清談社
2016年4月8日
『熟年売春 アラフォー女子の貧困の現実』(ミリオン出版)で中年女性の売春格差を訴える中村淳彦氏。社会学的見地から「女の業」を描いた初エッセイ集『こじらせ女子の日常』(宝島社)が話題の北条かや氏。2人の気鋭ライターが女性の貧困問題を考える。
中村 近年は有利子奨学金で貧困に陥る女子大生が問題になっています。女子大生の親の世帯収入が90年代後半に比べて3割くらい減っているなかで、奨学金を借りないと進学できない、学費が払えない、学生生活を維持できない子が増えている。現役女子大生が風俗でアルバイトするのも、当たり前の状況になっています。
北条 世帯収入で100万円くらい減っていますよね。貧困女子大生は私の友達にもいて、風俗はしていなかったけど、有利子の第二種奨学金を借りて、寮に入っていました。大手企業に就職できたから2年で返せたと言っていたけど、そういうケースはほんとに一部。彼女はいま、実家の親に仕送りをしているそうです。
中村 第二種奨学金の選考は、世帯収入で審査されるんです。日本学生支援機構に貧乏人と認められれば、借金できるという制度。一般の借金の審査と違って、貧乏だからお金が借りられるという、とんでもない仕組みです。
北条 すごいシステムですよね。卒業して新社会人になる頃には400~900万円の借金を背負っているという。
中村 例えば東大や京大に入れる学力があるなら、奨学金で借金しても大手企業に入れば将来的には返済できるでしょう。ただ大卒の学歴が欲しいからとか、モラトリアム期間を過ごしたいからといった理由で、偏差値が低く就職が厳しい、いわゆる「Fラン大学」に行くのはリスクが高すぎます。18歳の子どもにとって、借金とか負債に対するリテラシーは低い。高校とかが借金するリスクをもっと説明しないと。
北条 地方のFラン大学はとくに厳しくて、地元で就職したいとなるとブラック企業も視野に入れなければなりません。社会的な評価が低い業種の会社ほど「夢を叶えよう」とか「従業員の笑顔が宝物」とか、美辞麗句で募集していますよ。
中村 企業の「ポエム化」ですね。大人とか社会が若者を綺麗な言葉で騙して、価値観をおかしくするみたいなことをやりすぎています。借金のリスク背負って大学に行くくらいだったら、高卒とか通信制大学でいいだろうって思う。奨学金問題は2004年に制度が変わって、そのときに奨学金を使って大学に入った人たちが、卒業して社会に出だした2010年くらいに、ようやく被害が明るみになって表面化しました。
北条 90年代後半からの新自由主義、ネオリベっぽくなっていった社会が、いまになって底が抜けている状態ですね。
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