特集 TPP問題

※公共性に鑑み、非会員向けに全文文字起こしを掲載しました(6月6日)。

 「米国主導の協定なのに、なぜ日本が参加したがるのかわからない」 ――29日、参議院議員会館でTPPに関するシンポジウムが開かれ、ニュージーランドとアメリカの反TPP派の識者が見解を述べ、韓国の金弁護士がTPPの先行モデルである韓米FTAの実態を説明した。また、「アメリカ主導の協定であるのに、なぜ、日本がTPPに参加したがるのか、わからない」と、参加者たちは述べた。

■内容/第1部 講演 ジェーン・ケルシー氏(ニュージーランド・オークランド大学教授)、ロリ・ワラック氏(米国・パブリックシチズン貿易担当)、金鐘佑氏(韓国・弁護士)
第2部 シンポジウム/コーディネーター首藤信彦氏、パネリスト ジェーン・ケルシー氏、ロリ・ワラック氏、金鐘佑氏、原中勝征氏(元日本医師会会長)、篠原孝氏(衆議院議員)、榊原英資氏(元大蔵省・青山学院大学教授)、孫崎享氏(元外交官・評論家)

■主催 TPPを考える国民会議

■詳細
 http://tpp.main.jp/home/?p=1309

シンポジウム後に行われた記者会見の動画記事はこちら→
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/82297

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 冒頭、TPPを考える国民会議の原中勝征氏が、「4月に渡米し、米側担当者と会談した。前のシンガポール会議で、新しい参入国には、新しい提案や要求は一切、認めないと決議されている。われわれは『お金だけで人間の価値が決まっていいのか』と、アメリカでの記者会見で話した。ワシントンポストは、それを4段抜きで報じた。日本のマスコミも大勢、その場にいたが、日本では1行も掲載されなかった。自民党は、総選挙前までは、TPP絶対反対と表明していた。TPPを考える国民会議にも、二百数十人の自民党政治家がいたが、安倍政権になったら、すぐに脱会した」などと語った。

 司会の相原しの氏(前衆議員議員)が「4月22日から25日まで、原中氏、山田正彦氏、首藤信彦氏らがアメリカに調査にいった。安倍総理は、例外品目を勝ち取れると言うが、アメリカでは『日本が譲歩し、すり寄ってきた』と報道されている」と話し、講演に移った。

 ジェーン・ケルシー氏が登壇し、「TPPは相互の国家にとっても、国民にもよくない。安倍首相は『今、参加すれば指導的立場に立てる』というが、TPPはアメリカ企業のメリットのためにある。次回はマレーシアで、7月15日~25日の間で行われる。目的は、交渉を10月に妥結させること。日本は、最後の2日間に参加できることになっている。日本は、その期日を変えて交渉できるように要求したが、答えはNOだった」と話した。

 続けてケルシー氏は、「18回目から交渉に参加するというのは、それまでの交渉経過を見ないで入るということだ。すでに決まった交渉を知らずに、また合意が成立したものは無条件で受け入れて、再交渉はできない、ということ。一体どうなっているのか? 日本政府が合意したことには、異例の譲歩が見られる。たとえば、車では排ガス規制を緩和し、かなりの台数のアメリカ車の輸入の合意がされたといわれている。アメリカは車の関税をはずすというが、それはTPP合意の後、最後の最後にするという条件になっている.

アメリカとオーストラリアの合意を見てみると、18年間というものもあるが、例えば砂糖関係の製品については(米国が)決して関税を除去することはないといっているものもある。ということで、日本がいま「約束を実施する」といっても、米国は18年経っても、あるいはもう決して約束を果たすことはない可能性すらあるんです」とTPPの不平等さを説明した。

 さらに、「日本にしかない技術的な優越性にも、介入できるようになっている。そのほかに流通、小売り、JA、農産物、その流通、公共事業、運送、共済などは、日本とアメリカの2国間だけで、交渉される。アメリカは、すべてこれらの交渉が妥結しない限り、アメリカが満足するまでは、日本にはTPPを実行させない、と言っている。自民党が主張する6項目の聖域は、アメリカの公表するものには含まれていない。ニュージーランド貿易担当大臣、オーストラリアの担当者も、聖域6品は認めないと言っている」と述べた。

「ISD条項については、オーストラリアだけがNOと言った唯一の国、とリークされた。さらにアメリカは、金融危機への規制、最低賃金や労働者の基準、原子力発電の撤廃、気候変動の対策、民営化の逆行など、まったく貿易と関係ないことへも横やりを入れて、合意後の再協議はしないと言う。郵貯は言わずもがな、政府の地方事業への補助金も狙う。郵貯、かんぽ、農林中金、共済など、すべてに関わる問題だ。円安誘導への規制の要求、金融サービスでは透明性のみならず、グローバルな金融危機への規制も押しつけようと目論んでいる」と話し、ケルシー氏は講演を終えた。

 ラルフ・ネーダー氏主宰の消費者保護団体パブリックシチズンの弁護士、ロリ・ワラック氏は「TPPのベースになったNAFTA(北米貿易協定)に対して、アメリカ人は、とても批判する。アメリカ国民もTPPには反対だ。TPPには、アメリカから、2つの環境団体、労働組合16人、企業600社が交渉人にアドバイスをする。アメリカ通商代表部のマイケル・フロマン氏はCITI銀行の元役員、IP(知的財産権)担当交渉人は製薬会社の人間だ。つまり、貿易交渉、協定を、アメリカの大企業が、新自由資本主義の目的をもって交渉する。貿易協定の冠をかざした、大企業の侵略だ」と語った。

 ワラック氏は続けて「(NAFTAで)アメリカ人も痛い教訓を受けてきた。500万人の労働者がいた製造業が、19年間で消滅し、4万2000の工場が閉鎖された。最低賃金も下がり、格差が広がり、大卒の仕事がオフショア(国外市場)に移ってしまっている。今、ブーメラン現象という言葉があり、大学進学で家を出た子どもたちが、大学を卒業すると就職できずに実家に戻ってくることを言う。また、食品の安全も、NAFTA締結後、輸入が65%増え、食の安全基準の問題が頻発している。そして、小規模農業従事者が20万人も失職した」とTPPの危険性を指摘した。

 「この20年間、NAFTAで4億5000万ドル相当の訴訟が起きている。水、ゾーニング、木材、ライセンスなど、あらゆるもので裁判になっている。アメリカ50州の議会、主に共和党で、ISD条項に反対するというが、オバマ大統領は批准するだろう。また、アメリカは『われわれが中国に対して一致団結するにはTPPしかない』と誘う。その一方、中国にも声をかけているダブルスタンダードだ。私たちが、歌舞伎ダンス声明と呼んでいる日米首脳会談だが、安倍バージョンとオバマバージョンがあって、アメリカ議会は、オバマバージョンしか知らない」。

 ワラック氏は「安倍首相のいう聖域6項目の要求を知らないアメリカ議会は、日本が、すべてを譲歩して参加するのだと思っている。アメリカ議会には、(そんなに参加したい)日本は他の小国と同じに扱われたいのだな、と思われている」と述べた。その上で、「悪い流れだが、これは止めることができる。TPPを魚にたとえると、陸に放置した魚はだんだんと臭いにおいを放ち始める。これはドラキュラ戦略。TPPを太陽にかざして、人の目に触れさせることだ。国民に訴えかけ、一致団結して戦うことができると、私は確信している」と締めくくった。

 次に金鐘佑氏が登壇し、韓米FTAについて現状を話した。「米韓FTAが締結して1年がたった。締結前、懸念する声がとても強く、反対があった。中でも、BSEとISD条項が大きな争点だった。コメに関しては開放しないことになっていたが、いつまで続くかは不明。1年間で、米韓FTAが、韓国にどれだけの成果をもたらしたかというと、輸出が大きく増え、輸入は予想ほど伸びなかったという結果だ。日本がTPPに入ると、日本の輸出輸入が増える可能性は大いにあるが、農産物の輸入を防ぐことは難しい」と話した。

 金氏は続けて、「また、ISD条項は予測不可能だった。公共的紛争を、国外の裁定に預けるわけだが、これらを裁く専門家は15名で白人のみ。アジア人はひとりもいない。韓国は1960年代に、ISD条項に似たエクシード条約を結んだが、一度も紛争を起こされたことがなかった。それを(政府は)米韓FTAの締結でも、力説してきた。ところが、昨年、ISD訴訟を起こされた。現在、アメリカ、イギリス、フランスから1名ずつ入って、裁判部が構成され、ニューヨークでISD裁判が行われる。専門家は韓国が負けると言うが、韓国政府は120%勝つと言っている。もし、韓国が負けたら、ロンスターに天文学的賠償をしなければならない。それは、国民が負担することになる」。

 「TPPは、公共政策をまったく変えてしまう。米韓FTAが締結した当時、韓国国会で、批准同意案が議論された。その際、議会内で催涙弾を投げた議員がいた。『米韓FTAで、国民がこれから流す涙を、その責任がある国会議員が先に流すべきだ』という理由だった。日本は、そういう変化に対応できますか」と問いかけた。

 休憩後、元衆議院議員の山田正彦氏がスピーチをした。「原中団長、舟山やすえ参議院議員らと渡米し、カトラー通商代表と会談した。その席で、日本では農産物などの聖域は認められる、と言っているが、本当に6項目の聖域が認められるのか、と確認した。すると、長期ステージで関税ゼロにする、とはっきり言われた」と話した。

 次に、首藤氏がコーディネーターを務めるシンポジウムが始まった。最初に衆議院議員の篠原孝氏が発言した。「ワラックさんに。交渉参加までに、90日間の手続きというが、その間に審議や採決があるのか。猶予期間は、なぜあるのか。次に金弁護士に。韓国の状況は3、4年後に判断すればいいというが、ISDの再交渉はどうなっているのか。ケルシー氏には、アメリカが例外除外で、先走って適当なことを言っていることに、ニュージーランド、オーストラリアはどう思っているのか、聞きたい」。

 まず、ワラック氏が「90日間ルールは形式的なことで、オバマ政権では、かつて決まっていたかのように言い、審議も採決もない。日本にとっては、侮蔑的なことだ。つまり、時間稼ぎ。日本が参加してくる前に、いろいろな交渉を済ませておきたいからだ」と答えた。

 金氏は「韓国の最高裁判所において、ISD条項は、韓国国内での司法主権を侵す恐れがあるため、再交渉の必要性が言われ始めた。現在、別にタスクフォースを作り審議しようとする動きがある。だが、そのタスクフォースのメンバーには反対派が入っていないので、ちゃんと審議されるか、はなはだ疑問だ」と話した。

 ケルシー氏は「ニュージーランド貿易相は、農産物、乳製品に関して、充分なアクセスがなければ交渉の席を立つ、と言っている。ニュージーランドの乳製品に関する市場アクセスに関して、アメリカは、すでに3年間の交渉を経ても、いまだ認めていない。過去の交渉の経緯を見ても、アメリカが、乳製品の市場開放をすることはあり得ない。それなので、貿易相には、撤退しようと勧めているが、躊躇している。また、オーストラリアの生産関連団体でさえ、米豪FTAは最悪の協定だと言っている」などと答えた。

 原中氏は「NAFTAで、アメリカ南部では、メキシコから時給200円の600万人の単純労働者が入り、自国民の雇用が失われた。ある会社は、アメリカ人労働者に半分の給料で働いてくれと言ったらOKされず、メキシコに会社を移した。TPPに加盟したらILO、WHOの条約、さらに司法までも、TPP条項が上にたつ。そして、国民の生活が崩れる」と語った。

 孫崎享氏が「ISD条項が採用されると、国家の主権が侵される。ワラック氏に訊きたい。アメリカはISD条項が、適応されないようになっているから、米議会議員が反対しないのではないか。ところが、EUとの交渉でISD条項が組み込まれると、話は変わるのではないか」と尋ねると、ワラック氏は「ISD条項は、アメリカにも例外なく適応される。州単位で争われた経緯もある。議会で、まだ問題になっていないのは、アメリカでは、まだ大きな支払いが生じていないからだ」と応じた。

 榊原氏は「TPPになぜ参加するのか、わけがわからない。関税撤廃、農業問題だけではなく、21分野の交渉だ。そんなものが10月までに妥結するわけがない。となれば、決まったことを押しつけてくることになる。これは交渉ではない。アメリカやオーストラリアがTPP推進なのは、東アジアの成長メリットを得たいからだ。東アジアの統合は進んでいる。日本は韓国、中国などの域内貿易比率が60%を越えている。この日本のメリットを、アメリカやオーストラリアが欲しがっているのだ」と述べた。

