前回の日記でRPGの本質が戦略性から戦術性へと変化している点について述べた。それを受けて、今回はゲームの戦略性がどこへ行ったか?という話。


その前にまず、RPGというジャンルがそもそも戦略性と相性が悪い点について触れたい。多くのRPGはストーリーをなぞる形でゲームが進行することから、今いる場所の先に一体何があるのか、どんな展開が待っているのかといった情報は一切開示されないままゲームを進めなければならない。この次に行くのはどんな町だ、この洞窟のボスには実は毒が効く、とかいった情報は通常ネタバレと呼ばれ嫌われる傾向にある。

しかし戦略とは先見性である。今後どのような展開が起こり得るか?あるいは自分にとってどのような展開が理想的で、その為に現状をどうコントロールすれば良いか?そうした熟慮を元に未来に対する一手を打つ。これこそが戦略である。
初期メンバーの一人をクレリックとして育てていたら、ストーリーの進行によってより強力な固有スキルを持つプリーストが仲間になってしまった。なんだよ、お前が仲間になるなら最初から言っておいてくれればいいじゃないか!!こうした事故はRPGにつきものだ。もっともメーカー側でも対処療法は行っており、例えばスーパーロボット大戦シリーズでは離脱した仲間やロボットへ投資したコストが回収されたり、世界樹の迷宮では割り振ったスキルポイントの振り直しといった対策も採られてはいるが、ストーリーものと戦略性とのディスシナジーという構造的な問題には結局のところ有効な回答は見られないようである。RPGが戦略的要素の弱まりは必然性のある事象なのだ。 


さて改めて本題に移ろう。RPGがかつて有していた戦略性。戦術性に取って代わられたそれは一体どこへ行ったのか。もちろんゲームの世界から失われてしまったわけではない。場を移動して現代においても受け継がれている。
真っ先に挙げられるのは名前からして戦略の申し子たるストラテジーだろう。このジャンルは古くからあるアナログのボードゲームをそのままデジタルの世界に持ち込んだようなジャンルで、まさしく戦略を競うにふさわしい舞台だ。
このジャンルを代表する名作Civilization4には自国の技術開発深度を表すテクノロジーツリーという要素がある。ツリーは農業、車輪といったごく基本的な技術から始まり果ては核融合へと続いており、ゲーム開始直後から全ての構成を見ることができる。これを見てプレイヤーは外交や立地の状況を加味し、どんなルートで技術研究を進めるかを考えるのだ。例えば最初の開拓で十分な土地を得られた場合は内政を強化する技術を優先する。あるいは土地が狭く国力が中盤で頭打ちになりそうなら、ピークのタイミングで戦争ができるような進行に変えてみる。ツリーの先にどんな技術があるかが公開されているがために、その先をどうするか戦略判断を行う事が可能になるのである。


もうひとつ、より直接的にRPGから戦略性を受け継いだジャンルとしてローグライクを挙げたい。日本ではチュンソフトによって広く一般に認知されるようになったこのジャンル。同社のシリーズを辿っていくと往々にしてキャラクターのレベルアップや装備品の強化、レアアイテム収集といった要素が採用されているためRPGのサブジャンルと認識される事もあるが、その実ローグライクとRPGは大きく異なっている。
ローグライクの本質は展開の非再現性にある。前回のプレイと今回のプレイでは、手に入るアイテムも戦う敵の順番も種類も探索するマップも異なる。プレイする度に状況に応じた違う手を打つ、という部分こそがローグライクのローグライクたる所以だ。

ローグライクが持つ戦略性は先に挙げたストラテジーの例とは方向性が異なる。ストラテジーの例では「先がわかることで判断できる」戦略性を紹介したが、ローグライクの場合は逆に「先がわからないが判断しなければならない」戦略性を要求されるのだ。

展開がプレイヤーに伏せられているのはRPGもローグライクも同じだが、しかしローグライクがRPGと決定的に異なるのは、状況が乱数により生成されるために誰も先の展開を知らないという点だ。明確な正解が存在し得ないので何かが起こるたびに対処法を考えてねばならず、選択をする段階では正解が絶対に特定できない。さらには、同じようなシチュエーションが発生してもそれに対処する方法が毎回手に入るとも限らない。はぐれメタルを分裂の杖で養殖する技ははぐれメタルの出現と分裂の杖のドロップが同時に発生した周回でしか通用しないのだ。杖を拾った時、この先すぐはぐれメタルが出る可能性に賭けてこれを持ち歩くか?それとも用途の限られる屑アイテムとして早々に放棄し隣に落ちている大きなパンを取るか?

この手の状況判断はかつてRPGに要求されたMP管理に通ずるものがある。複数出てきた敵をバギで散らすか、それとも戦闘後のホイミのためにMPを取っておくか。正解がどちらかは蓋を開けるまでわからない。しかし正解がわかる前に判断しなければならない。さてどちらがより蓋然性が高いだろうか?

こうした不確定の未来に対する判断を問うという要素は形を変えてローグライクに受け継がれているように思える。そういった意味でローグライクは古典的RPGの継承者と言えるのではないだろうか。

コメント

レベラー
2015年1月4日20:33

 (おそらく)初めてコメントさせていただきます、レベラーという者です。

 ゲーム論に関して興味があったため、お気に入りに登録させていただきました。

上級スリヴァー
2015年1月5日23:57

ありがとうございます。この手の話題に興味を示す人を増やす目的で書いてるのでレスポンスが得られるのは励みになります。
お名前
以下の文字列を入力してください

コメント本文

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索