3000円のビールは、なぜ一晩で完売したのか
持たざる者の「逆を突く」戦略とは?
1本3000円のビールとは!?(画像はイメージ)
「若者のビール離れ」などが言われ、大手ビールメーカーが苦戦する中、毎年130%前後という驚異的な伸びを見せる企業がある。『よなよなエール』で知られるヤッホーブルーイングだ。
同社には、奇跡としか思えない逸話が数々ある。たとえば、1本3000円のビールが1日で完売した、「ビール300万円引き」、ファンを集めて飲む「宴」のプラチナチケット化、大手コンビニで全ビールジャンルの中で売上上位に食い込むほどの実績を残したクラフトビール……。
破天荒な施策はなぜ生まれたのか。井手直行社長の新刊『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』の構成を担当した夏目幸明氏が、同社の秘密に迫る。
日本では「クラフトビールは売れない」?
ヤッホーブルーイングは、社長がお堅い授賞式に仮装して登場したり、ビールとは思えない変わったネーミングをつけたりと、くだらないけれど面白い戦略で業績を伸ばしている。
しかし実はヤッホーブルーイングも、一時期、テレビCMを実施し、問屋に営業に行き、小売店に卸してもらい……という、常識的な売り方をしていた。同社成長の礎を築いた井手直行社長が、当時を振り返る。
「でも、何をやっても売れないのです。なけなしのおカネでテレビCMを実施しても、売り上げにはまったく影響がありませんでした。ポスターをつくっても、問屋さんに営業してもダメでしたね」
同社の創業は1997年のことだ。星野リゾートの星野佳路代表は、米国留学時代、香りが高い「エールビール」の味に胸打たれた経験を持っていた。そして1994年、法改正により小規模なビールメーカーが設立可能になった「地ビール解禁」があった。星野氏はこれを受け、同社を設立したのだった。当初は地ビールブームに乗って売り上げが伸びた。だが、しだいに「地ビールは味が個性的すぎて、品質の悪いものがある」と思われるようになると、パタッと売れなくなってしまった。
同社は、自社を地ビールメーカーと規定せず、職人がつくる「クラフトビール」メーカーだと考えていた。しかし世間はそんな違いに興味はない。ついに同社は、社員が大勢辞めるなど、崩壊の危機に陥った。