 さまざまな意見交換のあと、篠原氏が「TPPはいかがわしい。日本の制度を根底から変えてしまう」と訴え、閉会となった。【IWJテキストスタッフ・関根/奥松】

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―― 以下、全文書き起こし ――

【第一部】

相原史乃氏「皆様、大変お待たせをいたしました。TPP国際シンポジウム。只今より開会をさせていただきたいと思います。早速でございますが、TPPを考える国民会議、代表世話人・原中勝征より、開会の挨拶をいただきたいと思います。原中先生、よろしくお願い致します」

原中勝征氏「本日の国際シンポジウムに、これだけの皆さんにご参加いただきまして、本当にありがとうございました。これだけ、将来の日本がなくなってしまうんじゃないかという、本当に難しい大切なこのTPP問題を、ブラックボックスと我々は言っておりますが、内容も知らず、また国民に対して、どういうものであるかという国民の審判もぜんぜん伝わらない。

 そんななかで、こんな重要なことが進められていいのか、ということを考えまして、私たちは、4月23日、アメリカに渡りまして、アメリカ側のいろんな担当者とお話をして参りました。

 その時に感じたのは、日本が自由民主党の有志ですら、政調会、あるいは外務、経済関係の議員の方々が出した、6項目を入れなければ脱退すべき、というような意見。全国の知事会が反対した反対声明。議長会、あるいは市町村会長。いろんな団体が、このTPP問題に対して、疑念を持っているということを英訳して持って参りました。

 本当に、アメリカの議員の人たちが、こんなに反対してるなんてこと全然知っていない。いろんなことが分かったのは、たとえばシンガポールの会議の時には、新しい参加国に対しては、新しい提案とか、要求は一切認めないということが決議されているわけでございます。

 オバマ、安倍会談でも、安倍総理はなんの条件を付けないで、引き受けるというようなことが約束されている、というようなことが我々には全然通じていない。

 こういういろんな秘密の裏に、内容も分からず、あるいは、これから日本が聖域として入れるような内容も認められない。こんなことでいいだろうか、ということを私たちは本当に感じてきたわけでございます。

 私たちは、日本の2千年の歴史が、コメを中心として生まれてきた。これが、単なるお金持ちかどうかという、お金だけで、人間の価値まで判断されるような社会になっていいのか、というようなことを記者会見で申し上げました。

 ワシントン・ポストは4段抜きで、それをきちんと書いて頂きました。そこに、日本人の記者もいっぱいおりました。しかし、日本では、一行もそれが載っていない。私は、こういう異常な日本の状態が、本当に日本の民主主義だろうか。

 政府というのは国民の幸せを考えて、国民の総意を受けて、政治をすべきものだというふうに思っております。自由民主党は、さきの衆議院議員選挙においてのマニフェストのなかに、TPPは反対するということを明記されております。

 ところが、この会にも二百数十人の自由民主党の人たちが入っておりました。安倍政権ができた途端、同時に全員が引き上げてしまいました。なぜ、政権ができた時と、自分が野党にいた時、国民に対する国会議員としての態度が変わるんですか。

 私はアメリカに行って感じたのは、アメリカの上院議員も、下院議員もぜんぶ自分の意見を持って、行動しております。党議拘束がそんなに大切かどうか。やはり一人一人が国民に選ばれた人であるならば、自分が国会議員としての義務を果たして頂きたいというのが、私たちの偽らない気持ちでございます。

 今日は、TPPが締結された最初の、アメリカもまだ入ってない時代から、最初から入っていられたニュージーランドのケルシー先生、それからアメリカで現在いろんな情報やなにかをきちんとつかんで、真面目なと言っては失礼ですが、正しい行動をとって市民に報道しているワラックさん。それから、私たちはTPPよりも、もっとゆるやかなFTAとアメリカと締結した韓国が、それですらどういうふうに今、追い込まれているか。

 その三人の実際の意見を聞きながら、私たちの、TPPがどういうふうな影響を与えるかということを考えて、2000年の歴史を作ってくれた先祖様、それから、これから私たちのあとを日本を司っていく子供や孫や、もっともっと先の人たちのために、いま生きている私たちがどういうことをしなきゃいけないか。

 それをきちんと考えたうえで、今日のシンポジウムが実りあるものになっていただければありがたいと思います。本当に、今日はこの会に、これだけ多くの方が参加して頂きまして、本当にありがとうございました」

相原「原中先生、ありがとうございました。本日、私、司会を務めさせて頂きます前衆議院議員の相原史乃と申します。よろしく申し上げます。ありがとうございます。

 原中先生のご挨拶にもございました、先日、4月22日より25日まで、原中先生、そして山田正彦先生、そして首藤信彦先生を始めとする諸先生方が、アメリカのほうに実情の調査に行ってきて頂きました。

 そのことで、日本では安倍総理が、日本があたかも例外品目を勝ち取れるかのような報道がなされているなかで、実際は日本が譲歩し、参加を表明してきたと、アメリカのワシントン・ポストですとか、マスコミによる報道がなされているということが、その使節団によって分かるのが日本の現状でございます。

 この危機感のなさ、そしてその先に、今日のシンポジウムを通しまして、多くの皆様に、このTPPの問題点、多くの多分野にわたります問題点を知って頂きまして、拡散をいただきますように、心より祈念申し上げまして、開会させていただきたいと思います。

 早速でございますが、第一部講演は、ニュージーランドのオークランド大学法学部のジェーン・ケルシー教授より講演を賜ります。それでは、先生。よろしくお願い申し上げます」

ジェーン・ケルシー教授「今日、ここに来ることができて大変嬉しく思っております。日本の議院に戻ってくることができまして、また友人の皆様、TPPをめぐる話し合いの中で、私には多くの友人ができましたが、今日またここに来ることができましたことを大変な喜びとするところです。

 というのは、私たちは同じような懸念を共有しております。TPPというのは、私たち双方の国のためにとっても、あるいは双方の国の国民にとっても良くないという懸念を共有しているからであります。

 日本の安倍総理が、いまTPPの交渉に参加するべきだという論陣を張った時に説明として挙げましたのは、日本が今参加すれば、主導的な役割を交渉において取ることができるという理由を挙げておりました。

 ですので、まず安倍総理が言ったように、TPPに交渉に参画することは主導的な役割をするということが、それがなぜできないかというところから話を始めます。

 まずTPPというのは、アメリカがアメリカの企業の利益のために作っているという枠組みです。ということですので、アメリカの交渉担当者も、アメリカの大統領は、ましてや日本がアメリカの野心に立ちふさがることなど許すはずがありません。

 まず、この交渉に参画しようとした時に、日本が受けた扱いをみれば、そのことははっきり分かります。

 3年間の交渉が続いておりまして、17回目の交渉ラウンドがちょうどペルーで終わったところです。次のラウンドはマレーシアで、7月15日から25日のあいだに行われる予定になっております。

 目的は交渉を10月に完結させようということです。日本は最後の2日間、マレーシアにおきまして、この交渉に参加ができると言われております。

 というのは、アメリカの議会の通知義務がそこでもう終わって、そして参加できる立場になるからです。

 日本はその期日を変えて、交渉に参加できるようにして欲しいとアメリカに言ったんですが、答えはノーでした。

 ですので、日本がようやくのこと最後の2日間、交渉に参加できる。その18回目になって、ようやくこの日本が参加できるときになってみると、日本は全く今までのテキスト、18回にあたって、交渉されて話し合われてきた文書を見ることなく、参加するという立場になってしまうのです。

 しかも、まったく今まで文書すら見たことがないのに、すでにそれまでに交渉に参加していたところの間で合意が成立したものは無条件で、それは受け入れる、ということで交渉に出て行くことになるんです。

 しかも、それまでに合意されていることについては、再交渉はできないとされているのです。

 しかも、すでに発表されているところによりますと、この前終わったラウンドと7月のラウンドとのあいだに、追加的なラウンドを行ないまして、なるべく多く、日本が交渉に参加できる前に追加的に合意をしよう、ということが言われています。

 つまり、こういった交渉に日本が参画する上で、どんな役割を日本が求められているかということを、今の話が如実に物語っていると思います。

 そして、もちろん日本が交渉に参加することができたとしても、日本の議員の人でさえも、その合意ができなければ、交渉の対象になっている条約の文書を見ることはできません。

 また、日本の一般国民はもちろん見ることはできません。

 そして、その交渉が妥結してから、あるいはもし、その交渉が途中で中断された場合には、それから4年間経たなければ、その文書の内容というのは見ることができないのです。

 ということは、こういった、まだ期日ははっきりしていませんけれども、その無期限のあいだ、その企業や他の参加している国の企業や政府が交渉している内容というのは、秘密裏な交渉で行われている内容であるのに、それが全て妥結する、交渉が終わるまでは見ることができないという立場に置かれているのです。

 それは、全ての交渉に参加している諸国の状態がそうなっています。

 しかし、特に日本にとって、日本がこのTPPの交渉に参加するということにあたって、課せられた条件というのは異例な条件だと思います。

 そして、安倍総理とオバマ大統領とのあいだで、合意された内容として公表されている内容というのは、アメリカで公表されている内容とは、まったく違ったものになっています。

 日本では、いくつか農業の分野では例外的な部分が許されると伝えられています。

 しかし、アメリカで公表されたものには、そんなことは書いていません。

 アメリカでは、日本は日本の保険、新たながん保険ですとか、その他の医薬に関する新製品は発表するということはしないと言われています。

 それは完全に競争の条件というのができた時にならなくては、そんな新しいものは作らないというふうに、アメリカでは言われているんですけれども、それは日本の発表されたものには、そんなことは書いてありません。

 では、本当にいったいなにが起きていると言うんでしょう?

日本政府が合意した内容を見てみますと、すでにもう異例の譲歩がなされていることが分かります。

 通常の排ガス規制に、かなわなくてもいいという特別な合意のもとで、かなりの台数のアメリカの自動車の輸入を許すというような合意がされたと言われています。

 しかし、アメリカのほうは、日本の自動車にかかる関税というのを最後には外すとは言っていますけれども、その関税を外してくれるというのは、TPPの合意ができて、本当に最後の最後に関税が外される、そのときになってようやくということが条件になっているんです。

 そして、アメリカとオーストラリアの合意というのを見てみますと、18年間というものもありますけれども、他の製品、たとえば砂糖関係の製品については、もう決して関税を除去することはないと言っているものもあります。

 ということで、日本はいま約束を実施するということを言ったとしても、アメリカのほうは18年経っても、あるいはもう決して約束を果たすことがない可能性さえあるんです。

 また、日本はさきほども言いましたけれども、がん保険ですとか、医療保険。保険分野でもいくつか約束したことがあります。

 また、日本はこのTPPに交渉に参加をするといったところから、2種類の交渉になっているということです。

一方の交渉では、29の章、部会ぜんぶを全ての参加国をカバーするというものが1つの交渉です。

 2つ目のパラレルの交渉がされているというのは、日本とアメリカの間だけの交渉です。

 一方では、全て自動車ですとか、そういった問題点を包括していますが、そちらの方では、アメリカ側が日本の自動車をめぐって、より発言権が強まるような形で交渉がされています。

 たとえば、アメリカの自動車を日本で販売する上で、アメリカに不利になっているというような販売網を、もっとアメリカに開くような、アクセスがあるような形の交渉です。

 アメリカ流のやり方を許すような認証の仕方ですとか、その技術的な交渉をするようなこと。

 また、自動車の、よりクリーンなテクノロジーですとか、新たなテクノロジーを入れようということに対する制約ですね。

 そして、また日本メーカーが持っているような、金融的なインセンティブで外国のメーカーにはないようなものも、それもアクセスできるようにしろということも。

 つまり、アメリカと日本の自動車ということについて、まったく別個の、他の交渉とは違ったものが存在しています。

 また、アメリカが非関税だと言っているもの、つまり、日本の国内の規制ですとか、政策というのもあります。

 こういった交渉でターゲットとされるような、日本のやり方、規制だとか制約だとアメリカが言っているようなものというのは、アメリカの貿易の障壁だと言っている、そのページに行けば、全てどんな苦情が申し立てられているかということを読むことができます。

 つまり、アメリカや外国の企業が日本で業務を始めるということについて。

 また、あるいは小売りやスーパーマーケットといった流通業。また、公益事業、JAを通じたような農産物の流通、皆さんの税金が使われている地方や、地方政界における政府の調達部門、日本の郵貯、保険、それから配達、速配便、他の共済などのような協同組合。

