東方と聞くとすっかり馬鹿向け豚向け萌えコンテンツというイメージばかりが想起されるようになってしまったが、無論それは二次創作界隈のイメージであり、STGである本来の東方というゲームとは無関係のイメージである。しかしながらゲームとしての東方シリーズに触れたことの無い諸氏にとっては二次創作以外の東方を目にする機会など無きに等しいだろう。これは実に勿体無い、残念な事だと思う。
というのも、東方という作品はシリーズを通して質が良く、言わばゲーム性の高い、世に広く知られるべきゲームであるからだ。

そこで今回は「ゲームとしての東方Project」と称し、ゲームとしてこの作品群がいかに優れているのかを紹介したい。


東方シリーズはボス戦に特化したSTGと言われるが、このボス戦におけるひとつの工夫がプレイヤーをゲームに強く引き付ける要素となっている。

ボスの多くは複数の攻撃段階(ゲームではスペルカードと呼ばれる)を持っていて、第一段階のライフを0にすると攻撃パターンが変わり第二段階へ、それのライフを0にするとまた攻撃のパターンが変わり第三段階へ移行、という流れになっている。
そして、これら各段階についてそれぞれ「プレイヤーが挑戦した総回数」と、「そのうちノーミスノーボムで攻略した回数」が記録されるのだ。この点が今回紹介したい、良くできた要素なのである。

STGのようなステージクリア型のゲームでは、プレイヤーの実力は「どのステージまで行けるか」で測られることが多い。4面まで行ける人と6面まで行ける人では後者の方が優れている、という具合に。
しかし実際には必ずしも毎回同じ場所まで進められるわけではないのだ。
A氏は4面までは100%突破できる、B氏は4面の突破が5割、5面の突破が3割、6面にはとりあえず行った事があるという実力の場合、一見するとB氏の方が上級者のようにも見えるが、実プレイではA氏が難なく突破する4面ボスにB氏が撃破される事が往々にして起こり得る。
おかしい。俺は6面まで行ける腕前の筈なのにどうしてあいつより下手に見えてしまうんだろうか。

各ボスとの勝率が記録されると、プレイヤーはそこから自身の得手不得手を容易に読み取る事ができるようになる。B氏の勝率を細かく見てみると、1面から3面は大体ノーミスで行けるが4ボスの3枚目、4枚目のスペルカードの勝率が著しく悪く、そこでミスすると4面止まり、上手く抜けられれば5面、6面程度まで進める、といった具合であった。
そこで彼は数値化された勝率を見て、苦手なスペルカードでは無茶な挑戦を避け、最初からボムを連打しとにかく突破を優先する戦術を思いつき、4面クリアを安定させることが出来た。

各プレイヤーに自分自分の腕前をより正確に理解させる事で上達の助けとする。
これが勝率視覚化が優れた要素である、その根拠の第一である。


第二には、勝率の記録がプレイヤーの小目標になっている点を挙げたい。

STGと言えばハイスコア、ハイスコアと言えばSTGだ。これは当然東方シリーズにも当てはまりシリーズごとにスコアランキングが記録されている。(驚いた事に10年前の紅魔郷ですら未だにスコアアタックに取り組むプレイヤーがいるようだ)
しかし稼ぎプレイの入り口は非常に狭き門だ。基本的にゲーム中でミス(被弾や無駄ボム)
が許されないので、クリアできて当たり前の腕前がスコアアタックの入り口と言える。この遊び方を全てのプレイヤーに要求するのは無理があろう。さりとてクリアができるようになればそのゲームともさよなら、というのは少々寂しい。

稼ぎプレイに手が出ない初~中級者にとって、スペルカードの勝敗はゲーム目的として実に手ごろな存在だ。慣れ親しんだ序盤のステージもボス戦の勝率を100%に維持するには相応の緊張感が要るだろうし、普段5面までいけるはずが今回4面道中でゲームオーバーになってしまった時、普段はボム必須のスペルカードが今回はめずらしく攻略できたとなれば一定の達成感が得られるだろう。
ゲーム内にこうした小さな目標をちりばめる事でプレイヤーのモチベーションを維持し、より深いレベルへと引き込んでいくきっかけとなっているのだ。

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