Hearthstoneの日本語化から早3ヶ月が経とうとしている。MTGとの親和性の高いこのゲームの人口は案の定Diarynote界隈でも増加傾向のようだ。そこで本日は両者の比較のお話でも。

MTGとHSを比較した時目に留まる点の一つがランダム性の扱いである。MTGではほぼ銀枠の世界にしか存在しない「ランダムに~する」という効果だがHSでは当たり前のように存在している。ここのブログはMTGユーザーが多いだろうからひとつHSのカードをMTG風に紹介してみよう。


《手動操縦のシュレッダー/Piloted Shredder》 (4)
クリーチャー ― メカ(Mech) コモン
手動操縦のシュレッダーが死亡したとき、ランダムに選ばれた2マナのクリーチャーを戦場に出す。
4/3


如何だろうか。カードパワーはひとまず置いておくとして、このカードのランダム性がゲームに与える影響は甚大である。なにしろHSの2マナにはアップキープに神の怒りを誘発させる《終末予言者》や本体よりもサイズの大きい4/4の《ミルハウス・マナストーム》などがおり、これらが着地した際にはとりわけゲームの展開を大きく変えてしまうのだ。こうしたランダム性を指して「HSは運ゲー」と揶揄する人間は多い。予期しないタイミングで《神の怒り》が降ってくるゲームのどこに戦略性があるのか、と。

HSの開発元であるBlizzard Entertainment社がランダム性を積極的にゲームに取り入れていることは間違いない。基本セット以降、事あるごとに実用的なランダムカードがリリースされその数は増す一方だ。最新の拡張セットである「探検同盟」においても「発見」というランダムにカードが手に入るキーワード能力をメインメカニズムに据えており、決して一時の思いつきによる取り扱いではないことが伺える。そこにはなにか明確な哲学があるはずだ。


ランダム性がゲームの戦略にポジティブな影響を与えるとすれば、それは判断の機会を増やす部分にあると思われる。周知のとおりTCGはデッキ構築と対戦の二つの軸で戦うゲームであるが、このうちデッキ構築は研究のゲームである一方、対戦は判断のゲームでありそれぞれ別の側面を持つ。

研究のゲームとは事前の研究によって最適解を明らかにしておく、という事である。例えばデッキAとデッキBで100回対戦を行い、おおよそ7:3でAが有利と確認できたとする。こうした手順を繰り返し環境に存在するデッキ間の有利不利の関係を明らかにし、どのデッキがもっとも有利なのか、使うと決めたデッキがどう振舞えばいいのかをあらかじめ練習しておおよその正解を見つけておく。その精度の高さを競うのが研究のゲームである。

TCGに限らず将棋だとか格闘ゲームなどでもこうした研究要素はあるが、デッキを自由に構築できる都合上TCGはとりわけ研究の傾向が強くなるようだ。そして研究要素の強いゲームは必然的に対戦が答え合わせになりがちである。何しろ対戦の答え合わせが予め行われているのだからどうしたって対戦は原稿どおりにならざるをえない。100回の試行の結果相性が7:3と確認されているなら、大会でそのデッキに出会えば頑張っても勝率は7:3だ。またデッキ間の相性は席についてからどうにかなるものでもなく、工夫で逆転を狙うのにも限界がある。赤単対ソウルシスターズの相性を努力で覆せと言われれば誰だって頭を抱えるだろう。

研究要素の強いゲームほど実際の対戦のウェイトが弱くなってしまう。この問題に対抗するためにHSにはランダム要素が多く用意されているのではないだろうか。
「採用されるはずの無いマスデス能力を持ったミニオンがシュレッダーから沸いてきた。当然無対策だがとにかく自陣の被害を最小限にせねばならん」
「ランダムに3枚提示された呪文の中から1枚を手に入れることができる。この盤面に
とって一番都合のよい品はどれだろうか?」
本来のデッキ同士では起こるはずの無い様々な選択をゲーム中に発生させる事でプレイヤーの判断する能力を試す。その意思決定の妙が、事前準備ではなく着席後の対戦へとスポットライトを向けさせているのだ。

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