 こういったこと全てが日本とアメリカとの間だけで、TPPの交渉とは別トラックで交渉されることになります。

 しかし、アメリカの側が、日本がこういった別個のトラックで行われていること全てに妥結するまで、そしてそれを実施するまで、しかもアメリカが満足のいくような形で実施するまでは、TPPは法律的には実行させないと、効力を持たないと言っているんです。

 ということで、安倍総理には大変申し訳ない言い方になってしまいますが、こういった扱いをされているということは、日本がTPP交渉において、リーダーシップ、指導力を発揮するということには到底聞こえません。

 つまり、アメリカが交渉の条件をつけるから、成果を握るまで全てアメリカが主導です。

 そして、日本の自民党は、TPPに入るときに、公けに記された6項目、TPPに関して守りぬくべき国益というリストを出しています。

 もちろん、当然ながら、その一番目は農林水産品における関税の、これは対象としない、ということを言っています。

 しかし、さきほど申しましたように、これはアメリカで公表されているものには、この項目は入っていません。

 ここで皆さんに一つ、アメリカがいかに農産物の交渉について偽善的であるかという話をひとつお話します。

 アメリカは、アメリカの市場アクセスについては、二国間でTPPにおいては交渉すると言っています。

 ということは、違った国に対しては違ったことを言うことが可能になります。

 そして、またFTAをすでに持っている国とのあいだでは、こういった農産品についての交渉は、再交渉の対象にはしないとも言っています。

 ということで、アメリカはオーストラリアに関しては、こういった理由を元に、砂糖についてはなにもアクセスはさせないと言ったんです。

 そして、それは再協議することを拒否しています。

 つまり、まだ合意ができていない、ニュージランド、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、日本との間でしか交渉はしないと言っているわけですよね。

 アメリカは、このように1つのルールでやっているわけではないのに、日本はまったくその例外は認めないとアメリカに言われているんです。

 アメリカが例外を日本に与えるとしても、私はニュージーランドの者です。

 そして、またニュージーランドの首相、貿易関係の大臣ですけれども、日本の記者クラブで発表していますけれども、まったく例外は認めないと。農産品については認めないということを言っていますね。

 オーストラリアも同じ立場を貫いています。

 ということは、この自民党が言っている最初の条件ですね。この農産品についてのことは、もう果たせるわけはありません。

 2番目ですが、自動車等の安全基準、環境基準、数値目標等です。

 この排ガス等も入っているこの2つ目なんですけども、これはさきほども申しましたけれども、アメリカは拒否権を行使できる、別個のパラレルな交渉の対象とされています。

 ということで、自民党が出している2つ目の項目、これも実施はできないです。

 3つ目ですが、国民皆保険、公的薬価制度です。

 特に、この重要ながん保険という点については、日本は既に譲歩を迫られています。せざるを得なくなりました。

 しかし、日本における国民皆保険制度というのは、アメリカの保険会社から見ると非常にこれはうまみのある市場だと見られているんです。

 金融サービスについての部門では、特別な附属文書がこの保険については付されているということです。

 そして、またリークされている医薬品関係の文書によりますと、買い入れができるようにしようということもなにか言われているということも聞いています。

 これは、知的財産権ですとか、特許ですとか、ジェネリック医薬品にも関わってくる大きな問題です。

 そしてまた、非常に皮肉な名前ですけれども、トランスペアレンシー。透明度を高めるというチャプター、そういったセクションにも関係しています。

 つまり、公的な医薬品の買い入れについて、もっと外国の企業も入れていかなくてはいけないという、そういうことにも繋がります。

 ということで、大変申し訳無い言い方ですが、第3番目の自民党が出している公約、これも無理です。

 4番目の食の安全安心の基準ということも、すでにこれもBSE、狂牛病の基準についての変更が行われたということで、すでに損なわれています。

 そしてまた、バイオ企業が遺伝子組み換え食物について、それを表示する義務がないというような、そういったことも言っています。

 ということで、消費者の食の安全もTPPによって損なわれる部分が多々あります。

 たぶん一番恐ろしいというか、危険な部分というのは、規制上の一貫性を損なうものです。

 これは、各国の政府が、基準として証拠を出すべきです。一番、一般の人の利益が損なわれないものを選ぶという、その証拠を出すべきだというのに関わっている問題なんです。

 しかし、食の安全をめぐる全ての政府の政策ですとか、決定ですとか、規制について、外国企業も影響力を及ぼせるということも言われているのです。

 ということで、4番目の食の安全安心の基準も損なわれています。実施できません。

 5つ目なんですけれども、日本がこのオフショア(※1)で、投資家の利益が損なわれるようなことがされないようにと、国の主権を損なうような投資についての条項です。

(※1)海外(goo辞書より)

 このISD条項については、オーストラリア政府だけが、今までリークされていることに基づきますと、ノーと言った唯一の国です。

 ということで、他にいくつか、環境とか、食の安全とかいうところでは、若干のアメリカ側にも揺れが見られるところがあるんですけれども、投資に関しては、アメリカはまったく頑として譲歩するという態度は見せておりません。

 こういったアメリカの強い力、異例な分野に見られています。

 金融危機に関連する規制もそうです。

 最低賃金の条項ですとか、それからその労働者の安全といったところの、規約さえ損なうということがあります。

 原子力発電所の段階的な撤廃ということについても。

 気候変動についての対策についても、です。

 あるいは、民営化を逆行させるということについて、です。

 まったく貿易、通商とは関係がないところでも、たくさんのことが実は言われているんです。

 しかも、これはアメリカにとっては、もう再協議はしないと言っていることなんです。

 ということで、5番目も、これも当てはまりません。

 6番目の政府調達、金融サービス業のなかで、アメリカにとってなんといっても、郵貯。これが非常にアメリカが狙っているところですね。

 また、地元の生産やサービスを利するような形で中央政府だとか地方政府が支出してくれるお金もアメリカは非常に狙っています。

 つまり、この日本のなかで、郵貯ですとか、簡保ですとか、農林中金ですとか、共済ですとか、そういったところ全てに関わる問題です。

 また、アメリカの議会の中では、アメリカがいうところの為替操作、つまり、日本が円安誘導をしているということについての何らかの規則を設けるべきだというようなことも言われています。

 金融サービスの中では、アメリカは日本のこの金融セクターを銀行ですとか、そういったところ全て、オープンにして欲しいと言っているだけではないんです。

 つまり、グローバルな金融危機が起きた時のための規制も押し付けて、日本の手を縛ってしまおうということも目論んでいます。

 もし、このISD条項と絡んで、ということですね。

 ということで、この公約に記されている6項目も、これも当てはまりません。

 では、問題は、なぜ日本はこんなことをしてるんでしょう?」

相原「ジェーン・ケルシー先生、ありがとうございました。それでは、お時間の問題で、大変恐縮でございますが、さっそく米国のパブリックシチズン(※2)、貿易担当のロリ・ワラックさんより、ご講演賜ります。よろしくお願いいたします」

(※2)パブリックシチズン

ロリ・ワラック氏「今日は皆様、ご招聘いただきましてありがとうございます。昔からのご友人の皆様、また今回、新たに友人となっていただいた皆様、来ていただいてありがとうございます。

 ラルフ・ネーダー氏(※3)が率いる、いわゆる消費者を守るための団体でありますパブリックシチズンというところの弁護士をしておりました。

(※3)ラルフ・ネーダーRalph Nader:1934年2月27日生まれのアメリカの社会運動家で弁護士である。環境問題や消費者問題や民主化問題を活発に行っている人物である。自動車業界に対しての消費者運動などで有名。また、過去に何度もアメリカ大統領選挙に立候補している。(はてなキーワードより)

 消費者の権利を侵害するという意味では、貿易協定を使ってアメリカの大企業がいろいろなことをしてきたというところで、貿易に我々は絡むようになりました。

 40年間戦って参りまして、食の安全、医療を担保する、情報へのアクセス、そして安定した銀行業というものを求めているなかで、我々が仕方がなくこの貿易問題というものに関わらざるを得なかったという経緯がございます。

 『TPPにおいてアメリカは日本から何を得ようとしているのか?』ということで、語るように言われました。

 ただ、その質問になりますと、どのアメリカのことを言っているのかと。

 アメリカ国民というアメリカですか?

基本的に、民主党も共和党も、独立系の無党派層も、基本的にアメリカのやっている貿易協定、この20年間を見ていても、どの政党のやっているものに関しても支持率は低いわけです。

 TPPのベースとなっております、NAFTA北米自由貿易協定というものはノーモアということが、唯一アメリカ人が合意し、お互いに共有しているものであります。

 こういった貿易協定のモデルによって、日常的に痛みを被っているからこそ、こういった政治的に分断されている国においても、ノーモアというところではコンセンサスを得ています。

 明らかに国民の願いではないんです、TPPは。アメリカの大手企業のやろうとしていること、思惑でございます。

 ですから、このアメリカの大企業がしようとしていることは、アメリカの国民にとってもよくありませんし、日本、マレーシア、チリ、ペルー、どの国民にとってもいいことではございません。

 なぜ、私みたいな人間がここに来て、アメリカの企業に問題があると言っているのか?

2つの環境団体の代表、また労働組合からは15人、そしてアメリカの企業の600社から交渉に当たる人たちに対して、さまざまなアドバイスを提供しているというような環境です。

 大企業のアドバイザーといわれる顧問の人たちが600人います。そしてアメリカの通商代表のマイケル・フロマンさんという人は元シティバンクの人間であります。

 遺伝子組み換えのGMOをやっていますクロックライフという大企業から、サリキという農業担当の交渉人は来ております。

 IPに関してやっている人たち、知財に関してやっている人、担当交渉の人間は製薬業界の出身でございます。

 ですから、貿易交渉、また貿易協定という場を借りて、アメリカの大企業がこの交渉という形で、この人たちにとって代わってやろうとしている大きな問題、ネオリベラル的なアジェンダを、持ってやっているということが言えます。

 これは、大企業の侵略と言ってもいいわけで、トロイの木馬と考えていただければ、名目は貿易協定でありますけど、本質は違うということがお分かりいただけると思います。

 TPPのなかには29の分会があるわけなんですけれども、貿易に関するのは唯一5ということになります。その他は違います。

 今、安倍総理が国民の皆さんに言っている公約というのは、クリントン大統領が当時20年前、我々にNAFTAについて言っていたこととまったく同じ、そっくりそのもの、同じものを言っていらっしゃいます。

 希望が持てる未来のために、効率をあげて、雇用を促進し、そして成長を促すものであるという定義をしています。

 友人の皆様方、アメリカを見ていただければ分かりますけれども、私たちも、たいへん苦い経験、または悪い思い、そしてこの痛い教訓というものを経験して参りました。

 ですから、500万人製造業に従事していた人間が、19年間でいなくなってしまったということは、4人に1人分の仕事が、製造業では無くなっていったということになりますし、工場の数にいたしまして、42,000工場が閉鎖されたというような状況があります。

 でも、最低賃金においても、よい結果はなく、格差がどんどん広がっております。どんどんオフショアで大卒の仕事までオフショアに行ってしまっているということで、大学に行ってコンピューターエンジニアになっても仕事がない。アクチュアリー(※4)になっても仕事がないということで、いまブーメラン現象というふうにアメリカで呼んでいますけれども、ようやく高校を卒業して大学に入って、家を離れた子どもたちが、大学が終わると仕事がなくて、また家に戻ってくるという現象が続いております。

(※4)アクチュアリーは、伝統的には生命保険会社の業務に不可欠な適正な保険料計算や合理的な積み立てを行う専門職(日本アクチュアリー協会HPより)

 そしてまた、食品安全のほうにいきますと、食品の輸入というのは、このNAFTAが締結されましてから65%輸入が増えているわけなんですけれども、もちろん、我々も輸出もしていますけれども、アメリカの食品安全基準に合わないものが入ってきているがゆえのトラブルというものが頻発しております。

 そして、小規模の農業従事者という20万人の人たちが仕事がなくなっていると。さまざまな農業品に関しての価格の乱高下、そして輸入品が増えてきているということで、仕事を失っています。

 ただし、大企業間のなかで、その食品を実際に消費している部分と、サービスセクターというところでの大企業のグループ内でのやり取りでうまく数字を操作して、あたかも価格が伸びているかのような操作というのもできます。

 医薬品ということで、薬もこの20年間で我々はNAFTA、WTOに入ってから、どんどん薬の価格が上がってしまっています。今度、貿易協定という名目を持って、医薬品の値段を上げる、吊るしあげるという大企業の思惑を海外にも展開しようとしているわけです。

 さきほど、投資ルールにつきましては、ニュージーランドのケルシー教授のほうからお話がありましたけれど、このオフショアリングに関しても、どんどん安い賃金のところに持っていくことができるようになったという環境があります。

