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米ドルの対円相場は昨年6月に一時126円に接近したが、その後は軟調が続いている。とりわけ、今年に入って120円を大きく下回り、足元では109円近辺で推移している(4月7日現在)。
ドル安円高の背景にはいくつかの要因がある。まず、3月中旬に米FOMC(連邦公開市場委員会)が金融政策の現状維持を決定した後、これに参加した複数の地区連銀総裁が利上げに前向きな姿勢をみせた。しかし、イエレンFRB議長が改めて利上げに慎重な姿勢を強調したことで、市場の利上げ観測が大きく後退した。
さらに、日銀の2%物価目標の達成が危ぶまれるなかで、追加緩和観測は根強くあるものの、1月のマイナス金利導入後に円高が進行したことで、日銀の金融緩和=円安とのストーリーが書きづらくなった。
また、2月中旬から反発していた原油価格が再び軟調に転じたことで、世界経済に対する懸念から、投資家のリスク回避的な動きが強まった。これも円高要因だ。
ドル円の110円割れはかなり大きな意味を持つ。ドル円が110円を割り込んだのは、2014年10月31日以来のことだ。ハロウィーンのその日、日銀は量的質的緩和第2弾、別名、黒田総裁の「バズーカ2」に踏み切った。換言すれば、為替相場に限っていえば、バズーカ2の効果は足元で完全に消滅したことを意味する。
それに関連して、バズーカ2によってドル円は1990年以降の下降トレンド(図の赤線)を上放れした。バズーカ2が長期円高トレンドを反転させたとまでは言えないが、バズーカ2は少なくとも長期円高トレンドの反転を援護射撃したとは言えるかもしれない。
足元でドル円がさらに下落して、上述した長期円高のトレンドラインが通る105円近辺を明確に下回るようであれば、長期円高トレンドの反転自体が「だまし」だったということにもなりかねない。
付け加えると、2013年4月に日銀が初めて行った量的質的緩和、すなわち「バズーカ1」を受けて、ドル円は1971年のニクソンショックや73年の変動相場制移行に続いていた超長期円高トレンド(図中の青線)を上放れした。あくまでも事後的な解釈ではあるが、大変に興味深い。
ドル円相場はいよいよ正念場を迎えているのかもしれない。
執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)
マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。
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