去年の9月頃から採用や人事労務ネタを中心にブログを書いているかるびと申します。現在中堅Sierにて採用担当をやらせて頂いています。今回、人事タックルに寄稿させていただくことになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
中小企業にとって、’17新卒採用の厳しさは”昨年以上”
さて、そんなわけで’17新卒。3月に入り、いよいよ就活戦線もハイシーズンとなってまいりました。今年は、昨年に比べると各社が採用数を増やしているので、大半の中小企業の採用担当にとっては昨年以上に厳しい戦いとなりそうです。
特に、今年の’17新卒は、近年稀に見る「短期決戦」の様相を呈しています。
なぜなら、不評だった8月1日内定出し解禁が1年で撤回され、今年度は3月1日に採用広報解禁、6月1日に内定出し解禁となったからです。通常年より遅く始まり、そして内定出しは去年より2ヶ月前倒しになりました。
でも、安心してください。たとえ6月末までに御社の採用予定数を確保できなかったとしても、なんとかなるのです。しかし、流石に無策ではなんともなりません。「なんとかする」には最低限の気合とコツが必要です。よって今回は、新卒採用で心がけている「中小企業」なりに採用活動をやりきる一番大事な、でも超基本的ないくつかの心構えについて書いてみたいと思います。
中小企業の採用は夏以降が本番!3月末まで、とにかく粘れ!
中小企業が新卒採用をやりきるのに一番大切なのは、「3月末まで粘ること」です。
なんだそんなことか?とお思いかもしれませんが、これが全ての基本であり一番大事な姿勢です。採用活動を6月末までで綺麗に終わらせるのではなく、泥臭く、2段構え、3段構えで3月末までやり切る覚悟を決めるんです。
でも、実際、採用担当同士で集まる会合などでも「今年は予定数に全然足りなかったんだよね~」とグチっている担当者に限って、新卒採用をシーズンオフになる夏以前で綺麗にまとめて手仕舞いしてしまっている。シーズンオフ以降も翌年3月末まで続く新卒採用戦線を諦め、早々に撤退しちゃっているんですね。中小企業にとって、夏以降の採用戦線こそが本番であり、土俵際での粘り腰を見せる正念場なのに。
就活支援会社から出てくる「内定取得率」に焦るな!夏以降も採用活動を続ける長期戦が有効な理由
なぜ、「夏以降こそが本番」と言えるんでしょうか?ちょっと考えてみましょう。
まず、‘17新卒に限らず、ここ10年程の新卒就活戦線では、大体3年生の冬頃から始まり、4年生の夏休み前には収束に向かいます。この時点で、各年度で多少のばらつきはあるものの、おおよそ学生の70%~80%程度の層がどこかしらの企業から一応の「内々定」を獲得するのです。リアルタイムで就活支援会社から出てくる「内定取得率」がやれ70%、80%を越えた、とか、正直焦りますよね。でも、そこはあまり気にしなくて構いません。
何故か?ざっくり言って、70%の就活生が就職活動を終えたということは、まだ30%の学生は1社も内定が取れていないという事実があるからです。むしろ夏以降からようやくスタートする出遅れ組も一定数必ず存在するのです。人数で言うと、約10万人以上は6月末以降も就活を継続しているということです。
また、シーズンオフとなる夏以降は、採用力の高い大手企業は早々に手仕舞いしていますので「買い手」側のライバルもかなり減っているのです。どうですか?まだまだやれるような気がしてきませんか?
体育会系人材、留学で秋に卒業する学生、公務員試験に夢破れた出直し組・・6月以降も優秀な学生は結構残っています
では、6月末以降も就活を行う層はどんな人材なんでしょうか?