 そしてまた、様々な企業が標的になるということも、それによってまた露出が高まりました。

 公的な意味での関心の高い部分において、裁判沙汰になってしまっているのが、この20年間のNAFTAで、4億5千万相当の金額の様々な訴訟案件に繋がっています。それは水税であり、または区画ゾーニングであり、木材、またはライセンス、免許の部分であり、水の使用などについて、様々な訴訟になっています。

 TPPはなかでも最も危険な領域とも言えます。

 アメリカが主張しています、このISD条項というものを、日本が飲むということになりますと、我々のリサーチでは、アメリカの企業が日本で1,400社ぐらい登録されておりますけれども、TPPが日本政府の後押しを受け署名され決まった際には、アメリカ企業がISD条項をベースに日本政府を相手に訴訟を行なうことができる立場になるということが分かります。

 tradewatch.org(※5) というところに行けば、どういった投資家がこれから日本をアタックしようとしているか、その地図もありますので、ぜひご参考までにtradewatch.org というところに見ていただければ、関係者7万人のリストがあります。

(※5)PUBLIC CITIZEN GLOBALIZATION & TRADE

 こうやって、企業の攻撃に関しましては、アメリカ、カナダ、メキシコ、グアテマラ、どういった攻撃がなされたのか、環境問題について、またその健康を害する問題について、サービス問題について、この資料をご覧いただきますと、そのなかに具体的なところが記されておりますので、ぜひ皆様のほうでもお読みいただければ、幸いでございます。

 弁護士の先生方におかれましては、50のメモをきちんとそれぞれの案件ベースで持っておりますので、おっしゃっていただければ、共有させていただきたいと思います。

 オバマ大統領はあくまでもTPPを押すと言ってますけれども、アメリカの50州の議会は、ISD反対。主に共和党が反対と言ってますけれども、おそらくオバマ大統領はプッシュするでしょう。

 3本の矢というのはなかなか折ることができないというようなことわざもございます。

 ただ、安倍総理の3本目の矢でありますTPPが日本を壊すということもありうるのではないでしょうか。

 ひとこと、中国について申し上げさせていただきたいと思います。

 真実のことがTPPについて相手国に伝わりますと、だいたい皆さん分かると。しかし、アメリカにおいて、中国と言いますと、中国はね、ということになるんですが。

 中国に対して、みんなで一致団結するのはこれしかないよ、というアメリカの誘いもあります。

 ただし、2つ疑問が湧いて参ります。

 対中国でやろうとしているのに、アメリカは一方で中国にお声がけをして、TPPに入らないかと言ってるわけですから、一緒に入ってしまったら、対中国ということにはなりません。

 元通商代表の方たちが皆、このInsider News Letterを読みますと、ぜひ中国をTPPに入れようと試みていることもNews Letterのなかに書いてございます。

 中国は、2つ目には、なんで我々、こんなものに入らなければいけないのか、と言っているわけですから、我々が問題のルールを、皆一致団結して求めたとしても、基本的に中国はこれを認めるつもりはないわけですから、あまり意味はない、効果はないということになってしまいます。

 歌舞伎ダンス声明というふうに私たちは読んでるんですけれども、さきほどケルシー教授が言っていました日米首脳会談オバマバージョンと安倍バージョンの話ですが。

 アメリカ議会のほうは、基本的にオバマバージョンしか存じませんので、基本的に安倍総理が残していったこの6項目の、ぜひTPPに関して守りぬきたいという、6項目に関してましては一切、聞かされていないわけですから、日本側は全て譲歩して入るんだなという印象でおります。

 最後に、なぜ議会がそういうような結論に至ったかということを申し上げます。

 安倍総理としては、強い日本を取り戻したい、また世界のリーダーになりたい、成長したい、力を付けたいと言っていらっしゃるそうですが。

 経済規模にしまして、世界第3の経済を誇る日本が、アメリカ議会から見れば、日本はTPPに入って、ブルネイ、グアテマラと同じ扱いになりたいんだ、というふうに見えるわけです。

 私が皆さんに申し上げたい。日本の皆さんにぜひうかがいいたいのは、公式文書の閲覧もできない、そして、サインしてからでなくては1個も見ることができない、しかし、見てからでは1つも変更を、1文言たりとも変更はできない。それも10カ国が3年間決めてきた内容というものに関して、全て条件を飲まなきゃいけないと。なぜ、それに同意したいのかということが、よく分かりません。

 ブルネイの場合には、第一日目から、交渉の席についているので、公式文書を見ることができているわけですけれども、日本の場合には、一切それを見ずに、7月24日の日に、その公式文書を見るまで分からないわけですけれども、それでも全て飲んで入るというふうに、なぜ言うんでしょう?

とても、これは悪い流れですし、心配でありますけども、これを止めることができるんです。

 TPPというのは魚になぞらえますと、陸にあげて、そのまま放置していきますと、どんどん臭い匂いが漂って参ります。

 ですから、私たちの言ってるのは、このドラキュラ戦略で、このTPPを太陽のもとに持ってきて、かざして、一般の人にちゃんと見せてあげなくてはいけないということを申し上げています。

 ドラキュラは、夜間ですから、昼間、日中、太陽のもとではなかなか仕事ができない。

 我々は、国民として、その結果に対して変更をかける力を持っているわけですから、私どもは国民に訴えかけて、そしてそこで一致団結して、その真実というものを公の場に出して、こういった様々な大企業の思惑に乗らないように、こういうような条項、内容に対して、きちんと戦うということができるものだと確信しております」

相原「ロリ・ワラックさん、ありがとうございました。それでは次に、韓国よりお越しいただきました金鐘佑(キム・ジョンウ)弁護士より、よろしくお願い申し上げます」

金鐘佑氏「こんにちわ。金鐘佑弁護士です。ここからは韓国語で申し上げます。

 米韓FTAが締結されてから、1年という歳月が流れました。締結前は懸念する声が非常に高くありました。韓国では大変強く反対しました。

 とりわけBSEとISDの問題が大きな争点でした。とりあえず、コメ市場に関しては開放しないということになっていました。しかし、コメ市場は開放しませんでしたけれども、いったいいつまでこれを開放せずにいられるのかというのは不透明です。

 米韓FTAは締結されてから1年2ヵ月が経ちましたけれども、未だに、今後どのようになっていくのかというのを知ることは非常に難しい状況です。

 こちらは韓国政府が発表した、韓米FTA1年間の成果というものです。これは、そもそもアメリカが発表したものを集めたものです。

 この共通した内容は、輸出が大きく増え、輸入に関しては予想よりは伸びなかったというものです。

 これを見ていますと、韓米両国の立場が矛盾していると思わざるを得ません。

 TPPを締結すれば、日本の輸出が増え、また輸入も増えるという可能性は十分にあると思います。

 しかし、農産物の輸入はなかなか防ぐことは難しいでしょう。一時的にそれができたとしても、それがいつまで続くかというのは、不透明です。

 今、韓国が1年のあいだに経験したことで一番大きなことを申し上げますと、投資家仲裁制度。つまりISDの問題、これが非常に広範囲で、予測不可能なものだったという面です。

 これまで政府の政策に関しては、行政訴訟というものが起こされて、国内で、その利益というものが図られてきました。

 ところがISDというのは、このような公共的な紛争を国内の裁判所ではなく、国際的な仲裁手続にかけようというものです。

 また、これらの専門家というのは、ほとんどが白人で、構成員を見ますと、15人しかいません。アジア人は一人もいないんです。

 アジア的な価値というものが、その仲裁判断のなかに取り込まれるということはまったく期待できないということになります。

 韓国は、1960年代にISDに関わるエクシード条約というものに加入しました。

 しかし、これまでにISDというのは、一度も起こされたことがないということを根拠にして、韓国政府はFTAが締結されたとしても、ISDが起こされる可能性はほぼ0%だというふうに説明してきました。

 ところが昨年、米韓FTA締結後に、大韓民国において初めてのISDが起こされました。

 簡単に事件を紹介しますと、ローンスター(※6)という会社が、韓国の外換銀行(※7)を買収して、外換銀行に投資をしました。これは、韓国の法律に違反するものだったので、韓国政府が合法的にこれを規制しました。その結果、ローンスターが、この外換銀行の売買に時間がかかったということで、このISDを起こしたわけです。

(※6)LONE STAR FUNDS 1995年に米国で設立されたグローバル投資ファンド。

(※7)韓国外換銀行

 これに対して、ローンスター側が韓国政府の措置は投資家の利益に反するものだとして、ISDを起こしたわけです。

 実際には米韓FTAを根拠にしたISD訴訟の提起ではなかったわけですが、同一の内容でしたし、ローンスターがこの米韓FTAを根拠にしてISDを起こすということも十分に可能です。

 現在は裁判部が構成された状況です。アメリカ人1名、イギリス人1名、フランス人1名で裁判部が構成されました。もうすぐ、ニューヨークのイクシードでISD裁判が行われます。

 専門家は、韓国がこのISDで負ける可能性があるというふうに見ていますが、韓国政府は120%勝つと言っています。

 もしも、この訴訟で韓国が負けることがあれば、ローンスターに対して、天文学的な倍賞をしなくてはいけなくなるのですが、その賠償額は国民が負担するわけです。

 たくさんの議論の末、韓国の国会は、少なくともこのISD条項に関しては、韓米FTAのなかで修正するか、または削除しなくてはいけないというふうに、その方向で再交渉をするという決議をしました。

 現在、韓国政府は、再交渉を行なう予定だというふうに言っていますが、これはリップサービスにすぎないのではないかと思われますし、また、アメリカがこれに応じるかというのは、甚だ疑問です。

 このように、TPPがもし締結されれば、公共政策の構造がこれまでとはまったく違うものになってしまうわけです。

 韓国も同様ですが、もっとも準備不足なのは、日本政府のように見えます。これまで話されてきたように、秘密主義の問題があります。

 実は、米韓FTAが締結された当時、韓国国会で批准同意案が検討されたんですが、そのときに国会の中で催涙弾を投げた議員がいました。

 あとから、なぜ催涙弾を投げたのか、その意図を聞きました。

 国民が、今後、米韓FTAによって流すことになる涙を、そのことに責任を負うべき国会議員たちが先に流すべきだと考えたということでした。

 日本は、このような変化について準備ができていますか?

以上です」

相原「金先生、ありがとうございました。それでは、各国よりお越しのゲストスピーカーの皆様に温かい拍手をお送りいただけますように、お願い申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、第一部、終了とさせて頂きます。休憩のほうは、大変恐縮ですが、5分とさせて頂きます。ありがとうございます。16時30分より、第二部、開会させて頂きます」

【第二部】

相原史乃氏「それでは、皆様、第二部を始めさせて頂きます。山田先生より一言、ここで賜ります。よろしくお願い申し上げます。山田正彦先生でございます」

山田正彦氏「ケルシー教授、それにロリ・ワラックさん、今日はわざわざ本当にありがとうございます。金弁護士も、向こうから来て頂きました。

 皆さんにひとつだけ、お話させていただきたいと思ってますのは、先般、原中先生が団長で、私も副団長、そして、前にいる舟山先生も副団長として、一緒にアメリカに行って参りました(※1)。

(※1)2013/04/26 TPP慎重派訪米団が帰国会見 米国議員は「TPPと安全保障はリンクしない」と認識! ~TPPを考える国民会議「米国におけるTPPに関する実情調査団」帰国会見

 舟山先生とわたしと、USTRのカトラー代表補と会って、今日本では農産物等々についても、聖域は認められるんだという言い方をしているけれども、本当に例外があるのか?と。6項目についても。それを確認いたしましたら、はっきりと、コメにおいてすらセーフガードか、昨年は、私には7年間の期間で関税をゼロにすると言ったんですが、今回は、長期ステージでゼロにするんだと。こうはっきり言われました。

 もうひとつだけ。アメリカの国会議員を首藤先生はじめ、27、8人、みんなで手分けして回ったんですが、そのうち、秘密協定でありながら、3人の議員はその内容にアクセスできていた。他の議員はアクセスできてなかった。

 カトラーさんに、なぜ国会議員が、みんなの議員が秘密協定である、このTPP協定の、いま29章、900ページできてると言いますが、その内容にアクセスできないのかと。おかしいじゃないかと、そういう話をしましたら、それについては、ちょっと困ったような顔をしてましたが、すべての議員が一定のルール、セキュリティを、という意味だったと思うんですが、それを守る限りにおいては、認められると。そう言われました。

