「日本人」という、うそ: 武士道精神は日本を復活させるか (ちくま文庫)
日本人は「集団主義」だとよくいわれるが、これは著者がたびたび指摘してきたように誤りである。社会実験で個人の行動をみると、日本人はアメリカ人より個人主義的に行動することが多い。しかし集団で実験すると、他人に同調する傾向が強い。

本書は参照していないが、これは和辻哲郎のいう「人間」や木村敏の「あいだ」などの関係概念と似ている。私も『空気の構造』で書いたように、こうした「空気を読む」行動は珍しいものではなく、本書も参照しているグライフの研究のように、中世まではかなり普遍的なしくみだった。

しかしこのような特定の集団のメンバーシップに依存した「安心社会」は、メンバーが流動化すると維持できなくなる。それでも無理やり維持しようとすると、厚労省のように派遣労働を規制して「正社員」のメンバーシップを守ろうという家父長主義になる。

本書もこのような時代錯誤を否定し、日本は特定のメンバーとの長期的関係に依存しない「信頼社会」に移行すべきだというが、それは容易ではない。日本人の「システム1」には古来のメンバーシップが埋め込まれているからだ。しかし最近のネット・オークションやUberなどは、ITによって信頼ネットワークを作り出している。

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