具体的には、4年生の春先に、何らかの事情で「就活」よりも優先順位の高い活動を抱えていた学生層です。彼らは決して就活をサボっていたわけではなく、単に他にやることがあった。そして、それが終わったら、普通に就活をスタートさせるのです。
例えばどんな人材がいるかというと、4年生ながら部活に打ち込んだ体育会系人材、留学で秋に卒業する学生、卒業研究に専念していた理系学生、資格試験・公務員試験に夢破れた出直し組……などです。
彼らは、ハイシーズンに活動できなかっただけ。そんな夏以降に就職活動を始める「出遅れ組」学生にも、普通に内定後に「これは鍛えたらいい感じに伸びそうだな」という素養が見え隠れする学生はかなり存在します。人材のクオリティとしては悪くないんです。大手企業が一定の内定出しを終える6月以降も、十分に勝負になるわけです。
中小企業が、”夏以降でも採用を成功させる”ための3つのポイント
僕の会社では、春先の採用手法と夏以降の採用手法については特に大きな変更点はありません。ただし、特に意識して取り組んでいることは何か?というと、概ね以下の3点でしょうか。
大企業が採用終了してからがチャンス!大学へのコンタクトを密に取る
前述した「出遅れ組」の学生向けの学内合同企業説明会は、実は夏以降も最近かなり頻繁に開催されるようになってきています。春先はOBが在籍する実績企業にそのブース出展の権利が優先的に渡されるため、なかなか食い込めないことも多いですが、夏以降は大手企業を中心に採用活動を終了する企業が多くなってくるため、ブースの数に余裕が出てきます。
とにかく大学にコンタクトしましょう。きちんとアピールできれば合説の席をゲット出来る確率が高くなります。僕の会社もこのやり方で、秋以降でも掘り出し物的人材と出会うことができました。
学生と話すスタンスは「面接」ではなく、「悩み相談にのる」ように
夏以降の採用選考は、春先までと違い、基本的に少人数での会社説明会や選考会となる傾向にあります。これを逆手に取り、これは!と思う学生とは、コミュニケーションをしっかり取るのです。意識的には、「採用してやる」というトーンではなく、「学生の悩み相談」にのってあげる、といったスタンスぐらいまで目線を下げてもいいと思います。「面接」「選考」という形を取りながら、徹底的に「話を聴く」ようにしてあげると、学生側からの好感度が上がり、一気に内定へと傾くことが多いです。
最後まであきらめない。最後に内定を出した学生は、なんと直前の3月18日
最後はなんとなく精神論になりますが、シンプルですが採用活動には「粘り」が有効だと考えています。
実際、僕の会社でもこんなことがありました。リーマン・ショック前の2006年のことです。その年は諸事情からかなり出遅れ、なんと新卒の採用活動に動き始めたのは、恥ずかしながらGW開けのことでした。社長からは、でもそこから20名採用しろと通達がありました。普通なら絶望的な局面です。
しかし、もうダメ元だ!と開き直り、そこから限られた予算内でやれることをとにかくやっていくことにしました。結果、内定第1号は7月、第2号はなんと9月でした。でも諦めずに学校訪問・採用説明会を粘り強く行い、最終的には目標20名中、18名まで確保することができました。最後に内定を出した学生は、なんと3月18日です。入社直前過ぎて総務に怒られましたが(笑)その3月18日に内定を出した学生は、今では30代になり、堅実に職務に取り組む中堅SEとして、着実に成長を重ねています。
採用担当歴10年で分かったこと。最も有効な戦略は「粘り」である
それ以来、年を重ねるたびに新卒採用のスキルもついてきて、あれこれプランニング段階から戦略を練りますが、リーマン・ショック後の数年間を除き、悲しいかなやはり毎年のように大手企業のように計画通りの採用活動を進めることはできていません。それでも、最後にはなんとか予定数を採り切ることができています。
その一番の成功要因は、最後まで採用活動を淡々と継続する「粘り」なんですよね。実に泥臭い。でも、10年間採用担当をやってみて、一番有効だった取り組みです。当たり前のことかもしれませんが、意外と中小企業の皆さんができていなそうなことでもあるので、改めてここで書いてみました。
それではまた。
かるび