 じゃあ、日本が交渉に参加したら、日本の議員は、例えば篠原先生とか、何人かの、福田先生とか舟山先生とか、議員さんが見られておりますが、そういう議員もすべてアクセスできるんだな?と、そうお聞きしましたら、それは、日本は独立国だから、当然アクセスしなきゃいけないだろうし、それはできるでしょう、という形で詰め寄ったんですが、そうしたら、大変重要な問題だと。大変重要な問題だけど、日本の国会議員も一定のルールを守ってもらえばアクセスできる、と言われました。

 で、私は最後に、もし独立国日本だから、アクセスできれば、議員がそれを、どう言うかということについては、これまでのように、アメリカの同意がなければ、情報開示できないという圧力をかけることはないんでしょうな?と、そう念を押して帰ってきたところです。

 これから、大変、この23日、本当に交渉参加できるかどうかというのは、アメリカの議員さん方もかなり反対がありましたし、ワラックさんからは、百三十余名の下院議員が、いわゆる反対というか、疑念を感じているという趣旨の署名を頂いて参りましたが、これから、本当にカトラーさんも、7月22日までのあいだに、実際に日本の交渉参加を議会が承認してくれるかどうか、非常に深刻であると言ってましたので、私は、まだまだどうなるか分からないし、戦いはこれからだと。

 もし、交渉に参加したとしても、なんとかして頓挫まで、反対に、これを交渉をなんとかしてぐしゃぐしゃにしなければならないだろうと、そう思っておりますので、今日はこれから、友好なパネルディスカッションをみなさんで一緒にお聞きしたいと思います。パネラーの先生方、今日はどうもありがとうございます」

相原「山田先生、ありがとうございました。それでは、第二部、ここよりコーディネートを賜ります首藤信彦前衆議院議員、よろしくお願い申し上げます」

首藤信彦氏「みなさん、こんにちわ。この国際シンポジウムのコーディネーター、モデレーターの役を仰せつかった前衆議院議員の首藤信彦でございます。

 私も原中先生、山田先生、そして舟山先生、福島先生もおられましたかね。みなさんと一緒に今回、アメリカに行って、いろいろな新しい局面を知って参りました。そういう話もしたいんですが、今日はせっかく海外から3人のこの分野でも専門家の先生がおられますので、その話を中心にして、これから、国際シンポジウムを行いたいと思っております。

 まず、このパネリスト、みなさんご存知の通り、最初から、こちらから行きますと、篠原衆議院議員、そして原中会長、そして、孫崎さん。もうみなさんも御存知の通り、外務省出身で情報局長を務められまして、現在は評論家として活躍している孫崎さん。

 そして、榊原さん、ミスター円と言われた、いま非常に難しい状況で、コメントを求められる状況も多いと思いますけれども、そうしたこの分野での、様々な分野からの専門家に、このお三方の話に対しての質問やコメント、そしてまた、TPP全体に関しての質問とコメントということで、まず最初に、一人5分づつ話していただき、そのなかで、パネリスト同士で、これからまた議論を進め、もし時間がございましたら、これは最終的には、5時55分が最後となっておりますけれども、もし時間がございましたら、フロアの皆さんからも、ご質問を受ける機会がぜひ作りたいなと思っております。

 それでは、まず最初に篠原さんから、お願いしたいと思います」

篠原孝氏「篠原でございます。それでは、私から質問をまずさせていただきたいと思います。ワラックさんに、アメリカの手続き。90日で、7月23日というのが最終日です。90日ルール(※2)というので。その間はいったい、90日ルール、90日ルールと言われるんですが、そのなかで、日本のように、採決だとか、そういったものがきちんとあるんでしょうか?それとも、なしなのか。どこで認められて、というのが。それから、審議のようなものが行なわれるのかどうかというのを。そこがちょっとよく分からないんですね。

(※2)90日ルール:環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加にあたり、米国が新たな交渉参加国を認めるために米議会で90日間以上議論する取り決めのこと。(経済ナレッジバンクより)

 そもそもTPA(※3)の法律がなくて、今までの慣例でもって90日ルールというのをやっているということで、ふわっとした感じになっているんだろうと思いますが。それが一つです。

(※3)「大統領貿易促進権限(Trade Promotion Authority)」(1)貿易促進権限(TPA)とは、従来「ファスト・トラック」権限(追い越し車線の意)と呼ばれていたもので、期間を限定、行政府に対し議会への事前通告や交渉内容の限定などの条件を付す一方、かかる条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意の個々の内容の修正を求めず、迅速な審議によって通商合意を一括して承認とするか不承認とするかのみを決することを法律で定めるもの。(外務省HPより)

 それから、金さんのほうには、韓国の例を日本が見習わなくちゃいけないんですよね。いつも、逆で日本がやってきたことを韓国が学んできたはずなんですが、いま韓国から見たら、日本は準備、韓国もあれだけ困っているのに、なんで入っていくのかということをおっしゃいましたけども、去年の3月15日に発効して、まだ1年ぽっちですから、影響はそんなに出てないと。ISDまがいの訴訟があったというぐらいで、じわじわとした結果というのはまだ出てきてないと思います。

 これは、よくさきほど榊原さんも言われるんですが、韓国の状況を3年から5年見てから判断していいじゃないかと。こんな時に、拙速に入らなくてもいいんじゃないかとおっしゃる。私もそのとおりだと思うんですが、韓国の一年後、ほとんどの人が反対だったというか、最初は賛成してたんですけど、最後は推進した与党のハンナラ党もぐちゃぐちゃになって、セヌリ党に名前を変えて、というか。

 与党のハンナラ党、セヌリ党ですら、反対だと。特にISDに反対だということになってましたけど、そして李明博大統領から、朴槿恵大統領に引き継がれた時に、ISDについては、特にこんなものは無しにするんだよという、引き継ぎがあったように聞いてるんですが、この前、アメリカに朴槿恵大統領が行って、大歓迎されていると。そんな気配。ISDの再交渉などというギスギスした感じはぜんぜんなかったけど、その点はどうなっているんでしょうか?ということ。

 それから、アメリカのことを。すいません、順序があれですけれども。ケルシーさんに。アメリカのことばっかり気にして、アメリカ以外が交渉国がないみたいな感じで日本は思っているわけですよね。

 しかし、農産物について、5品目。本当はもっと関税番号にすると、うんと多いんですけれども、それをアメリカが例外除外だとか言ったって、そんなニュージーランドやオーストラリアが許すはずないんですけど。アメリカが先走って適当なことを言ってることについて、ニュージーランドの農業界や、隣りのオーストラリアの農業界のみなさんはどう思っていらっしゃるんでしょうか?情報がありましたら、教えてください」

ロリ・ワラック氏「90日間のルールというのは、実は形式的なことなんですね。ですけれども、オバマ政権は、この件に関しては、これはまず最初からあったかのような、実はこれは形式的なことなんですけれども、形式があったかのようなそんな顔をしています。

 採決は起こりません、また、議論も起こりません。ですから、これはことさら日本にさらに侮蔑的だと言うこともできます。というのは、何も法的な規制としては、90日間、待たなくてはいけないという理由はなにもないんです。法律上は。

 もしかすれば、オバマ政権というのは、その議会からこういった権限が、通知をしてから90日間というのは、それはもう義務付けられるという権限が与えられると思っているのかもしれません。

 ですから、これはなるべく長く時間を稼ごうということですね。そして、日本がマレーシアで交渉に参加してくる前に、特別な交渉ができるように、時間を稼いでるということのように思います。

 それから、こういった点について、もっと知りたいという方のためには、ぜひウェブサイト上で公開しておりますけれども、私が最近書きました新著(※4)について、貿易のオーソリティがどんなことをするのかといった点についての私の新著を是非ご覧いただければと思います」

(※4)The Rise and Fall of Fast Track Trade Authority Lori Wallach (Author)

金鐘佑氏「篠原先生のご質問にお答えしたいと思います。実は、韓国の最高裁判所におきまして、ISDというこの条項は韓国の国内の司法主権、司法の主権を侵害するおそれがあるというような、こういったことが出たもんですから、韓国の国会でもこれを再交渉しなければならないのではないかというような、そういった決議が挙がったわけです。

 韓国政府は、この問題に関して、別途のタスクフォースを設置して、この問題について討議し、その結果に基づいて、これを審議しようというような、そういった流れになっています。

 しかし、このタスクフォースの構成員というのが、ISD条項に疑問視をしている人たちはまったく入っていません。そのような構成になっているところから、実際に、この再交渉を行えるかどうかということは、大変疑問の余地があります。そういった状況です」

ジェーン・ケルシー氏「ニュージーランドの貿易相は、アメリカの農産物市場、乳製品について十分なアクセスがなければ、TPPの交渉からは去ると言っています。

 ニュージーランドの乳製品について、アメリカは交渉してからもう3年間経過しているにもかかわらず、大きな乳製品の市場アクセスということは認めていません。

 過去の交渉の経緯を見ましても、アメリカがニュージーランドの乳製品について、市場を開放するという譲歩をする、大きな譲歩をするということは、まず見込めません。それは明らかです。

 貿易相に、もう交渉を去るようにしましょうと言いました。そうすると、貿易相は、いや、でも最後終りを迎えるまでは、交渉は終わったわけじゃないよ、と言うんですね。

 そして、日本が交渉に参加するということになると、日本は市場アクセスができるよと。そして、アメリカの市場にアクセスできるよと思っているんです。

 なぜ、日本に例外規定を認めないかというと、アメリカに日本がアクセスできないようにしたいかというだけではなくて、そして、アメリカのほうが合法的にそれをやっているという、そういう主張ができるということを言い続けたいということがあるわけですね。

 オーストラリアは、さらに良くない立場に立たされています。

 アメリカとオーストラリアのFTAにおいては、砂糖(※5)については18年間、これは対象にできないとされていますし、そしてまた、他のいくつかの製品についても、いくつもの、小規模ですけども、すこしずつの段階的な関税を下げていくということが言われています。

(※5)政治的に影響力の大きいFlorida州で砂糖業界が強い(なぜアメリカはFTAがあっても砂糖産業を守るのか?を考えるメモより)

 そして、TPPのなかで、アメリカはオーストラリアとのあいだですでに決まっている、FTAのなかで決まっていることを再交渉するというのは、断固拒否しているわけです。そして、日本に対しても、アメリカは、すべてのことについて、包括的に自由化をしなくてはならないということだけを言い続けてきています。

 オーストラリアの生産物委員会でさえ、このオーストラリアとアメリカのFTAは、オーストラリアにとっては最悪の協定だったと言っています。

 ですので、オーストラリア国民もおんなじ疑問を投げかけています。いったい、ではなんで、オーストラリアはそもそもこんなことをやっているのかと」

首藤「OK.Thank You。それでは、次に原中さん、お願いします。なるべく時間がだんだん押して参りましたので。短く」

原中勝征氏「実は、今日、連合の方々と話をして、どうして連合の方がアメリカの南部の人たちが労働者が職を失って、空洞化していくことに対して、日本もそうなるだろうと。要するに、ベトナム、あるいはインドネシアの人たちがいま日本に移りたいと。単純労働者が移りたいと言っている、強い希望を持っていることを知っておるだろうというようなお話をして参りました。

 御存知の通り、アメリカの南部では、おそらく600万人と言われた時給200円のメキシコの労働者が移って来られた。そのために、アメリカの労働者がほとんど職を失ってしまった。それで、アメリカは、それでは今までの半分の給料で働いてもらえないかというふうに、職員たちに話をしたら、OKを取れなかった。それで、その会社全体が、そこを閉じて、メキシコに会社を移してしまった。そこからどんどんと失業者が出たということが、大きな社会問題になりました。

 私は連合の方に、このTPPが締結されましたら、我々が一番牙城としておりましたILOの条件までも踏みにじられますよ、という話をしたら、たいへん驚いておられました。

 要するに、すべての国内法以上に、私達の環境、あるいは労働条件、色んなものが、長年の努力によって、ILO条約(※6)だとか、あるいはWHOのトレードのいろんな決まりだとか、そういうものがあったわけですが、いまちょうど金先生がおっしゃったように、裁判の問題まで、司法までも、すべてがこのTPP、国際的なTPPの協約のほうが上に立つということを考えたときに、私達の労働条件がどうなるんだろうということを非常に懸念してきたわけです。

(※6)国際労働基準-ILO条約・勧告 条約一覧

 連合の方々も大変驚かれて、ようやく考えていただけるだろうと思いますが、本当にすべての、我々が牙城としてきた国民を守る、国民が安心をしてきた生活が崩れるという現状まで、私は移るだろうと思います。

