなお、企業内転勤において求められる「就業経験1年以上」の要件が高度な技術・知識等を有する外国人の転勤の障害となる場合には、制度の悪用防止にも配慮しつつ、その見直しも検討すべきである。

E 外国人人材育成に資する研修・技能実習制度の見直し【平成16年度以降逐次実施】
 外国人研修・技能実習制度は、開発途上国の人材育成協力を目的に創設され、我が国企業等は年間約8万人程度の研修・技能実習生を受入れており、制度として定着しつつある。更なる国際貢献に資するためにも、不法滞在、不法就労やその他の犯罪等に留意しつつ、研修・技能実習生の生活・健康面の管理や就労状況の把握を行った上で、制度の再構築を図る必要がある。
 現在62職種となっている技能実習制度における対象職種について、開発途上国の技能移転に関するニーズ、国内の受入体制等を踏まえ、国際貢献に資する観点からも幅広く対象職種を見直していくべきである。
 一方、研修・技能実習生の失踪などといった問題も顕在化し、本制度が悪用されているとの指摘がある点も踏まえ、こうした問題の発生を防止する施策も併せて講ずるべきである。

F 在留資格認定証明書の申請手続の迅速化・簡素化【平成15年度中に措置】
 企業活動の国際化、複雑化に伴い、高度な技術を有する外国人を雇用したり、企業内転勤を行う事例が増加している。こうした移動に関して迅速かつ円滑な手続が求められており、その一助となるのが在留資格証明書の発行であるが、企業から当該証明書申請後、長い場合には、発行までに数か月要するケースがあるとの指摘がある。
 したがって、企業等のニーズを踏まえ、不法滞在等に留意しつつ、優良な受入企業(例えば、過去数年間にわたり、不許可となった事例が無く、また、受け入れた外国人について発生した事故が無い企業)については、在留資格認定証明書について迅速かつ簡素な手続で発行できるよう必要な措置を講ずるべきである。

G 在留期間中の外国人のチェック体制の強化【次期通常国会に法案提出】
 我が国の出入国管理制度は、専門的・技術的分野の外国人については積極的に受け入れていくとの基本的な考え方に基づき制定・運用されているが、社会・経済の情勢は常に変化しており、我が国にとって必要な高度人材の獲得を目指して、これに対応する制度の見直しを図るべきである。しかしながら、在留目的を偽装するなどして入国し、不法就労する外国人が増加している上、これら外国人や不法残留外国人による犯罪の発生も社会問題化しており、不正な手段により入国・在留する外国人の存在により、我が国における外国人を取り巻く環境は厳しいものと言わざるを得ない。高度な人材の受入れを促進するためにも、その環境整備を行う必要があり、その具体的な施策を早急に検討し実施すべきである。
 したがって、在留期間中の外国人の実態を的確に把握し、不正な手段により在留資格を取得したり、本来在留資格に定められた活動を行うことなく在留する外国人については、その在留資格を取り消すことを可能とするなどの所要の措置を早急に講ずるべきである。

H 入国管理体制の整備等【平成15年度以降逐次実施】
 我が国への外国人入国者数は平成14年で577万1,975人、外国人登録者数は平成14年末で185万1,758人で、10年前と比較しともに約1.5倍と大幅に増加している。一方、我が国における不法滞在者数は約25万人と推定され、このうち統計のある不法残留者数だけでみても、平成4年以降20万人台で推移しており、依然として高水準にある。こうした中で、来日外国人による凶悪犯罪が治安問題化しており、不法滞在者の存在が外国人犯罪の温床となっているとの指摘がなされている。
 したがって、今後我が国が歓迎すべき外国人の受入れを一層積極的に進めるとともに、国民の治安に対する不安に応えるべく必要なチェック・取締体制の強化を図るためにも、入国管理体制を整備していくべきである。また、併せて収容施設における監視業務の民間委託も引き続き推進し、業務の効率化等を図っていくべきである。

(3)教育等における国際交流の実現

@ 留学生の受入体制の質的充実
 近年、留学生の受入れが急激に増加していることに伴い、入学者選抜、教育研究指導、在籍管理等の面において、留学生の増加に対応した体制を十分に採らず、その結果、真に勉学・研究を目的としているか否かなど、留学生の質の問題に対する懸念が増加している。
 また、留学生の受入体制について十分であるとは言えず、関係各省庁において留学生に対する支援策を講ずるに当たっては、大学等の留学生の質の確保のための取組を促すとともに、国としての質の確保のための取組を強化していく必要がある。

