「放送法遵守を求める視聴者の会」の主な主張とTBSの返答

   

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4月1日に「放送法遵守を求める視聴者の会」が発表した「スポンサーへの圧力」も含む声明文「TBS 社による重大かつ明白な放送法 4 条違反と思料される件に関する声明」の要点、およびこれに対するTBS社の返答を見てみます。

 

その前にまず「視聴者の会」が何者であるかを見ておきます。ホームページは以下。

放送法遵守を求める視聴者の会

 

設立は昨年11月。Q&Aによると、同団体の主張は

  • 公平公正な報道、放送法第4条(後述)の遵守を放送局に求める
  • 政治的主張は持たない。政治家や政治団体とは関わっていない
  • 国民の知る権利を守る
  • その対象はマスコミ全般ではなく、テレビ放送に絞る

というもの。テレビ放送に限るのは、他のメディアと違って電波を寡占しているため。他のメディアは、受け取る側がいつでも受け取ることを拒否し別のもの乗り換えることができるが、テレビ放送は寡占状態にあるためそれができないということだと思います。

 

視聴者の会の声明

視聴者の会が4月1日に発表した声明の要点は、

  • TBSの報道番組を4ヶ月間に渡り視聴し検証した結果、重大明白な放送法第4条違反があった
  • 安全保障法制の報道において、賛成の意見を取り上げた報道時間より反対の意見を取り上げた報道時間の方が圧倒的に長かった。プロパガンダであり洗脳である
  • 放送法第4条にある「政治的な公平性(第4条の二)」「多角的論点の提示(第4条の四)」に違反しているといえる

というもので、TBS、BPO(放送倫理・番組向上機構)、TBSの報道番組スポンサー企業、国会に以下のような要望をしています。

  • TBSへ:放送法第4条の二および四を遵守していると考えるかどうか、遵守していると言うならその根拠を示し、していないと考えるなら責任を明確にし再発の防止に全社的な対応をとること。経営陣の辞任を含む引責も求める。
  • BPOへ:TBSの報道の違法性を確認すること、および原因を究明し具体的な勧告を出すこと。
  • スポンサー企業へ:圧力はかけたくないが、TBSが誠意ある回答をしなかった場合、国民的なスポンサー運動の展開を検討する
  • 国会へ:放送制度の抜本的な見なおしについて、次の各項目の検討を要望する。1.放送監督制度、2.電波停止より現実的な処分(金銭的制裁など)、3.電波オークションの導入(電波利用料が各局総額34億円なのに対し営業収益は3兆円超であり、利用料が適正でない)

要点を私なりに簡潔にまとめてみましたが、不満であれば上記のリンク先から原文をご覧下さい。

 

TBSの回答

4月6日、TBSは回答を発表しています。

TBSテレビ

短い文章ですが、要点は

  • 権力の行き過ぎをチェックするのが報道機関の使命で、公平・公正に番組を作っている
  • スポンサーへの圧力の公言は、表現の自由、民主主義に対する重大な挑戦
  • 放送法を尊重し国民の知る権利に答えていく

というものでした。

 

疑問点など

「視聴者の会」のメディアの問題点を指摘し検証するという点は非常に意義のあることだと思います。ホームページを見るとかなり具体的に検証されている様子が伺えます。一方で、いくつか疑問点が。

というのも「視聴者の会」のホームページを見てみるとわかるのですが、現時点(4月7日)ではほとんど「安保法制」に関する報道が公正ではない、という観点のみの検証が行われています。

 

安保法制の是非はここ数年で最も重大な政治的争点で、検証する対象としてはふさわしいと思います。しかし安保法制ばかりでは彼らの「政治的主張は持たない」という態度が本当であるか疑問をもつ人も多いと思います。これでは、彼らの趣旨に賛同する人が安保法制に何らかの政治的主張があると捉えられてしまう可能性がありますので、ぜひ別の争点でもやってほしいと思います。また、何をもって「政治的に公正」かは難しく、TBSに言うより先に国会のお仕事が必要なんじゃないかと思います。

 

スポンサー企業の社会的責任に関する問題を提起したのは良かったと思います。ただ、政治的主張と絡めると反発もあるかもしれません。スポンサー企業が政治的な報道に介入するような雰囲気になると、テレビ番組のスポンサーとなるような大企業の主張に沿った放送になってしまう恐れがあるため(例えば法人税減税を誘導するような)。

 

私はメディアというものをまだ勉強し始めたばかりで、稚拙な考えかもしれませんが、政治的な公平性をどうやって保つか、あるいは別の方法で公平・多様性があるといえる状態にするかは国会のお仕事かなと思っています。個人的には、どちらかと言えば、それぞれの番組や放送局は保守色があったりその反対もあったりしてよくて、日本全体として多様性があるといえる状態になればいいじゃないかと思います。そのためには、なんとかテレビ局の寡占状態を崩し、新聞や週刊誌と同じように、拒否しても不都合がない状態に。どうやってやるかは、わかりませんが。

 

あと他の問題として、日本のワイドショーみたいな番組では、芸能ニュースもスポーツニュースも政治の議論も同じ番組内でやってしまっていて、それでは品質の高い番組はできないだろうと。以前ショーンK問題の発生要因として書きましたが、ワイドショーでは専門家ではない人たちがコメンテーターになっている(何かの専門家というより、どんな話題にも無難にコメントができる人がコメンテーターとして求められる)のが問題で、レベルの低いコメントに触れている視聴者は洗脳されやすくなってしまうだろうと考えています。

 

スポンサー企業への圧力については、(政治的な主張によるもの以外は)やっていいと思います。私の考えでは、品質の悪い番組に対するスポンサー企業の責任は問うべきだと考えてます。国民の財産である電波(周波数帯)を独占利用して放送しているからには質の高い番組を放送するべきです。例えば「プロデューサーが見つけてきた(=芸能事務所のゴリ押し)」と言って無名の芸人が出てきてコントをする番組より、一定以上の経験を積んで劇場などで認められた(=視聴者にその人が出演する必然性が説明ができる)芸人が出てくる番組の方が質が高いだろうといったことです。

 

 

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