 ワラックさんに、ちょっと質問したいんですが、今日、連合の最後の質問。あれは非常に強烈だったと思うんですが、日本になんの利益もない、しかも話もみんな閉じられていて、内容も分からない。そこに日本の総理大臣がサインだけして入るのはなぜですか?という質問をしましたね?」

ワラック「答えはなかったですよね。行く場所、行く場所、同じ質問をしてます。まったく理解に苦しむんですけど」

原中「OK. Just Your Question. OK,Thank You verry much」

首藤「どうもありがとうございました。それでは次に、孫崎さんお願いします」

孫崎享氏「ワラックさんに主に質問することになると思います。このTPPは、世界の統治形態を、私は変えるものだと思っています。これまでは経済関係は主として国家と国家の交渉でしたけれども、ISD条項によって、企業が国家を訴える。企業が主体になってくる。そして、理念は企業の利益の確保がなによりも優先されるという制度になっている。

 そしてまた、このISD条項で裁く仲裁裁判所というのは、国際司法裁判所とは異なり、非常にあいまいなものであって、公平さが保たれない。こういうものであると思います。ということで、ISD条項というものは、これが本格的に採用されれば、国家の主権というものが侵されてくる。こういう性質のものですね。

 ワラックさんは、パブリックシチズンで、非常にこの問題に感心を持っておいでになるのは分かりますけれども、もしも、国家の主権が侵されるんであれば、パブリックシチズンどころの話ではなくて、アメリカのすべての上院議員であり、下院議員が関心を持たなければならない問題でありますけれども、そのような広がりは今ないわけですよね。

 じゃあ、なぜそれが起こっているかというと、これから、質問なんですね。それは、アメリカのほうは、ISD条項が適用されないようなシステムを作ってるという問題。不公平なシステムがもう、たぶんこのTPPのなかにシステムとして入るから、アメリカの上院議員、下院議員が心配していないのかどうかということを、質問したい。

 それからもう一つ、最近、もうひとつは法的に問題がないとしても、日本とか、小さな国がアメリカを訴えるということはしませんよね。怖くて。やったらたいへんな報復を受けますから。ところが、いまEUとのあいだで、同じようにISD条項を入れるような形で交渉が行なわれるということになると、これは話はまったく変わる。

 今度は、EUの企業が本格的に訴えると、これはそう簡単に、日本とかニュージーランドとか、そういうような国みたいに、弱そうな国じゃないから、だから、そういうような点で、このISD条項を含むという点が、ものすごい危険であるということを、アメリカの本当に立法の関係の人たちとか、行政の関係の人たちが認識しているのかどうか。してないとすれば、なぜなのか?それをちょっとご説明ください」

ワラック「とてもいい質問、ありがとうございます。我々も例外なく、これが適用されますので、州議会はよく理解しています。さまざまな司法の場で、すでに毒物とかいろいろな問題点に関しましては、鉱山の問題もあるので、州では争われてきた経緯がございます。

 ISDは困りますよと、州議会のほうは、ですからNAFTAのときからずっと言っているわけです。議会のところでは、まだまだ皆さんが立ち上がって何かをするというよりも、まだ道半ばという感じで、まだそんなには大きな問題になってないです。

 保守派と、そしてリベラルというその2つの左と右があるわけなんですけども、まだアメリカが支払いが生じたケースというのが起きていないので、まだそこまで大きな問題としては取り上げられていません。

 ですから、政治的な意味で大きくなっていないというのは、法的とはまた別問題です。今回、仲裁裁判所の判事になる3人というのは、弁護士であり、巡回して、その判事の席についてないときには、逆に政府を訴える側の弁護士事務所のほうにいるわけですから、時給600ドルでこういった弁護士、判事というのは仕事をしています。万が一、件が却下されたとしても、その後に関してましては、法的な費用、かかった費用は、すべて政府持ちということになります。

 企業に関してのアタックがあった場合にこのレポートで書いてますけども、55%をこの15人で賄っているというレポートがあります。金の卵を産んでくれる鶏を殺したくないというのが、この弁護士たちですよね。

 他国では支払いが生じているケースでも、政府で。アメリカの場合ではそれはないよということで、ただ、NAFTA関係で合計90億ドル相当の訴訟案件がいまペンディングになってますので、今後見ものと言いますか、今後の展開というのは、またあるやと思います。

 ただ、さきほど言ってました国を相手取って訴訟を起こしたら、アメリカだったら報復してくるんじゃないかというのは怖いなというのがあるでしょう、という企業も政府を訴えた場合には、ぜんぶ訴訟費用は向こう持ち。政府がもってくれるし、失うものがないということに気づいたので、この90億ドル相当の訴訟がペンディングになってます」

首藤「Thank You Very Much。どうもありがとうございました。それじゃあ、榊原さん、お願いします」

榊原英資氏「実は遅れて参りましたので、ケルシー教授やワラックさんの話は聞きそびれてしまったので、質問というよりは、わたくしのTPPに関するジェネラルな意見を申し上げて、必要があれば、それにコメントしていただくという形でやりたいと思います。

 まず、そのTPPに我々がなぜ参加するかということが、私は非常に理解できないですね。今問題になっているのは、どちらかというと、関税の撤廃と農業保護が維持できるかという、そういう観点から言われてるんですけれども、その点だけじゃないんですね。問題は。実は21分野について、アメリカとネゴシエーションしなきゃいけないわけです。

 21分野というのは、ほとんどすべてのエリアを含んでいるわけですね。私は20年ぐらい前に、アメリカと保険交渉というのをやりましたけど、この保険もその21の中に入ってますけど、これはえらい交渉でした。

 3年ぐらい延々とやって、アメリカのAIGという会社がまさに先頭に立って、日本のゆうちょとかかんぽとか、そういう日本の公的な保険制度というか、制度を攻撃してきたということで、これは3年ほど長引いた交渉になりましたけど、これを21分野でやんなきゃいけないわけですよ。そんなことできるわけないじゃないですかと。

 ともかく10月までなんて言ってますけど、10月までにそんなことできるわけないですね。交渉ができるわけないということは、そのまま向こうの条件を鵜呑みにするということになるわけですね。

 そんなものにどうして参加するんですか、ということでございまして。まさに、安倍総理が飛び乗ったあれが理解できないですね。それから、交渉というのは当然相手方の要求と、日本側の要求と、両方なきゃ交渉にならないですね。

 TPPの交渉で日本が何を要求するんですか?という。ぜんぜん聞こえてこないですね。ですから、まったくこっちは要求するものがないと。少なくともそれを検討してないと。向こうは、あらゆる分野であらゆることを要求してくると。なんで、そんな交渉に乗る必要があるんですか?

まったく、私は交渉というのをずいぶんかつて大蔵省の役人のときにやりましたけど、そんな交渉ってありえないですよ。そんな交渉に飛び乗るということは、なんか狂っているんじゃないかなっていうふうに思うぐらいでございますね。

 それから、もう一つ、TPPのアメリカ側の意図、あるいはオーストラリアの意図というのは、東アジアがいまある意味では、東アジアとか南アジアが世界の成長のエンジンになってますよね。ですから、特に、東アジアをTPPという形、つまりトランスパシフィックですね。

 太平洋をまたぐ一つの枠の中に取り入れて、そういう成長のメリットを得たいというのがあると思うんですね。これは、アメリカとしては当然だと思いますね。アメリカとしては、例えば中国。例えば、東南アジア、そういうところの成長の果実をアメリカやオーストラリアも得たいと。だからTPPなんだと。そういうところに巻き込むんだと。

 これは、アメリカとしては理解できますけども、日本は、現在、東アジアの経済統合の主要なプレーヤーなわけですね。実は、東アジアの統合というのは相当進んでいる。例えば、日本、中国、韓国、ASEAN10カ国、ASEAN+3といってますけども、そのなかでの域内貿易比率というのは60%近くになってるんですよね。

 EUの域内貿易比率が65%ですから、実は東アジアには制度はないです。EU的な制度はないですし、それを規制するような法律はありませんけれども、実は企業が主導する、あるいはマーケットが主導する形で、東アジアの統合が進んでるわけですね。

 ですから、日本はそこからたいへんなメリットを受けているわけです。特に、日本と中国の関係が非常に深くなっていると。経済的に非常に深くなっているわけですね。そのことによって、日本は大きなメリットを受けている。日本の企業は大きなメリットを受けていると。

 そういうメリットをアメリカも受けたいと。アメリカの企業も受けたい。オーストラリアの企業も受けたいと彼らが思うのは当然だと思うんです。だけど、日本はすでにそういうメリットを享受しているわけですね。

 ですから、日本がTPPに飛び乗る必要はまったくないです。すでに、もう東アジアの統合の主要なプレーヤーになっているわけですから、その意味でも、TPPに日本が飛び乗るということは、理解できない。

 ですから、あらゆる点から考えて、TPP交渉というのは、アメリカが推進しようとするのは分かります。ですけれども、日本がそれに乗る必要はまったくないと。それから、逆に日本が乗らないと、これはあんまり意味のある交渉にならないですよね。

 だから、アメリカからの希望は強いでしょう。それは、日本に乗ってくれと。日本が乗ってくれれば、いずれ中国を取り込むことができるかもしれないと、アメリカは思うわけですから。ですけれども、日本側のメリットはほとんどないわけですね。

 日本側のメリットがほとんどなくて、アメリカの要望に事実上屈するというのはどういうことなんですか?と。安倍政権というのはそういう政権なんですか?というふうに、質問せざるを得ないですね。私のコメントは以上でございます」

首藤「ありがとうございました。何か質問、ありますか?」

ワラック「お話いただけたと思います」

首藤「では、私の方からちょっと質問なんですけども、このTPPに参加するというのは、TPPに参加するだけじゃなくて、日本の場合は、並行協議(※7)が行なわれているんですね。その並行協議でほとんど今までアメリカが要求したことを全部飲んでしまったということですね。

(※7)日本経済新聞2013/4/18付 知的財産や郵政 日米が並行協議 非関税9項目、TPPにらむ

 他のTPP参加国で、このTPPに参加するときに、日本と同じように、並行協議をして、ハードルを下げて入った国があるのかということを知りたいんですね。

 また、日本とニュージーランドにしても、日本とカナダにしても、例えば、ニュージーランドもカナダも、外務大臣が、日本を簡単に入れないと言っていたのに、急に入れることになったと。

 それは、ある意味での日本の政府との間の二国間競技があったんじゃないかと思いますけれども、それはどういうような二国間協議があって、ニュージーランドやカナダの外務大臣は、日本の参加反対するのを取り下げたのか、教えていただければ、と思います」

ケルシー「2つ目の質問に、まずお答えしたいと思うんですけれども、アメリカが、日本は参加するべきだと決めたところで、他の国は、何にも、どんな条件も課すことができなくなったという事情があります。

 1つ目の質問に対してなんですけども、日本にとってのこの手続、やり方というのは、これは独特なやり方です。そして、去年の12月、カナダとメキシコがはじめて参加するということになった時には、文書の閲覧ということはなかったんですけれども、条件付けとして、このパラレルな協議が行なわれるということはありませんでした。

 ということで、このパラレルの話し合いということは、その二国間の交渉は、アメリカと日本のFTAについても使おうということがありますし、TPPにおいても、このパラレルな協議をしているということは、結局は、最終的にはアメリカが全部決定権を持つということにしたいからやっているということですね。

 しかし、2つ重要な疑問を呈さなくてはならないと思います。では、この日米の間で合意したということは、その他のTPPに参加している国に対しても、これは有効なものとせざるをえないのかどうか、というのがまずひとつ。

 それに対しての答えは、今の最初の質問についての答えはノーだと思いますね。これは、あくまで日本とアメリカとの間の、その脇で行なわれた協議だということになる。

 しかし、TPPのメカニズムを使うことによって、実効を要請することはできる、ということにされると思います。

 そして、今までに出てきている様々な問題点については、そのすべての変更が実施されてから、ということになりますね。そのTPPの合意がされるというのは。

 そしてもう一つ、2つ目の疑問というのは、TPPの交渉に参加している諸国というのは、その全てのTPPの合意ができるというのは、そのアメリカが日本に対して要求している、そういった要求が、その条件がすべてのまれて、成立した時になるということが分かっているのかどうかという疑問です。

 それはわかってないと私は思います。しかし、いい知らせがあります。これはもう永遠に続くということです」

首藤「はい。どうもありがとうございました。パネリストの先生、なにかよろしいですか?じゃあ、フロアの。せっかくの機会でございますから。もうほんとうに21項目あって、そして今までほとんど国民に内容が知らされてないということで、多くの皆さんは本当にいろんな質問を、基本的な質問から、非常に高度な質問まで、専門的な質問まで、いろんな質問があると思うんですが、せっかくの機会ですからフロアから、いくつか質問を受けて答えていただきたいと思います。じゃあ、一番後ろの女性の方と一番前の方と、お二人お願いします」

一番後ろの女性「TPPってなに?というグループのフェイスブック(※8)の管理人をしていますマツダと申します。

(※8)TPPってなに?