ア 各外国人留学生支援制度に関する関係省の連携【平成16年度中に措置】

 外国人留学生受入れについて、「質」をより重視することに対応し、「質」の高い留学生の戦略的な受入れ推進を図るためには、留学生に関する諸制度について、関係省は的確な役割分担の下、互いに連携を図っていく必要がある。
 したがって、国費外国人留学生制度や有償・無償資金協力による留学生支援制度等、政府による外国人留学生支援制度、さらには私費留学生に対する支援制度の位置付け、特性を踏まえ、施策の取りまとめを行うなど、関係省の施策の連携を図るべきである。

イ 世界各国からの多様性のある留学生の確保【平成16年度中に措置】

 政府による外国人留学生支援制度の実施に当たっては、留学生に関する諸制度における国別受入数などにも留意して留学生出身国の多様性の確保の観点から支援対象国を拡大していく必要がある。近年の特定国からの留学生の顕著な増大や世界各国における社会経済情勢の変化に機敏に対応し、我が国への留学生を世界各国から幅広く受け入れるよう十分に配慮し、毎年度、国別受入数の見直しなどを柔軟に行えるような仕組みを各省間で構築すべきである。

ウ 質の高い学生の確保のための仕組み作り【平成16年度以降逐次実施】

 各国でトップクラスの者は、我が国ではなく欧米を留学先として選択する傾向があるとの指摘がある。「質」の高い優秀な学生が我が国を留学先として選択するよう、留学先教授の指名、留学生宿舎への優先入居等他の留学生との差別化を図るなど、我が国への留学を促すような仕組みを構築すべきである。
 さらに、受け入れた留学生についても、留学期間中の成績等に応じて奨学金の給付を見直すなど、優秀な留学生の更なる就学意欲向上のための仕組みを構築すべきである。

A 現地対応の充実

ア 国費外国人留学生制度等に係る手続の改善【平成16年度中に措置】

 在外公館においては、国費外国人留学生制度の募集・選考のほか、昨年度より実施されている日本留学試験の実施への協力、留学予定者に対する情報提供や広報、あるいは帰国留学生のフォロー等が行われている。今後、我が国への質の高い留学生の戦略的な受入れの推進に当たっては、現地におけるこうした活動に期待される役割は極めて大きく、十分な体制を構築していく必要がある。
 したがって、現地におけるニーズの把握、在日留学生からのヒアリング等を通じ、国別に現地の事情に対応した選考・募集を行うなど、より一層留学生の立場に立った募集・選考を行う体制・手続等の改善を図っていくべきである。

イ 渡日前入学許可の推進(日本留学試験の活用)【平成15年度以降逐次実施】

 渡日前入学許可については、留学希望者の負担軽減の観点から、更に推進すべきである。このため、昨年より実施されている日本留学試験については、在外公館の協力を得て、その実施国・都市の拡大を速やかに図るべきである。

B 親日派人材の育成のための留学後のアフターケアの充実【平成15年度以降逐次実施】

 外国人留学生は「未来からの大使」であり、我が国への留学経験者は将来にわたり我が国と各国とをつなぐ貴重な人材である。したがって、留学・帰国後の現地におけるネットワークづくりへの支援、親日家・知日家集団である各国の帰国留学生会等の活動全般への支援を更に充実させるべきである。

2 「モノ」の移動がスムースに行われるための環境整備

(1)輸出入・港湾関連手続の簡素化に資する国際海運の簡易化に関する条約(仮称)(FAL条約)の早期批准【平成16年度中に措置】

 現在の我が国の輸出入・港湾関係手続は主な手続だけで6省庁に所管が分かれており、諸外国に比しても煩雑・複雑なものとなっている。我が国の港湾の国際競争力強化が焦眉の急となる中で、早急に国際的に合理的な水準にまで簡素化していく必要がある。
 船舶の出入港時における各種手続の簡素化を図る「国際海運の簡易化に関する条約(仮称)(FAL条約)」は、現在までに米英仏独等94か国が締結しており、G−8で締結していないのは我が国のみとなっている。また、ハブ港を有するアジア諸国においても既に締結している実態にある。国際競争力のある港湾を創出していくためにも、国際標準への準拠、手続の簡素化の一環として、早急にFAL条約の締結を行うべきである。
 その際、FAL条約で求められる締約国の順守すべき基準については、現在我が国が採用できないとされる標準規定の項目が諸外国と比較し多数存在するが、これらの項目数を先進国並みにまで引き下げるよう、関係省庁は連携して、着実な対応を図るべきである。

