川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」

ドイツの武器輸出急増が意味するもの
~世界は今、確実に「いつか来た道」を辿ろうとしている

まるで第二次世界大戦前夜

2016年04月08日(金) 川口マーン惠美
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今年1月、ドイツ海軍を視察したメルケル首相〔PHOTO〕gettyimages

ドイツの武器輸出が絶好調

2015年、ドイツの武器輸出は急増した。

前2014年の輸出先の順位を金額で見ると、第1位がイスラエルで約6.8億ユーロ、2番目がアメリカの4.15億ユーロ、3位がシンガポール3.29億ユーロ、4位が韓国2.54億ユーロ 5位がイギリス2.17億ユーロ、6位がサウジアラビア2.09億ユーロ。意外な顔ぶれだ。日本はだいぶ後ろの方で0.23億ユーロとなっている。

それが15年になるとガラリと変わり、イギリスがダントツ。それにイスラエル、サウジ、アルジェリアが続く。シリア内戦の影響が色濃く出ている。しかも輸出額を合計すれば、上半期だけですでに14年分とほぼ同額に達している。ドイツの武器輸出は絶好調なのである。

そんななか、軍事費が急増している中国に対して、ドイツからの輸出が極端に少ない(2014年が0.04億ユーロ)のは、EUが1989年の天安門事件以来、今日に至るまで、中国への武器の輸出を禁止しているからだ。

しかし、だからといって、本当に中国に武器が渡っていないなどと思っていると、思わぬ怪我をすることになる。2013年3月に、在英国際ジャーナリストの木村正人氏が次のようなことを書いている。

〈 日本の菅義偉官房長官は2013年3月18日午前の記者会見で、フランスの防衛関連企業が昨年10月、中国にヘリコプター着艦装置を輸出する契約を結んだことについて、「沖縄県の尖閣諸島をめぐる安全保障環境が厳しいので、フランス政府に日本の考え方を伝えた」ことを明らかにした。(中略)これに対して、フランス側は「ヘリ着艦装置は民生品としても使用できるので、EUの禁輸対象外」と回答したと報道されている。〉

早い話、フランスは日本政府の要請をあっさりと拒否したわけである。

ヘリコプター着艦装置というのは、ヘリコプターからマジックハンドのような棒を船の甲板に下ろす装置だそうだ。これがあれば、船の乗組員による手助けなしでヘリコプターが安全に着艦できる。悪天候であろうが、パイロットの腕が悪かろうが、ヘリコプターが海に落っこちる心配はない。しかも、武器ではないから禁輸品目にもひっかからない。

いずれにしても、これを中国が尖閣周辺で使えば、その効用は大だ。

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