 米韓FTAは、2007年TPAをアメリカ政府が持っている最後の日に署名されたと聞いています。それから、昨年、発効するまでにいろんな変更が加えられたと聞いています。ロリさんがさきほど、アメリカの企業がFTAを使って権利を拡大し、同時に政府が国民を守るための手を縛ってきたとおっしゃったわけですが、この2007年の時点で、米韓FTAっていうのは、アメリカの連邦法だったり、州法だったりを変更する必要があったのか、それを修正をしたのか。それとも、ただ単に韓国に対する要求を厳しくしていったものなのか。

 同時に、これまでNAFTAや、もちろん米韓FTAでも、102条というFTA実施法というもののなかで、もし連邦法と州法が、コントラディクト(相反する)するような矛盾があるようであれば、FTAのほうは無効になるというふうな条項があると思うんですけれども、これまでアメリカというのは、FTAにおいて、連邦法や州法を変えるという経験をしてきたのか。

 TPPではそれを変えることになるのか。それを議会が分かっているのか。アメリカについてはロリさんにおうかがいしたいと思っていて、それで、ニュージーランドでは、今後TPPに入って、法律を変える予定と言いますか。ということになるのか、ということをおうかがいしたいです。よろしくお願いします」

首藤「はい。ありがとうございました。じゃあ、質問をもうひとつ、続けて。それから受けていただきたいと思いますが、どうぞ。この質問のあと、お答えをお願いします」

一番前の男性「日本消費者連盟のヤマウラと申します。お話、ありがとうございます。私は遺伝子組み換えについて、お二人におうかがいしたいと思います。

 まず、ケルシーさんに、TPP協定の協議、あるいはSPSにも絡むかもしれませんが、遺伝子組み換えの表示義務をめぐる議論ということは既にいろいろと行われたのかどうか。その点についての、例えば、ニュージーランドとアメリカとのやり取りというものが、もしお分かりになりましたら、お知らせください。

 それから、金さんにおうかがいしたいのは、韓米FTAの交渉の前に、すでにGMOの合意文書というものが事前協議として取り交わされたと言いますけれども、その問題が、今回のTPPにも出てくるのではないかと思いますが、この点についてのお考えをおうかがいしたいと思います」

首藤「お願いします」

ワラック「このスローガンで、ぜひフェイスブックにジョインしてください。みなさま、これ(No TPP for Japan nor the World)(※9)に入ればいいそうですので、ぜひフェイスブックの中に入って、お仲間になってください。

(※9)No TPP for Japan nor the World

 アメリカのFTA関係のすべての条文に関してましての要件というのは、合意に合わせた形で、それぞれの国は合意文書に書かれてあります内容に適合する、管理手順も変更する、すべて規則に習って準じるべきであるというふうに書いてあります。

 貿易に関係しないところで、それぞれの県、または国レベルの法律というのはパテントに関しても、そして遺伝子組み換えに関しても、ジェネリックに関しましても、食品安全性に関しても、金融に関しましても、法律、ルールを変えて、規則、将来的にもすべて準じるように変えなくてはいけないということになります。

 NAFTAのケースで、アメリカも法律を変えました。

 NAFTAで変えたのは、例えばアメリカの安全性基準を満たしていなければ輸入できないといっていた部分のところを、アメリカ基準と同等に、相当するものであれば、という形の言い方に変わりました。

 NAFTA以前というのは、食肉、または鶏肉というのはメキシコからは輸入していなかったんですけれども、それ以降は輸入するようになりました。

 次に、遺伝子組み換えのGMOのラベルについてなんですけども、科学的に証明できるものだけ、ラベル表示をしなさいというのが、アメリカが言おうとしている部分なので、ですから、アレルギーの元になるもの、成分というものは許容されます。

 貿易障壁となりうるような消費者が求めているGMO無し、でありますとか、人道的に、これは栽培された、でありますとか、そういったものに関しては、必要ないとされています。

 すでに、合意の中に、この貿易に対します技術的なバリアというところで、もうすでに織り込まれたものとして、TPPの条文のなかに、これらは、私が申し上げたことなどは組み込まれております」

ケルシー「TPPに対する回答に関して、ニュージーランドの法律を変えるかということなんですけども、ニュージーランドの法律という意味では、政府は議会に口を出させたくないというふうに思っています。

 内閣府が拘束力をもたせるような形にTPPをニュージーランドの場合には持っていくことができるので、TPPを採択するかどうか、議会はなにも承認できる立場にはありません。

 ただ、もしTPPが拘束力を持つことになりまして、我々が法律を万が一変えないということになりますと、違反行為を行なっていることになります。

 法律の改定の問題というよりは、ニュージーランドの場合には、規制緩和をされている部分をもう一回、規制を厳しくするというところが大きなハードルとなります。どちらかというと。

 これは、鉱山に関する従事している事業でありますとか、ヘルスシステムでありますとか、工事請負など、また金融といったところです。

 これまでいろいろと失速してしまった部分に関しまして、TPPをうまく活用して規制をかけようという動きはあるでしょう。

 議会を通さずにルール、規制をかけていく、または政府からの執行ということでやる方法を取ると思います。

 これは、半民主主義的なやり方ではありますけども、一方で国民の声も聞かれないということになりますが、国民も責任を負わなくていいということになってしまいます。

 すごく議論の的となるので、遺伝子組み換えに関しましては、あまり公けにしないように今までして参りました。

 その遺伝子組み換えを防ぐ強いルールに関して、大きな発表をカナダが先週いたしまして、小麦業界からの強いルールの要請ということで、大きな発表がありました。

 それが今後、どういうようなプロセスで進化していくか、確認していきたいと思っています」

金「たぶん、ご質問された方は、韓米FTAのなかで、遺伝子組み換え農産物の了解覚書ということが交わされたので、そのことをご存知で、そのことにご質問されたのかなというふうに思います。

 もちろん韓米FTAの条約文そのものは、分厚い冊子になっていまして、たくさんあるわけですよね。

 しかし、そのFTAの条約文以外に、了解覚書というものが別個にまた存在するんです。

 ですから、条約文だけを見たら、GMOのことについて、これについては検査をすることができるぐらいにしか載ってないわけです。

 その了解覚書の内容がどういった内容かということなんですけれども。

 新しい遺伝子組み換えの変形であっても、これが伝統的な交雑であれば、この交代製品は認める、というような、そういった内容です。

 とても難しいですよね。

 要するに、一言で言うならば、人間と動物に対して、科学的な有害性が確認されないならば、韓国はこの問題について、異議を唱えることはできない、そういった内容なんです。

 そうすると、この遺伝子組み換えの農産物が、これは問題なんだ、問題ではない、ということが、なかなか分からないような形になってしまうわけです。

 要するに、私が言いたいのは、本当に大事な国民の食べ物だとか、こういった遺伝子組み換えの農産物の問題。このことについては、韓米FTAの本文にはなくて、別個に了解覚書のような形で抜け道を作っておいて、結局、国民には知らされないという、そういったことが本当に問題だということを申し上げたいと思います」

首藤「はい。どうもありがとうございました。だんだん時間が迫っておりますけれども、フロアの方、どうぞ。二人の方。短く質問してください。もう、あんまり時間がありませんので。二人の方にマイクを渡してください。短くお願いします。所属を言っていただいて」

男性「今日は貴重なお話、ありがとうございます。食健連(※10)のサカグチと言います。ワラックさんに質問なんですけれども、さきほど90日ルールというのは形式的なもので、あまり中での議論がないのではないか、と言われたんですけれども、日本が参加することを議会筋が本当にOKするかどうか、という議論がぜんぜんないのかどうかというのをうかがいたいんですよね。

(※10)食健連

 というのは、韓米FTAでも一度まとまったものが、議会筋の要求でさらに強化されて再交渉みたいなことが行なわれて、まとまったというふうに聞いてるんですけれども、今のアメリカで言えば、自動車業界が日本の、これまでの譲歩では十分ではないということを言ってますけれども、その自動車業界の代表たる議員たちが、議会でもう少し議会で議論しようとかいうことなんかが、ないのかどうかというのをちょっとうかがいたいんですけど」

首藤「マイクを渡してください。前のほうの方です。最後の質問になります。どうぞ」

 男性「にゃんとま~(※11)と申します。ケルシーさんに質問したいと思います。日米の並行協議に関してですが、これは米国が望む形での解決をしない限りは、米国はTPP交渉の合意を拒否するとありますけれども、そうすると、逆に言えば、並行協議で日本が、その並行協議の結果、法制化とかを含めて、決定を伸ばせば、TPP合意自体がずっと遅れるということを意味してるんでしょうか?」

(※11)にゃんとま~

首藤「では、2つの質問、よろしくお願いします」

ワラック「アメリカの憲法上の権力に関係する非常に複雑なご質問だと思いますね。ちょっとまず、明確化したいんですけれども、TPPが実行に移される前に、その議会は承認しなくてはならないということですね。

 そして、ニュージーランドとはまったく違うんですけれども、アメリカの場合は、大統領ではなくて、実は議会が独占的な権限を持っています。その貿易協定を発効させるかどうかということに関して、ニュージーランドと違ってアメリカの場合には、大統領ではなく、議会が絶対的な権限を持っています。

 ということで、アメリカでは歴史的にそのように行なわれてきたわけでして、アメリカでは議会がやってきたことに対して、その後付け的に大統領がそれを承認して署名をするということになっていたんです。

 しかしニクソン大統領はここでご登場になるんですけども、もちろんニクソン大統領というと、皆様すぐにウォーターゲートを思い出されると思うんですけれども、ニクソン大統領というのは、アメリカの憲法の中をくまなく見て、議会から権限をなんとか横取りできないだろうか、ということを熱心に、執拗に研究した人だったんです。

 ということで、このニクソン大統領の時に、ファーストトラック(※12)というのが設定されまして、その議会の持っている貿易協定をめぐる権限を、なんとか大統領が、自分が手にできないかということを画策したんです。

(※12)ファースト‐トラック 【fast track】無修正一括承認手続き。政府提案の関係法案を一括審査して賛否を問う仕組み。(kotobankより)

 ということで、これが1973年のことなんですけども、それからそういった貿易の協定をめぐる権限を、議会が大統領に渡したことはたった16回しかありませんが、そういったことが行なわれるようになりました。

 ということで、オバマ大統領はなんとか議会をうまくなだめてすかして、説得して、このファーストトラックの権限を自分に与えてくれないものだろうかということを画策しているわけですね。

 ですから、90日間の通知期間ということを与えることによって、なんとかこの権限を手に入れられないかというのをやっているところなんです。

 ということで、議会に一生懸命に媚を売っているわけですね。もうお花を贈るだの、チョコレートを贈るだの、ありとあらゆる贈り物作戦に出て、ファーストトラックをなんとかもらえないだろうかということをやっている最中です。

 ということで、90日間というのがいわばチョコレートを送ったということになるんですね。

 これは法律による要件ではありません。現在の法律による要件ではないですね。

 ですけれども、この90日間の通知期間という贈り物を議会にあげたことによって、このファーストトラックという権限を議会が自分にくれるのだというのを期待しています。

 ですけれども、この90日間ということのなかでは、別に採決をするとか、審議をするということは、まったくありません。ですけれども、ファーストトラックということを与えると、そのすべてを大統領が決定をするということになるので、私は決して議会はもう二度と、こんなことは認めないと思います。

 もし、このことについて、より詳しくお知りになりたいという方は、さきほど申しましたこの著書のなかにすべて書いてございますので、ゾッとする話かもしれませんけども、面白い読み物でもありますので、ぜひここから情報収集していただければと思います」

ケルシー「おそらく、私がさきほどのご質問に答えるいちばんいいやり方というのは、アメリカの通商代表代行が、日本とアメリカの通商交渉に関して語った言葉を引用することだと思います。

 このTPP交渉を行なうが、それと並行して自動車協議、また非関税の協議も行なうものとする、と。

 これは同じタイミング、スケジュールでもって、行なわれていくものとする、と。

 つまり、すべてこの自動車の協議についても、非関税措置についての協議も、このTPPの協議が終わらない限り、それをすべて終えるということにはしないということです。すべてタイミングを合わせるというのはそういう意味です。