(2)輸出入・港湾関連手続のワンストップサービスの一層の推進

   輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)については、本年7月に新たなシステムが稼動したが、既存手続の一部IT化、既存システムの相互接続にすぎない等の指摘もある。
 このため、輸出入・港湾関連手続に係る各種申請手続について、関係省庁は改めて、各種申請書類の削減、申請事項の削減、申請手数料の見直し等、申請手続や申請書類の徹底した省略、簡素化を図り、速やかにワンストップサービスの一層の推進を図るべきである。【平成16年度以降できるだけ早期に実施】
 また、民間システムとの連携等を推進し、国際標準等への適合も視野に入れつつ、より信頼度が高くかつ運用コストの低廉な新しいシステムの構築について検討し、既存業務・システムに係る最適化計画を策定すべきである。【平成17年度末までのできる限り早期に措置】

(3)主要港湾の24時間フルオープン化の推進

 国際コンテナターミナルとして期待される主要港については、税関に限らず、動植物検疫などCIQ(税関、入国管理、検疫)業務を始めとする行政官署を港湾利用者の要請によらず、自ら行政需要に応じて、24時間365日に向けた対応を実現すべきである。【平成16年度中に措置】
 また、フルオープン化に向けた人員増、体制整備を図るとともに、業務全般の効率的執行を図るため、現在は行政官署の行っている業務のうち可能なものについては順次民間委託を推進すべきである。【平成16年度以降逐次実施】

(4)国際競争力のある港湾(外貿コンテナ埠頭)の創出

 国際競争力のある港湾を創出していくためには、輸出入・港湾手続の簡素合理化や港湾のフルオープン化により一層合理的かつ効率的に対応していくことができるよう、輸出入・港湾手続を所管する府省間の連携を更に強化していくべきである。【平成16年度以降逐次実施】
 さらに、本年より構造改革特別区域においては、港湾管理者による行政財産の長期貸付け(30年まで)が可能となり、民間事業者による効率的な運営や柔軟な岸壁等使用料金の設定が可能となった。こうした取組の成果を踏まえ、民間事業の創意工夫がより一層発揮できるよう、港湾管理者及び港湾利用者の要請を踏まえ、特定の港湾において、民間事業者の活用方策について関係省庁は連携して検討し、結論を得るべきである。【平成16年度以降検討、結論】

3 透明で安心な投資環境の整備

(1)対日直接投資拡大のための環境整備

@ 合併等対価の柔軟化
 経済のグローバル化が進展する中、世界の直接投資の中心はクロスボーダーM&Aであるが、我が国においてはM&Aに関する法整備が十分になされておらず、対日直接投資は他の先進国と比較して極めて低い水準にある。
 対日直接投資を活発化させる観点から、外国会社を含む親会社株式や現金その他 
 の財産を対価として合併等を行うことを可能とする合併等対価の柔軟化について恒久的な措置を講ずるべきである。【平成16年度中に検討・結論】
 また、税制上の措置について、課税の適正・公平及び租税回避防止の観点も十分に踏まえ、検討すべきである。【平成16年度以降検討】

A 「新しい投資スキーム」の創設(日本版リミテッドパートナーシップ(LPS)、有限責任組織(LLC)など)
 我が国の事業再編・事業再生の促進やベンチャー企業等への円滑な資金調達等を実現するためには、従来型の銀行を中心とした間接金融のみならず、資本市場を通じた直接金融あるいは市場型間接金融による多様な資金調達手段を一層促進するインフラ整備やその資金を供給する投資者の投資活動の活性化を図るための環境整備を行う必要がある。
 米国においては、資金供給を円滑に行う事業形態・投資形態として、構成員の有限責任、課税のパススルーなどの特徴を有するリミテッドパートナーシップ(LPS)が普及している。我が国の投資形態としては、米国のLPSと類似する中小企業等投資事業有限責任組合制度があるが、投資先事業者、投資事業の範囲が限定的であるなど、資金調達のニーズ等に対して十分に応えるものとはなっていないとの指摘がある。
 したがって、投資者保護ルールの整備と併せ、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年法律第90号)を改正し、投資先事業者の要件や投資事業範囲を拡大して、より一般的な投資ファンド法制を整備すべきである。なお、投資事業範囲の制限を撤廃することについては、早期に検討し、結論を得るべきである。【次期通常国会に改正法案を提出予定、投資事業範囲の撤廃については平成16年度中に検討開始・平成17年度結論】
 また、米国において日本の法制度上存在しない事業形態として、リミテッドライアビリティカンパニー(LLC)がある。LLCは、ガバナンスの柔軟性があり、近年その利用が急速に拡大している。米国での普及状況にかんがみ、創業の活性化、資金調達の円滑化等に資するため、我が国においても、出資者の有限責任を確保しつつ会社の内部関係における柔軟なガバナンスが認められる特徴を有する新たな事業組織形態として、投資者保護ルールの整備と併せ、私法上の日本版LLC制度の創設を図ることについて検討し、結論を得るべきである。【平成16年度中に検討・結論】<「法務」4に再掲>