 ということで、あるジャーナリストが質問しました。ということは、TPPの交渉というのは、いわばブロック、封鎖された状態か?もし、日本がこれに合意しなければ、ということを聞きました。

 ということで、答えはまだまだ日本とやらなくてはならないことがたくさん残っているというのが答えだったんですね。つまり、自動車分野、非関税措置の分野、そしてまたTPPを含む、農産物を含む市場アクセスの問題についても、まだやらねばならないことがたくさんあるというのが答えでした。

 そして、これをすべて終えるというのは、同じ時期にクローズということにすると。

 つまり、日本が頑張って、これに妥協しないということを言い続ければ、みんながTPPから救われるんです」

首藤「はい。どうもありがとうございました。もうあと15分ほどしかありませんけども、モデレーターの権限で、ちょっと2つだけ最後、質問を、講師の3人の方にお願いしたいと思うんですけど。

 一つは、この問題を私たちはもう何百時間も会議してますけれども、もうほとんど新聞に載ることはありませんし、テレビに載ることはありません。いったい、そのニュージーランド、アメリカ、そして韓国において、TPPやFTAに反対している運動は、どのようにメディアで報道されているのか。また、皆さんがどういう努力を持って、報道をしてもらおうとしているのか、ということが一つですね。

 もう一つは、ここにおられる皆さんは話を聞けば聞くほど、TPPに慎重にしなきゃいけないとお思いですよね。と思うんですよ。だったら、これから、例えばニュージーランドのみなさん、あるいはアメリカのみなさん、パブリックシチズンのみなさん、韓国のみなさんも、日本がこれからどうやったらいいかということを、我々に提言していただければ、とおもいますけども。

 最初にDr.金から、次にロリ・ワラックさん。そして最後にジェーン・ケルシーさんの順番でお願いしたいと思います。まず、最初にDr.金、プリーズ」

金「まず、私が申し上げられる部分というのは、理解できる部分というのは、ちょっと別個にあるような気がしています。それは何かといいますと、日本や韓国のようなアジア諸国と、アメリカのような西欧諸国の違い、それは法や国家に対する観点とか哲学が違う、ということです。

 簡単に申し上げますと、法があればできるというのが韓国や日本のようなアジア諸国の態度だとしたら、法がなければやってもいいというのがアメリカの態度です。

 つまり、アメリカはFTAやTPPを締結したとしても失うものがほとんどないということです。質問に戻りますと、日本ではメディアがこの問題をあまり報道していないというふうに聞いています。

 韓国ではFTA反対運動が盛んに行なわれました。メディアでは、当初はこのFTAが国益にとって必ず必要だという報道でした。

 しかし、沢山の人々がキャンドルを手にして街頭に出ました。そして、たくさんの人々が捕まって監獄に入ったあとも、この戦い、反対運動を続けました。

 その結果、メディアもFTAにどういう問題があるのか、というのを報道せざるをえなくなりました。ですから、最終的に申し上げたいのは、日本が今後なにができるかということですが、韓国のこのような経験を共有していただけたら、と思います」

ワラック「アメリカもメインストリームと言われるメインのメディアというのはあまりTPPを取り上げていません。ですから、いろいろと人を教育するという意味でメンバーの多い団体と協力して参りました。

 直接、労働組合とか、環境団体とか、協会でありますとか、そういったところと連絡をすることによって、彼らがメンバーと一緒にその情報を共有していただけるようにです。

 また、第二には、アメリカ議会のなかで、TPPに対して心配、懸念を持っている議員さんが、その議会の場でいろいろとTPPについて取り上げれば、もちろんそれはテレビ報道されます。

 選挙民に対しても、レター、eメール、ウェブサイトで議員が働きかけを行なってくれています。

 情報を促すという意味では、SNS、フェイスブック、eメールでありますとか、様々なペティション、懇願をするということで、請願書を取りまとめるというような活発な動きがございます。

 tradewatch.org(※13)、このカードを是非お手元にひとつお持ちください。

(※13)tradewatch.org

 いろいろとアイディアを持ってますのでぜひ翻訳して見てください。

 過激な、いわゆる著作権ということは、我々はTPPとは違ってうたっておりませんので、どんどんコピーして広めていってください。

 TPP、お母さんにお話して、というキャンペーンまでありました。

 あるeメールのキャンペーンで、必ずお母さんが嫌うTPPの4点とか、人を教育するという意味で、ビデオ(※14)もございます。ぜひ翻訳して我々のアイディアをうまく活用してください。

(※14)EXPOSE THE TPP

 また、抗議行動、活動というのがやはりメディアの目には止まりますので、TPPの元々の内容というのを考えた上で、その逮捕者が出ちゃうというのは、韓国は残念ですけど、例えばワシントンが10人が街に出て、抗議をしたから、車が通れなくなってしまって、たいへん注目を受けたとか、いろんなやり方がありますので。人数が少なくても。

 通商代表事務所のうえのところに大きな風船をかざして、『TPP、自由貿易、My Ass!』(※15)と言って、人間のおしりがいっぱい写真で載っていたりとか。面白いシーンだということでマスコミが取り上げてくれました。

(※15)Occupy the TPP

 ニュース枠じゃなくて、話題とか、エンタメのところで取り上げていただけました。

 悪いTPPに対向するためには、いろいろとアイディアを出して工夫していく必要があります。

 皆さんがよく分かるようにTPPということがいかに悪いのかということを、公けの場に出して、日の当たるところに持ってきて、ぜひ運動してください。

 政治的に、いろんなレベルで働きかけをする我々の場合にも、いわゆる議員に働きかける、市長さんに働きかける、知事に働きかける、すべてのレベルでやりました。

 日本にとって、これは絶対受け入れられないというところもきちんと固める必要があります。

 抗議活動をする際も、これだけは絶対譲れないというところをアピールします。

 ジェネリックに対するアクセスをなくすということをしてしまうと、ペルーの政府は、もう崩壊してしまいます、というか、打倒されてしまいますので、ペルーはジェネリックというのが大きな問題です。国によって、ぜんぜん着目点が違ってくるんですけど。

 市民社会がそれぞれの国で団結して頑張れば、必ずストップできます」

ケルシー「クリエイティビティ、創造性と、エディケーション、啓蒙活動が非常に重要です。しかし、一部の神話を破壊することもしなくてはなりません。

 ニュージーランドは輸出国としては、今までは、このフリートレード、自由貿易についてのことはすべて良いことに違いないと信じこまれてきました。

 つまり、真実を問うことは裏切り行為とさえ思われていたんですね。

 実際に、先週ワシントンで私のことは、破壊主義者だと言われたという話も聞きました。

 でも、私たちが常に、常に言ってきていることは、これは貿易協定、通商にかかわる話ではないということなんです。

 つまり、無期限の将来に対して、政府が決定をする権利に対して、拘束力というか、拘束着をはめるような、拘束させるような、拘束の洋服を着せるようなものだということですね。

 ニュージーランドはちょっと変わった国かもしれません。人口450万人にすぎません。

 自由貿易についての福音主義者もたくさんいますけれども、小さな池のなかで、啓蒙するという立場に立つことだってできるんです。

 この交渉というのは、アメリカとともに始まるだろうと。何時かの時点で始まるだろうということは、もうすでに分かっていたことです。

 でも、別にニュージーランドはアメリカが大好きだと言わなくてはならないということは必ずしもありません。

 また、ニュージーランドは、反核政策というのをずっと今までも取って来ましたね。ですけども、原子力に反対しているというところは、嫌だということは、反核というところは気に入らないということは、常に言われていましたし、また、イラク戦争にも、参加しなかったということで、アメリカとのあいだにはそういった事情もありました。

 ですので、アメリカについて思うところというのは、今までの外交政策のなかにもありましたし、またなんらかの不信感ということも実はあったんです。

 日本でも同じような感触を、実は私は受けています。

 私たちがまずやったのは、この合意についての一般の人のあいだで重要な点はなにか。パブリックアジェンダを作るというところから始めたんです。

 本を書きましたけれども、これはすでに日本語に翻訳(※16)されています。

(※16)異常な契約-TPPの仮面を剥ぐ 原題NO ORDINARY DEAL著者 ジェーン・ケルシー(JaneKelsey)
編著 環太平洋経済問題研究会 共訳 農林中金総合研究所 共訳 林正徳 訳
定価 2,730円 (税込)ISBNコード 9784540103087発行日 2011/06出版 農山漁村文化協会(農文協)

 ビジネスジャーナリストの方々も、秘密裏に交渉を進めている政府からは全く情報が入ってこないということで、私たちの側に情報を求めるようになって来ましたので、その人たちに対しても、私達のほうからの啓蒙活動をしました。

 そして、私たちは一般の人向けのクリエイティブな方策というのもやってきましたけれども、同時に非常に質の高い専門家向けの分析も行なって来ました。そして、これによって信用力も高めてきました。

 そして、ジャーナリストのほうが秘密交渉のために、交渉担当者からまったくニュースが得られないということで、さらに欲求不満、イライラを募らせた時には、私たちのほうに話しをするようになりました。

 実際に、12月のオークランドで行なわれたラウンドのときには、あまりにもTPPの反対する声というのが聞こえてこなかったので、TPPを支持しているあるジャーナリストが、いったい反対側の声はどうなっているんだと言ったぐらいです。

 政府のほうは、私たちと議論をしようとしないんです。どうしてかというと、政府は私たちと議論をしようものなら、私たちが出している論点に対して、しっかりとした証拠を出しての反駁が、反論ができないからです。

 そして、先週もワシントンでのフォーラムのあとで、記事が出たんですけれども、今は、このTPPに反対している側が、今までは開いていた穴の部分、それを埋め始めているという記事が出ました。

 これは、私たちも3年かかりました。弁護士の先生や判事の方々も、健康保険関係の仕事に就いている方々、あるいは野党の議員のみなさんと、国内でも、また海外でも話し合いを重ねることで、この話し合いをずっと続けてやって参りましたけれども、今ではTPPについてのパブリックアジェンダ、ニュージーランドでは、できたと考えています。

 みなさんも、日本でこのおんなじ事ができると信じております」

ワラック「もうひとつ、最後に一言、ご紹介をさせていただきたいと思います。市民社会のなかで、リーダーの役割を果たしていらっしゃる方。ここでお二人。今挙手をしていただいておりますけれども、近藤さんと聖子さんです。

 本当に感謝申し上げます。山田様、そしてまた他に、ここに来てくださいました議員の反対をしている皆様も含めまして、こういった素晴らしい方々に支えられております。感謝申し上げます」

首藤「どうもありがとうございました。Thank You Verry Much。カムサハムニダ」

相原「はい。ありがとうございます。長時間に渡りまして、ご参加いただきました皆様にも、心より感謝申し上げます。以上をもちまして、第二部のシンポジウム、パネルディスカッションを終了させて頂きます。

 それでは、TPP国際シンポジウムの閉会の挨拶を、TPPを慎重に考える会、会長であります篠原孝衆議院議員より賜ります。よろしくお願い申し上げます」

篠原「3時間の長丁場、皆様ご苦労さまでした。(英語)Thank You Verry Much。

 みなさん、お分かりだと思います。TPPはやっぱりおかしいんですね。インチキが横行していると。

 一つは安倍さんの共同声明というのは、自民党の公約違反をごまかすための共同声明でしかなかったと思います。しかし、政治の世界というのはおそろしいと思います。アメリカでは、USTRとオバマ大統領が一緒になって、議会人を騙して、日本がなんでもいいと言ってきたんだと。俺たちは、大功績を挙げているんだということで売ってますね。

 もう、こういうのがずっと、この通りにさせておくのは絶対良くないんじゃないかと思っております。日本では、ちょうど良くて、参議院選挙というのがあります。この時に、きちんとお灸をすえていただくのが、私はいいんじゃないかと思っております。

 TPPは非常にいかがわしい条約だと思います。貿易だけじゃないんですね。何回も、色んなところででてきます。日本の制度を全部根底からアメリカの制度にしてしまうと。私はびっくりしたのが、アメリカにおられながら反対すると。我々、金さんやアジアのやり方が違うんですよ。みんな。

 たとえば、今Closing remarksという閉会の挨拶という、退屈な挨拶をしなくちゃいけないんです。アメリカでは、ワラックさんがああやっていっぱい言って終わるんですね。やり方が違うんです。それを全部アメリカのルールにやらなくちゃいけない。日本には日本のルール。たまには、私の退屈な話を聞いていただなくちゃならないというルールも残さなくちゃいけないんで。

 こういうのがひとつの例だと思います。反TPPで一緒に頑張りましょう。今日は、ご苦労様でした」

【文字起こし:@sekilalazowie、校正:柴崎】