B 税制に関する文書回答制度の見直しなど

ア 税制に関する文書回答制度の見直し【平成15年度中に措置、標準処理期間の設定については平成17年度中に検討・結論】

 国税庁が行っている「税務上の取り扱いに関する事前照会に対する文書回答」制度は、「照会者が実際に行う(又は行った)取引や多数の納税者から照会されることが予想されるものなどに限定されており、特定の納税者の個別の事情に係るものや仮定の取引に係るものは対象とされていない。M&Aなど取引関係が複雑なケースにおいては、解釈に疑義が生じることも少なくなく、税の解釈に誤りがあり、過少申告を行った場合には、過少申告加算税等が課されるなど、海外企業の我が国における投資リスクをカバーする仕組みとはなっていない。」との指摘がある。
 本年9月の構造改革特別区域推進本部で、全国で実施する施策として、平成15年度中に濫用防止等の措置を講じつつ、特定の納税者の個別事情に係るものを除外している規定を見直すことが決定された。その濫用防止等措置については、納税者の利便性向上等を考慮し、諸外国の制度を参考にしつつ、必要かつ合理的な範囲で最小限度に留めるべきである。また、制度活用の実績等を分析した上で標準処理期間を設けることについても検討し、結論を得るべきである。
 将来的には、仮定の取引に係るものについても、対象とすべきとの意見もあるが、租税回避への悪用の可能性等に留意しつつ、対象とするか否かを含め、慎重に検討していくべきである。
 さらに、積極的に活用されるよう、税務職員に対して事務運営の徹底を行うなど本制度の周知徹底を図るとともに、本制度の有効性を担保するため、窓口の周知と局署における納税者の立場に立った適切な対応を行うべきである。

イ 税の質疑応答事例の公表等【平成15年度以降逐次実施】

 過去の事例を収集した「質疑応答事例集」は、各税務署において、課税処理の統一性を確保するために用いられ、納税者からの照会等に対し、税法の解釈・適用等を説明する際に、必要に応じて閲覧に供している。しかしながら、納税者は実際に税務署を訪問しなければ閲覧することはできず、必ずしも納税者のニーズを充足しているものとはいえない現状にある。
 更なる納税者の利便性を高めるため、できる限り多くの質疑応答事例を国税庁のホームページに掲載するなどの情報開示を積極的に行うべきである。また、海外企業や外国人からのアクセスにも対応するため、ホームページにおける法令解釈に関する情報について、英訳版の充実も検討すべきである。

(2)外国人の起業の円滑化

@ 株式会社に関する最低資本金規制の抜本的見直し【平成16年度中に検討・結論】
 1980年代以降、我が国の開業率は長期的な低下傾向にあり、近年においては廃業率が開業率を上回るなど、経済成長の原動力となる起業の促進が喫緊の課題となっている。
 新たなビジネスとしてネットビジネスや高い技術を有するベンチャーなど低資本で創業可能な業態や、サラリーマンや主婦、学生、外国人など起業の担い手の多様化が進みつつある中で、最低資本金制度が起業の弊害となっているとの指摘が多い。
 現在、法制審議会(法務大臣の諮問機関)において、最低資本金制度の在り方を含め、会社法制の現代化に関する検討が行われているが、中小企業挑戦支援法(中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律(平成14年法律第110号))において商法の特例措置として実施されている最低資本金制度の猶予制度の活用実績等を踏まえ、起業を促進し我が国経済の活性化に資する観点から、商法における最低資本金制度について、その内容を機能に応じて分解し、起業段階での最低資本金制度は撤廃する方向で見直すべきである。<「法務」3に再掲>

A 資本金払込証明制度の見直し【平成16年度中に検討・結論】
 会社設立の際の払込取扱機関への金銭の払込みがあることの証明については、本制度が金銭の払込みが実在することの確認であるとの趣旨にかんがみ、その証明の手段を現行の払込保管証明に限定せず、残高証明その他実際の払込みがあることを証明できる適切な手段によることを可能とするよう、商法において措置を講ずるべきである。

B 定款の目的の記載内容の柔軟化【平成16年度検討、平成17年度中に結論】
 定款の絶対的記載事項である会社の目的については、事業内容等が客観的、正確に確定できる程度の明確・具体性が要求されているため、登記実務者から、語句の使用等が厳格であり審査に時間が掛かること、また、新事業を展開するたびに定款変更の手続が必要となり事務の負担となっているとの指摘が多い。
 したがって、起業及び新規ビジネス参入促進等の観点から、会社の目的の記載の登記実務の運用を緩和し、包括的な記載を認めるよう検討し、結論を得るべきである。

4 我が国で暮らす外国人の生活環境の整備

(1)在留外国人児童生徒に対応した教育の充実【平成15年度以降逐次実施】

 在留外国人児童生徒に対する教育を充実するため、日本語指導等特別な配慮を要する児童生徒に対応した教員の配置や、母語を用いた指導協力者の在り方等に関する調査研究等の施策を充実すべきである。

(2)公的年金の相互協定の対象国の拡大【平成15年度以降逐次実施】

 企業等により日本に派遣される外国人や海外に派遣される日本人については、我が国及び当該国において公的年金制度に加入しなければならず、保険料の二重負担を強いられている。また、派遣先国における滞在期間は、派遣先国における公的年金の受給権が発生しない短期間の場合が多く、大抵は掛け捨てとなっている。これらは、外国人、又は日本人及びそれらの者を雇用する企業に負担を強いるものであり、国際間の円滑な労働力移動の障害となっている。
 したがって、公的年金の保険料の二重払いを回避すること及び当該国及び我が国の公的年金加入期間の通算により受給権を確立させ、掛け捨てを防止することを目的とする社会保障協定について、現在交渉中の米国、韓国、フランス、ベルギー等との早期交渉妥結、また、その他交渉未開始国との交渉を早期に開始すべきである。

(3)医師などの相互的受入協定の締結の推進

@ 医師などの相互受入協定の締結の推進【逐次実施】
 在留外国人の生活基盤の充実という観点から、在留者の多い国々などを中心に検討し、相互受入協定を締結するべきである。<「医療・福祉」8(6)に再掲>

A 外国人医師等の相互受入時の国家資格の取得要件の緩和【逐次実施】
 構造改革特別区域推進本部決定及び対日投資会議決定において、「現行の外国との医師の相互受入れを拡大し、相手国による日本人医師の受入れが無い場合でも、英語による国家試験に合格した外国人医師を、診察対象を当該国民に限定する等の条件の下、受入れる措置を講ずる。(平成15年度中に実施)」こととなったが、現在時点で、相互受入により認められているフランス、イギリス、シンガポールの外国人医師については、診察対象を「外国人」としていることに対し、今回の当該決定においては、その診察対象を「当該国民」に限定することとされており、診察対象を狭めることとなっている。
 したがって、実際に諸外国と協定締結に向けた交渉を行うに当たっては、交渉の状況に応じて、診察対象を「当該国民」に限らず当該相手国と密接な関係を持つ国の国民なども診察対象に含めることも考慮すべきである。<「医療・福祉」8(7)に再掲>

(4)外国人の居住環境の整備【平成16年度中に措置】

 現在、日本で生活をする外国人を対象に、民間賃貸住宅の借り方等についての情報提供を目的とした外国語パンフレットが作成され、インターネット上においても発信されているが、さらに、外国人の入居を円滑に受け入れることができるよう、必要な基礎知識、留意事項、対応方法等を示した「ガイドライン」を作成するとともに、賃貸住宅標準契約書の外国語翻訳を作成し、これらの周知・普及を図るべきである。
 また、外国人の入居、居住をめぐるトラブル等に対応していくため、相談窓口機能の充実を図るべきである。
 特に住宅に困窮することが多い留学生については、その約7割以上は民間賃貸住宅に入居しているが、民間賃貸住宅への外国人留学生等の入居の円滑化をより一層図るため、関係省や関係団体は連携して、民間賃貸住宅や連帯保証人に代わる民間の家賃保証サービスに関する情報提供、指定宿舎確保促進事業や留学生住宅総合補償制度の活用等を図っていくべきである。さらに、公営住宅等公的賃貸住宅においては、現在行われている留学生の入居に向けた取組や他の施策との連携により、留学生の居住の安定が一層図られるよう措置を講ずべきである。